第37話 突然の胸騒ぎ
インフェリテスは椅子から立ち上がり、みんなに一礼して説明を続けた。
「今回のグレイフォール王国の件で、発見の遅れは壊滅的な被害につながる事が判明いたしました。よって、魔物のランクが定まるまでは、ハンターランクE、Dの方々には、調査や巡回をメインに活動して頂き、魔物や<ワームホール>の早期発見と迅速な情報伝達に力を入れて頂くこととなりました。そして、討伐は基本的にCランク以上のハンターにお願いしていく方針です」
タックよりも大柄で逞しいヒト族の男性が手を挙げた。
「どうぞ、お願いします」
「“ウォークライ”のベイズと申します。我がクランにもEランク、Dランクの者が多数いるのですが、その者たちを連れて討伐には行けないという事でしょうか?」
「いえ、絶対に行けないという訳ではありません。ただし、初めは高ランクのハンターと共に行動して頂くことになると思います。また、今後魔物のランクがEやDランクと確定した場合は、同ランクの者に討伐に討伐して頂くことになると思います」
「なるほど。あくまでも慣れない初めのうちはということですな。」
「はい、仰る通りです。巡回についても、戦闘になった場合や追跡係、伝達係と2手に分かれることなどを考えて基本的に4~5名程度で組んで行って頂く予定です。人数が足りないクランなどはギルドでパーティを組めるように調整する予定です。討伐に関しても同様です。」
初めのうちは積極的に魔物を探し回って、見つけたら強いクランが速攻で行って倒してしまうということか。
魔物の研究が進んできたら同ランクのハンターを派遣するらしい。
「本日ここにお集まり頂いた8つのクランは、Aランク以上のハンターを擁するクランの方々です。遠方の為、本日到着できなかったクランもありますが、基本的に未知の魔物が出現した場合は、まず皆様方に依頼が行く予定です。幸い、皆さん活動する拠点が異なっておりますので、拠点地域の周辺の討伐を担うとお考え下さい。もちろん、応援が必要な場合は各クランに通達致しますし、同じ町を拠点とするクランも活動しますので、全ての依頼を受け持つ必要はありません」
そりゃそうだよね。
うちはティルディスが拠点だけど、ティルディス周辺に発生した魔物を全て4人で倒せと言われても難しい。
「流れとしましては、各地域のギルドからE~Dランクのハンターに巡回に出て頂きます。目安としては近隣の村や街道、畑などを3~4時間程度で巡回して頂きます。夜間は視界が悪いですが、人の動きも減りますので、主に村周辺を巡回して頂くことになると思います。これを交代制でなるべく隙間なく行っていきたいと思います。そして魔物や<ワームホール>が発見された場合には、伝達に1名が走り、残りの者は追跡を継続します。そしてギルドから討伐可能なクランへ連絡し、討伐に向かって頂くという流れになります」
インフェリテスさんに続いてリッツィ王子も補足した。
「巡回や討伐には王国騎士団も可能な限り協力する予定です。ハンターギルドは国からは独立した機関となっておりますが、実際に魔物が出現し、早急な準備や調整には国とギルドの連携が重要ですので、本日王城へお招きした次第です。必要な物資などは最大限ハンターギルドに提供いたしますので、皆さんよろしくお願いします」
そういってリッツィ王子が頭を下げ、宰相、ギルドマスター、騎士団長も頭を下げた。
慌ててオレたちも頭を下げた。
その後は報酬についての説明を聞いたり、今後も何かあればここにいるクランで集まって会議をしたいとのことで王都滞在用の家を各クラン1つ頂いたり、初めての方が殆どなので自己紹介などをしたりしていた。
その間、オレはこっそりセリシャさんからコピーした“スキャン”を使っていた。
しかも改良してドーム状に魔力を展開することで、直接触れず、範囲内なら同時に何人も”スキャン“出来るという便利さだ。
やはりAランクの面々は高Lvスキルを持っているようで、剣術や体術などLv7の人が殆どだった。
ただ、オレたちのように変わったスキルを持った人は見当たらなかった。
レイダー騎士団長も剣術Lv7を中心に様々な武器にも精通しているようだし、リッツィ王子も剣術Lv6と高Lvスキルだった。
オレたち以外で一番スキルのLvが高かったのは、ダークエルフ族の細目の男性だった。
しかも暗殺術Lv8、隠密術Lv7という恐ろしいスキルを持っていた。
穏やかな表情で話を聞いているが、スキルを見るとあまり関わりたくはないので、あとで皆にも伝えておこう。
などと考えていると、突然、強烈な違和感を感じた。
驚いて思わず立ち上がりその方向に目を向ける。
恐らくここからは2~3㎞離れた位置だと思われるが、セラーナの結界の時に感じた違和感を何倍も強くして、更に気持ち悪くしたような感覚だ。
突然立ち上がったオレをみんなが見ており、レイダー騎士団長はリッツィ王子を守るため警戒している。
「お、おいヴィト、どうした? トイレか?」
「ち、違うよ! なんか凄い嫌な予感がする。セラーナは感じない?」
「感じます。すごく不快な感じがします。たぶんあちら、3㎞位離れた所……もしかしたら<ワームホール>なのかもしれません」
「やっぱり。オレもそう思うよ」
再度ざわつく室内を落ち着かせ、リッツィ王子が確認してくる。
「<ワームホール>が発生したということですか?」
「<ワームホール>なのかどうなのかはわかりませんが、その可能性はあると思います。この方角の2~3km先には何がありますか?」
「その方向と距離ですと街からは外れていますね。おそらく畑が広がる一帯だと思われます」
オルザファレン宰相が教えてくれた。
「何はともあれ向かってみよう。<ワームホール>だったら一大事だ。失礼、改めてお名前は?」
「“ブルータクティクス”のヴィトです」
「君たちがあの……。いや、後にしよう。ともかく急ごう」
オレたちは念のため全員で違和感を感じた場所へと向かうことにした。
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