第31話 燃えたなら 魔法で作ろう ホトトギス

 焼け焦げて水浸しの床を見ながらしばらく考え、答えを導き出す。


「よし、新しく作ろう」

「えっ? 何を?」

「家を」

「誰が?」

「オレが」

「どうやって?」

「魔法で」

「え? どうやって??」

「実はさ、魔法を使えるようになってからお風呂場を改築したんだよ」


 そう言ってタックをお風呂場に連れていき扉を開ける。

 と、床には下着が種別ごとにきちんと分類されて広げてあった


「わーっ!? パンツ!!」

「え?」


 慌てて扉を閉めた。

 よかった、タックには見えていなかった。


「あぶねー。まさかあんなトラップが仕掛けられていたとは……。セラーナか? 恐るべし……」

「なんだ? パンツ?」

「い、いや、何でもないよ。セラーナたちの洗濯物があったからちょっと見せられなくなったけど。前までお風呂場も木で作られていたじゃん? それだとやっぱりカビとか隙間風とか入ってきてたし、魔法でブロック作りにしていたんだよ。」

「すごいな。うちの風呂もやってほしいぜ。冬は寒いんだよなー」

「いいよ。今度やってあげるよ。それで、この方法を使えば家も多分作れるんだよね。でも、どうせ家一軒丸ごと作るとなら、貴族の家みたいに水回りとか排水とか便利にしたいんだ。水の供給は魔法で出来るし、栓を開けたら水やお湯が出るみたいに。そうなるとどうやって管を通した方がいいかとか専門的な知識が必要だから、タック、付き合ってくれない?」

「いいけど、水を貯めておくにしてもそんなでかい貯水槽作れるか? お湯も沸かしてためておくのに結構薪を使うぞ?」

「フフフ……。それは多分解決できるさ。さっきはバッグを作るために考えていたんだけど、貯水槽は“次元隔離結界ディメンションドーム”を応用すれば小型でも容量は無視が出来ると思う。お湯に関してはススリーから習った付与術を管に施しておいて、管を通った水をお湯にするようにすればいいのさ」

「すごいなヴィト……。もしそんなことが出来たらそれで莫大な金が稼げるぞ……。そして俺たち建築屋は職を失うぞ……」


 確かにこんなことされたら職人さんはたまったもんじゃないだろう。


「そんなことしないよ。自分の家だけさ」

「それならよかったけど……。しかしヴィト……」

「ん? どうした?」

「めちゃくちゃ面白そうだな!」

「だろ!? やってみようよ!」

「もちろんだ! 建てる場所はどこにするんだ? この家は取り壊しちゃうのか?」

「いや、さすがに父さん母さんと住んでた家だもの、壊しはしないよ。こっちはそのうち魔法を工夫しながら直すとして、裏の畑に建ててしまおう!」

「広さ的には十分過ぎるな。めっちゃいい家が建てれそうだぜ!」

「よし! どんな家にしようか! 3階建てくらいにしちゃおうかな! ついでに地下室も作っちゃおうかな!」

「よし俺は図面を書いていくぜ! あ、地下室を作るならブルータクティクスの作戦会議室にしようぜ!」

「いいね! あとはそれぞれの部屋に広いお風呂にキッチンとトイレに……。あ、タックの部屋も作っちゃう!?」

「お、いいのか!? 頼むぜ! じゃあススリーの部屋も作ってやろうぜ!」

「いいねいいね! あとは? あとはどうする!?」

「バルコニーでコーヒー飲みてぇ!」

「おー! それ最高! 描いちゃって!」

「オッケ―任せろ!」

「あ、グウェンさんの研究室も作ってあげちゃおう!」

「さすがー! いいじゃんいいじゃん!!」


 そんな感じでオレたちは好き勝手に要望を言い、ハイテンションで図面を描き上げていった。

 タックは絵も上手く、外観のイメージも描いてくれた。

 オレは土魔法でその辺の土や石をイメージ通りに加工できるし、簡単な物なら鉄についても火魔法で溶かして加工したり出来るので、うちやタックの家にあった使わない鉄製品などをかき集めて使うことにした。

 準備をしていたら日が沈んでしまったが、テンションはMAXなのでこのまま作業を続けることにした。


「じゃあまず掘り下げないとだめだな。その際、排水の管も先に通しておいた方がいいな」

「よーし着工だ! あ、近所迷惑になるから結界を張っておくか。見られないように人避け&不可視化結界に加えて、音がうるさかったら困るから真空の膜も追加して遮音結界も張っておこう」


 オレは畑全体を包み込むようにして結界を張っていく。

 これで人目も音も気にならないはずだ!


「よっしゃー! 行きまっせー!」


 魔法で畑の土をどんどん掘り下げ、出て来た土や石を横に積み重ねていく。


「じゃあまずはそこに基礎を固めて……そこに柱を……そこの管はそっちにも……」


 タックの指示の下、どんどん作業を進めていく。

 通常じゃありえない速度と建築方法で順調に家の形が出来上がっていった。

 たのしー!!


 オレとタックは寝食を忘れて家づくりの没頭していった。


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