第41話 魔性の者には気を付けろ!

「うぅ……ありがとうございますぅ。うううぇぇぇん。断られたらどうしようと思ってたよぉぉぉ」


 さぞかし緊張していたのだろう、ぽろぽろと涙を零して泣き出した。

 小柄な体を更に小さく丸め、蹲って泣く姿は、『あぁ守ってあげなきゃな』と感じてしまう。

 オレ以外のみんなも、なんとグウェンさんまでもが慈愛に満ちた目でプラントさんを見つめている。


「ほらほら、プラントさん。もう泣き止んで色々お話しましょ」

「グスッ……うん……ひっぐっ……」


 セラーナに促されて立ち上がり、改めて挨拶をするプラントさん。


「皆さん、改めまして、こんな僕ですけど、一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします!」


 深々とお辞儀をするプラントさんに向かって、皆で再度『よろしくー!』と言いながら拍手をする。

 続いてプラントさんはオレとタックの方に向かって言う。


「ヴィトくん、タックくん、あの……、仲良く、してね。その、僕、こんなだし、人付き合いが苦手だったから、男の子の友達もいなくて、分からないことが多いんだ。だから、色々教えてくれると嬉しいな」


 泣いた後だからか、少し荒くなった息遣いのまま、赤く染まった頬に潤んだ瞳の上目遣いで言うのでやけに艶めかしく聞こえる。


 な、何を教えたらいいんだ?

 本当に色々教えてもいいのか?

 いや、オレもそんなに詳しくないからむしろ一緒に勉強しようか。

 でも捕まったりしないだろうか?

 まてまて、プラントさんは男だよな?

 いや、この際性別なんか関係ないのか?

 色々な考えがぐるぐる回る。


「あ、あ、あ……だ、ダメだっ! タック!! オレを殴って!!」

「ど、どうしたのだヴィト!?」

「任せろ!!」


 タックに思い切り頬を殴られ吹っ飛んでいくオレ。

 驚く女性陣(プラントさん含む)とゴートさん、悲鳴を上げるメイドさんたち。


「ヴィト!! 俺も頼む!!」

「あたぼうよ!!」


 立ち上がって助走の勢いそのままに思い切りタックを殴り飛ばす。

 唖然とするみんなの前をゆっくり通り過ぎ、吹っ飛んでいったタックに手を差し出す。

 ガシッと力強くオレの手を握り立ち上がるタック。

 頬には尋常じゃない痛みがあるが、これは必要な痛み、忘れてはならない痛みなのだ。

 二人とも口や鼻から血を流しながら並んでプラントさんの所へ戻る。


「「プラントさん、これからよろしくね!」」

「だ、大丈夫ですか!? どうしたんですか!?」

「大丈夫。これはプラントさんと男の友情を作るために、オレたちにとって必要な儀式だったんだ。気にしなくていいからね」

「うん。これで俺たちはプラントさんの仲間になれる。よろしく頼むぜ!」

「ぼ、僕の為に……!? ありがとうございますぅ!」


 ススリーは呆れたような表情でこちらを見ていたが、他のみんなはきょとんとしている。

 それでいい、分からなくていいこともあるんだよ。


 その後はセラーナの時と同じように、自分のスキルや今後についての話、今日あった<ワームホール>や魔物の話など話していた。

 ハンターギルドに行ったにも関わらず登録をしないで帰ったのは、“スキャン”の結果で注目を浴びてしまい、どうしていいか分からなくなったから逃げてしまったらしい。

 クラン員登録の事もあるし、明日みんなで一緒にハンターギルドに行く事にした。


 プラントさんは実家も王都らしいが、オレたちと一緒にティルディスに行きたいとのことだった。

 引っ越しするなら両親にご挨拶をしていた方がいいと思ったので、ハンターギルドに行った後、皆でプラントさんの家にお邪魔することにした。

 その後、セラーナの叔父さんにも挨拶をしに行く事にしたので、引っ越しの準備や挨拶周りなどで結局3日ほど王都に滞在することになりそうだった。


 最後にもう1つ驚愕だったのが、プラントさんはなんと19歳で俺たちの2つも年上だった。

 5歳くらい下のつもりで接していたのに、年齢も性別も惑わすなんてなんて魔性(?)の人なんだ……。

 オレもタックも気を付けておかないと、また危なくなるかもしれない……。


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