神様に貰ったスキルで世界を救う? ~8割方プライベートで使ってごめんなさい~

三太丸太

序章

第1話 村人を守れ!

「もうすぐ魔物が来るぞ! 村人は倉庫の中に避難だ! 入り口にバリケードを作っておけ! 男は中で武器になりそうなものを手にとっておけ!」


 巡回部隊隊長のウェイクは村人に指示を出した後、倉庫前に半円を描くように陣取り、視界の確保と牽制のために松明に火を灯して倉庫から離れた所まで見えるように配置した。


「隊長! 魔物は村の近くに来ているようですが、近くの茂みに隠れているようです!」

「完全に陽が沈むのを待っているのかもしれん。そのまま動かないでいてくれるのが一番いいんだが……油断するな」


 3人の部下たちと周囲を警戒する。

 太陽は既に大部分が隠れ、後10分もすれば完全に沈む。


「もうゲイルがギルドについている頃だ。すぐに応援が来る。それまで持ちこたえるんだ」


<ワームホール>から魔物が発生しているのを発見した時点で部下の1人、ゲイルを街まで走らせていた。

 しかし、街からここまで馬で飛ばしてきたとしても3~40分はかかるだろう。

 応援は間に合わないかもしれないが、希望があった方が最後まで諦めず戦える。

 巡回部隊は基本的に異変の発見やその報告が主な仕事だ。

 今回も仕事としては、ギルドに連絡した後、討伐するクランが来るまで追跡して逐次報告することで十分だった。

 巡回部隊の場合、敵が倒せる範囲であるなら戦ってもいいが、そうでない場合は情報を街まで届けることが最優先だ。

 しかし、村が襲われそうなのを黙って見過ごせるわけがなかった。

 ゲイルを街に行かせた後、俺たちは村の防衛のためにこのサフラン村に来た。


「みんな付き合わせてしまってスマン……」

「何言ってんですか隊長。あの状況で村を見捨てる方があり得ないですよ」

「そうですよ。神様から授かった力、こういう時のために使わないと!」

「ゲイルにオレたちがいかにカッコよく戦っていたか自慢してやりましょう!」


 神様のお告げがあった後、ギルドが設定したE~Sランクの基準で、E、Dランクの者たちは主に街の護衛や巡回部隊として稼働することとなった。

 俺たちも巡回部隊として活動するようになってからの仲間なので、まだ数か月の付き合いだが、とても気のいい奴らだ。

 出来る事なら死なせたくはない……。


「お前たち……ありがとう。とにかく時間を稼ぐことに専念しろ! 倉庫には絶対入れさせるなよ!!」

「「「おう!」」」


 太陽が沈み、濃紺の空が広がっていくと、周囲の雰囲気も変わってきた。

 やはり陽が落ちるのを待っていたようだ。

 赤黒い毛並みで狼のような魔物が松明の明かりで姿を確認できる位置まで近づいてきた。

 ブラッドウルフと名付けられた魔物で、魔物が出現して以来、頻繁に表れるタイプのやつだ。

 個々の強さはそれほどでもないが、集団で襲ってくるため手ごわい。

 全部で18匹いるようだ。

 こちらを取り囲むようにゆっくりと近づいてくる。

 少し離れた所で魔物たちは一旦止まり、8匹が前に出てきた。


「まずは様子見しながら隙を見て襲ってくるつもりかい……」


 クソッ! 単純に力任せで突っ込んでくればまだ楽だったが、淡い期待は脆くも崩れ去った。

 数的不利の上、連携されると絶望的だ。


「1分、1秒でも時間を稼いでやる……」


 正面から近づいてくる魔物に対し、剣を構える。

 張り詰めた空気の中、部下たちも目の前の魔物に集中している。


 ――来るっ! 

 気配が一変し、先行する魔物がこちらに飛び掛かってきた。

 1人に対し2匹ずつ、左右から挟むように迫ってくる。

 俺は左の方へ一歩踏み込んで腰を落としながら身体ごと盾でぶつかる。

 その反動を利用して腰を回しながら右側の魔物に向かって剣で薙ぎ払う。


「チッ! 掠っただけか!」


 右側の魔物は脇腹のあたりから血が滴っている。

 左側の魔物も吹き飛ばされダメージは負ったようだ。

 部下たちも初動はうまく立ち回れたようだ。

 しかしその結果、俺たちの半円の内側に2匹の魔物が入ってしまう結果となった。

 扉に近づけてしまったが、幸い魔物は扉に背を向けこちらを見ている。


 初動で動いた8匹以外の魔物もジリジリと範囲を狭めてきている。

 内側の2匹にとどめを刺そうとすれば、一斉に襲い掛かってくるだろう。

 かといって放置しておけば後ろから襲われる。

 逡巡している間にもじりじりと間合いを詰めてくる魔物たち。


「隊長! どうします!」

「くっ……どっちにしろ襲ってくることには変わらない! 内側の2匹を俺がやるからその間周りの奴らを頼む!」

「「「了解!!」」」


 内側の魔物に切りかかろうとし、停滞していた状況が動き出した瞬間、周囲を取り巻く魔物の中で轟音と共に3つの火柱が立った。

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