最後の事件
いきなり、頭上からレンガのようなものが落とされ、倒れながらもそれを間一髪でかわすホームズからスタート。通路で男たちに挟み撃ちにされ、激しい格闘するホームズ。馬車がホームズに突進してきて脱げた帽子を馬が踏み潰し、恒例のオープニング映像へ。
冒頭のホームズの危機は原作ではホームズの口から語られるのですが、これを動きのある映像として味わえるのは、ドラマならでは。
しばらく春の休暇でベーカー街を離れていたワトソンがベーカー街に戻るのですが、その姿をうつす映像はなぜか銃のスコープのように十字の線が入っています。しかも、不穏な音楽も流れて。
ホームズも四ヶ月ベーカー街を離れていたのですが、ワトソンが帰ってきた朝に戻ってきたというのです。ハドソンさんによると「感じの悪いかた」の来客もあったそう。
特殊な空気銃で狙われている、とホームズは窓から部屋に入ってきます。
原作では結婚したワトソンがベーカー街とは別に住まいを持ち、そこにホームズが現れるという設定でしたが、ドラマでは変わっています。
ワトソンの結婚がらみの設定は原作シリーズでもファンからいろいろと矛盾が指摘されているので、ドラマシリーズでは基本的には触れないようにしていたのかもしれません。そのほうがホームズとワトソンの友情を強調できるというメリットもあるでしょう。
ホームズは留守中、どんな仕事をしていたかを語ります。
この部分はグラナダ版ドラマのオリジナル。この事件を原作と結びつけ、いよいよモリアーティ一味を一網打尽にするためのホームズ&ワトソンのスイス旅に繋がっていきます。
今回の見所は美しいスイスの山の風景。そして、モリアーティ教授との対峙です。
原作は作者のドイルが名探偵に嫌気がさして、ホームズシリーズを終わらせるという狙いだけで書かれたとしてもよいほどで、ミステリとしてはお世辞にも良作とは言えません。事件という事件は起きないので、ドラマ版でも見所はミステリ以外の部分になります。
登場人物も少ないので、今回、印象深いのはやはりモリアーティ教授役の俳優、エリック・ポーターでしょう。これで見納めとなるデビッド・バーク演じるワトソンもじっくり楽しみたいです。
【ネタばらし見所解説】
よくやったぞ、製作陣! とほめてあげたいのは、ライヘンバッハの滝のシーンでしょう。ホームズとモリアーティが二人で落ちていく有名なアレを再現しています。
ロケ地が本当にスイスかどうかは調べられなかったのですが、大自然で撮影するのは苦労が多いでしょう。環境保全の観点から、なかなか撮影許可がおりないということもありそうです。
冒頭の命を狙われるホームズのシーンも原作にかなり忠実です。馬車もちゃんと原作どおりに二頭立て。こういう細かいところに作り手の誠意を感じます。
日本語版ではだいぶカットされていますが、グラナダ版オリジナルではたっぷりとホームズ役のジェレミー・ブレッドのアクションがあります。列車で出会うイタリア人の老神父に変装しているジェレミー・ブレッドは相変わらず楽しそう。
変装で言えば、原作でワトソンを乗せた馬車を操る「ごつい黒外套を着た御者」は「ギリシア語通訳」に登場した《あの人》に演じてほしかったものですが、そこはスケジュールの都合などあったのかもしれません。
特別列車で追いかけてくるモリアーティのシーンもいいです。
またヒリヒリする逃亡劇の随所にロンドンで暮らす普通の人が描かれているのも素敵です。街を駆け回るうす汚れた格好の子どもとか、杖をついている目の不自由な人とか、駅を歩いている男女とか。
ただのミステリ作品ではなく、当時のロンドンの雰囲気を再現し、包み込んで残そうとする高い志のようなものを感じます。
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