第20話 財力だけは大人のグウェンさん
その後の道中は何事もなく進み、ススリーもオレが作ったウォーターマットで寝ていった。
スキルの事や今後の事、タックの最近気になる女の事の話などを聞いていたら、あっという間に王都についた。
予定通り正午を少し回った辺りに到着だ。
王都ソルティアは海に面した大きな街で、港には各国から訪れた大きな旅客船が何隻も泊まっている。
港周辺は宿や飲食店街、海産物店などが立ち並び、その規模はさすがにティルディスよりも大きく、いつでも観光客でにぎわっている。
海岸から内陸側に向かっていくと住宅街などが広がり、住宅街の奥の方にある小高い丘の上には、街や港を見守る様に王城が建っている。
「あ~よく寝たのだ。ヴィト、マット気持ちよかったのだ! あれうちにも欲しいのだ!」
「それはよかったです。じゃあ帰ったら作ってあげますよ」
グウェンさんの顔色も戻り、すっかり回復したようだった。
自分で作ったものを褒められるとやはり嬉しいものだ。
喜んで提供致しましょうとも。
「まずは宿を確保してから散策に行こうか」
「そうね。早めにとっておかないと、これから人が増えてくるかもしれないわ」
お昼時でお腹も空いてきたが、まずは宿だ。
その昔、とある偉い人も『メシより宿!』と言っていた。
王都に着て道端をキャンプ地とするのは避けたいものね。
常に観光客で混んでいる街だし、5日後のハンターギルド説明会の事を考えると、宿が一杯になる可能性もある。
観光案内所のおじさんに安めの宿をいくつか聞き、おじさんが一番おススメしてくれた<プラウディア>という宿に向かった。
港からはやや離れているが、3階建ての宿で見た目も綺麗だ。
「すみません。今日から泊まりたいんですけど、2人部屋2つ空いてますか?」
「えぇ空いているわよ。2人部屋だと朝食付きで1人銅板3枚よ。夕食も付けると銅板4枚になるわ」
せっかく王都に着たんだから夕飯は外で食べたいというみんなの意見が一致し、朝食のみ付けることにした。
5日後がギルド説明会で、翌日の朝に帰るとして6泊。
「じゃあ朝食のみでお願いします。とりあえず今日から6日間でお願いできますか」
「わかったわ。料金は1日毎でもいいし、前払いでもいいわよ」
「前払いでお願いします」
一人当たり銅貨で180枚、銀貨1枚と大銅貨1枚、銅板3枚だ。
一人暮らしのオレにとっては3週間分くらいの食費に当たるので懐が痛いが仕方ない。
「わたしが出しておくのだ」
なんとグウェンさんがみんなの分を出してくれた!
「えっ? グウェンさん大丈夫なの?」
「最近お店が繁盛しているから大丈夫なのだ! たまにはお姉さんらしいところを見せるのだ! 年上の威厳を見せるのだ!」
ドンと銀板1枚をカウンターに置き、支払いを済ませるグウェンさん。
背が小さく、行動も子どものそれなので一緒にいると年下にしか見えないが、いつもより背中が大きく見えた。
さすが最年長で経営者。経済力は一人前だ。
グウェンさんに3人でお礼をいい、『さすが大人の女性』、『カッコイイ』、『憧れちゃう』など誉めたてると、笑みがこぼれ小鼻がヒクヒクしだした。
とても嬉しそうだ。
「じゃあ部屋はわたしとヴィト、タックとススリーだな」
皆で一切聞こえなかったことにし、ススリーにグウェンさんの回収を頼み、タックと部屋に向かった。
2階にある並びの部屋で、ベッドが2つ、テーブルが1つとシンプルだが綺麗な部屋だ。
通りに面した窓からは海は見えないが、部屋から景色を楽しむわけではないので気にならない。
荷物を置いてロビーに集合し、今日の動きを確認する。
「とりあえず港の方に行ってお昼でも食べようか。その後にハンターギルド総本部やクラン説明会の場所を見に行ってみよう」
「賛成! お腹空いたのだ!」
美味しいものが食べたいな。
皆で来た道をまた戻っていった。
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