第33話 魔法の無駄遣い
一通り案内してもらったが、やはりすごかった。
キッチンやお風呂などは、栓を開ければ水やお湯が出てくるようになっていた。
水を通す管に付与術を使い、管を通った水が暖められる仕組みになっているらしい。
また、貯水槽も“
さすがにまだそこまで貯めていないようだが、一度補給しておけばしばらく持つようだし、減ってきたら“トーチ”が光って教えてくれるそうだ。
さらに排水についても“
お風呂自体も“
更にこちらの配管には浄化と風魔法の付与を加えて常にきれいな水を循環させているらしく、一日中何時でも入れるそうだ。
もちろん溢れた水は浄化の下水管から川の方に流れていくようになっている。
キッチンには竈がなく、代わりに石の台に石の板が埋め込まれていた。
こちらは“トーチ”ではなく、“ヒーター”と唱えると石の板が熱を発するとのことで、そこで調理ができるらしい。
食料を保存するための箱もあり、氷魔法が付与されていて冷やしたり凍らせたりできるとのことだった。
2階、3階は部屋がいくつもあり、3階には広いバルコニーも作られ、そこで景色を見ながらコーヒーを飲むのだそうだ。
なんと地下室もあり、倉庫やブルータクティクスの作戦会議室、グウェンさんの研究室などが作られていた。
ただ、いくら付与術でも魔力がきれたら効果が無くなってしまうので、その時はどうするのか聞いたら、ヴィトは『こうするの』といって壁を触りだした。
家全体に魔力が通るようになっているらしく、どこかに触って魔力を流せば減った部分に自動で供給されるらしい。
さらに、家全体が魔力の膜に覆われているようなものなので、侵入者などがいた場合にもすぐにわかるんだと興奮して説明していた。
その後で、『結界を張っているからそもそも侵入出来ないけど』とも言っていた。
もう魔法の無駄遣いに思えてならない。
家の広さや独創的な魔法の使い方に十分驚いたが、私が一番感動したのは日当たりの良さだ。
至る所にふんだんにガラスが使われており、心地よい日差しが差し込んでくる。
リビングはほぼ壁一面に大きなガラスが貼ってあり、これだけでもかなりの金額になるはずだった。
どうしたのか聞くと、やはり魔法で作ったとのことだ。
本物のガラスではなく、水を土魔法で固めた冷たくない氷みたいなものと言っていたが、見分けがつかない。
自分の家の近所だし、見慣れた風景だけど、明るいリビングの大きな窓から見る景色はいつも以上に美しく見えた。
各自好きな所を選んでいいと言われた部屋も、もちろん窓がついており、広く日当たりが良くて最高だった。
まだ家具はないが、必要な家具があったら木と鉄で作れるものなら何でも言っていいと言われた。
木をそのまま変形させることはできないが、家を作っている最中に木を自在にカットして組み合わせるということが出来るようになったらしい。
そんな家というか屋敷を見学していると、最初は落ち込んでいたグウェンさんとセラーナも、ヴィトが本当に怒っていないという事がわかったらしく、少しずつ笑顔が見られるようになってきた。
そして、新しい家の凄さや広々とした自分の部屋、研究室などに喜び元気になっていった。
移動初日で大変なことになって、一時はどうなるかと思ったけど、この調子なら新たなスタートがきれそうで安心した。
家の説明が終わったヴィトとタックはさすがに眠気が出て来たらしく、仮眠をとると言って自分の部屋にそれぞれ入っていった。
とりあえずベッドは作っておいたらしい。
グウェンさんとセラーナもいつもの様子に戻ったようなので、私は一旦家に戻ることにした。
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