まだらの紐

 結婚を控えたヘレンはホームズのもとを訪ねる。結婚前に急死した姉の部屋で、姉が死の前に耳にしたという口笛のような音を聞いたという。依頼を受けたホームズのところへ「ヘレンが来ただろう」と依頼人の継父ロイロット博士が乗り込んでくる。

「身内のことに首を突っ込むな」と火かき棒を曲げて腕力を誇示して脅すロイロットにホームズがするある行動が見所。

 シリーズ屈指の有名エピソード。オチというか肝というか、ネタを知っているかたは多いはず。

 オープニングはロイロット博士が近隣住人とトラブルになっている場面から。短いシーンでロイロット博士の粗暴な人間性が描かれています。原作でも、このあたりも触れられているのですが、確か軍人時代の人脈を生かしてロイロットについて調べたワトソンが「こんなエピソードもあってね」みたいに語って聞かせる形だったはず。

 語りではなく、映像で見せると印象が強くなります。これは映像化の強み。

 不審死を遂げたヘレンの姉の部屋の細かい部分が大事になってくるのですが、ここもセットでうまく表現しています。

 物語のクライマックス、暗闇でホームズが【犯人】と対決するシーンの構図も、原作の挿絵と同じ構図になるようにしているのがニクイ。







【ネタばらしをして見所解説】



 登場人物も少なく、継父ロイロットが結婚する娘たちの命を奪おうとしていることにはピンときます。またロイロットもそういう描かれ方をしています。実に堂々たる悪役っぷりだと演技に感心し、少し調べてみるとロイロットを演じたジェレミー・ケンプは別の作品で悪役で当たりをとっていたそうな。元から悪役のイメージのついた俳優を起用するあたり、もう隠す気もないという感じ。

 もう一人の名優はまだらの紐役のというか凶器の蛇。想像するに、これ、結構NGが出たのでは。狙い通りに動物を動かすのは至難の業でしょう。あるいは「蛇のドラマさせるならあいつしかいないね」みたいな評判の名蛇だったのかもしれませんが。

 換気孔と呼び鈴の紐をつたってきた蛇はホームズに引っぱたかれ(ここがさきほど書いた原作の挿絵と同じ構図)、ロイロット博士の部屋に逆戻り、博士を噛んで死なせてしまいます。死体という形ですが、ジェレミー・ケンプと蛇の豪華競演が実現します。

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