第16話 今後の為の作戦会議

 とりあえず通達の内容をみんなと再度確認していく。


「ギルドへの登録は任意で行うようだね」

「そうみたいね。まぁ色々な考えの人がいるでしょうしね。元々王国に仕えている人もいれば、国の為に力を活かしたいという人もいるでしょうし、強制はできないもの」

「俺らはどうする?」

「オレは登録しておいた方がいいと思うなぁ。出来たばかりの組織だから色々問題も生じるだろうけど、魔物の情報をもらえたり共有できたりするのは大きいよね。あと報酬とか」


 何処に魔物がいるのか分からなければ、力を持っていても討伐が出来ない。

 出現場所や魔物の数などの情報は非常に重要だ。

 また、魔物と戦う力があるといっても、生活費は稼がなければならない。

 魔法じゃクリームパンは作れないのだ。

 仕事をしながら訓練をして、討伐も行うというのはなかなか厳しいだろう。

 報酬の額や討伐頻度などにもよるが、魔物討伐に集中できるのならありがたい。


「私も登録には賛成だわ。緊急招集されると言っても、そんなに緊急事態なら言われなくて駆けつけるもの。問題はクランの方よね。どうする?」

「この4人で参加することは決まってるんだし、俺らで作っちまうか?」

「うーん。クランについては王都で募集とかを見てからでもいいんじゃないかな。神様が話してた他の仲間とも会えるかもしれないし、もしかしたらその人が既にクランを作っているかもしれないからね」

「じゃあそうするか。でもなんでハンターギルドが設立したばかりなのに、もう募集が出来るクランがあるんだ?」

「クランを創設して募集側で参加したい人は、前もって連絡するようにって書いてあったよ。募集する側はオレたちみたいに知り合い同士がいたとか、元々ある程度まとまった組織の人たちだったとかじゃないかなぁ」


 色んな人がいるだろうけど、共に戦う仲間だから慎重に選びたい。

 もしピンとこなければ、タックが言うように自分たちで作っても問題ないしね。

 一応、ずっと大人しく幸せそうにケーキを頬張っている年長者に聞いてみるか。


「グウェンさんはどう思う?」

「む? わたしはヴィトたちと一緒なら別になんでもいいのだ。戦えるわけじゃないから皆の意見に従うのだ」


 ちらっと顔を上げてそういうと、またケーキに意識を戻して食べ続ける。

 じゃあ何しに来たのあなた……。

 途中、頬に付いたクリームをススリーに拭かれている姿はとても10歳上とは思えない。


 そして今気が付いたけど、そのケーキは2個目だな。

 いつの間に取ったのか分からないが、必然的にタックのケーキが無くなってしまった。

 残っているケーキを自分の方へ引き寄せこっそり確保しておくと、ススリーもさりげなく自分の方に引き寄せていた。

 タックはまだ気づいていない。

 かわいそうなタック。


「じゃあとりあえずクランについては王都に行って様子を見てから考えようか」

「そうね。後は、私たちのスキルもどこまで明かした方がいいのか悩むわね」

「そこだよね。オレたち以外にも同じような人がいたらいいんだけど、今の所そういう人たちはいないもんね」


 確保したケーキに手を出しつつ、対策を考える。

 すると2個目を平らげ終わったグウェンさんが、ようやく会話に参加してきた。


「そういえば“他者のスキルがわかる”というスキルを持っている人が、王都にいるという話を聞いたのだ」


 オレとススリーはケーキを口に運ぶ手を一瞬止めてグウェンさんに視線を向ける。

 それは初耳だ。

 すごいスキルだと思うが、自分たちにとっては厄介なスキルな気がする。

 ススリーの方を見ると、表情からして同じことを思っているようだ。

 一方、タックはようやく自分のケーキがないことに気づいてがっくりきている。

 グウェンさんの皿が二枚重なっているのを見て諦めたようだ。


「スキルがわかるってどういう感じなんでしょうね?」

「わたしも聞いた話だからよくわからないが、スキルの種類や強さがわかるらしいのだ」

「それだったら隠しても意味ないかもなぁ。むしろ隠していたことを咎められたりするのかな……」

「咎められることはないと思うけど、なんで隠したのって聞かれるかもしれないわね」

「そうなったら正直に言うしかないか。どんな奴がいるか分からないから内緒にしてましたって」

「まぁ言い方さえ気を付ければ、そう酷いことにはならないわよ」


 他者のスキルがわかるスキルか。どんな風に分かるのかとっても気になるな。


「ヴィトなら使えるんじゃないのか?」


 グウェンさんがオレに確認してくる。


「いや、オレはそんなスキル持ってないですよ」

「“魔法創造クリエイトマジック”で出来ないのか?」


 言われてみれば確かにそうだ。

 そういう魔法も作れるのかもしれない。


「あ、でも一度見るか体験しないと難しいかな」

「なぜなのだ?」

「作るにしても、『他の人が持っているスキルを見つけ出す感覚』がよく分からないですから。どういう作用でどういう反応が出るとかがイメージ出来ないから難しいかも」

「へー。そういうものなのか」

「なんでも思い通りになるわけじゃないって神様も言ってましたからね。単純に"身長体重を調べる魔法"とかだったら、何となくイメージが付きやすいから出来ると思いますけどね」

「ヴィト? 余計な魔法は作らない方が身の為よ?」


 ススリーのゾッとするような冷たく重い声に、生命の危機を感じた。


「も、もちろん、そんな魔法を作る予定は一生ございません……。あは、あはは……」

「そう。ならよかったわ。大切な友達を一人亡くしてしまうところだったもの」


『なくす』のニュアンスが違うような気がするが、気にしないようにしよう。

 余計な魔法を作らなければ、生きていけるのだから。

 誤魔化すように話を戻す。


「ま、まぁ“スキルを調べるスキル”というのは気になるね! ギルドの登録自体は1週間後だけど、少し早めに王都に行って色々調べてみない?」

「えぇそうね。運がよければ何か分かるかもしれないものね」

「そうだな。俺は親方に事情を説明してあるから明日からでも行けるぜ!」

「タンブルウィードはしばらく臨時休業にするのだ! わたしも明日からでも行けるのだ!」

「さ、さすがに明日すぐってわけにもいかないでしょうから、明後日出発にしない? 1週間ちょっとの滞在で準備も色々あると思うしさ」

「「「はーい」」」


 そんなこんなでギルド登録が開始される前に、前乗りで王都に入り、“スキルを調べるスキル”の調査を行うこととした。

『旅行だー!』と最年長者が一番はしゃいでいるが、まぁいいか。

 最近お店が大混雑でお疲れのグウェンさんもいい気分転換になるに違いない。

 オレ自身も王都に行くなんて何度目かなので楽しみではある。

 タックやススリーも嬉しそうだ。


 折角だし、“スキルを調べるスキル”の情報収集をしつつ、王都の美味しいお店の情報も収集してやろうじゃないか!

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