サセックスの吸血鬼
長編スペシャルです。え? となるファンもいるはず。原作「サセックスの吸血鬼」は短編です。それもちょっと渋いというか、知名度が低いというか。読んだことのあるホームズ作品ランキングをつくったら、おそらく下位に位置するでしょう。
面白いか面白くないかでいえば、私は子どもの頃、楽しく読みました。「なぜ血を吸っていたか?」という謎に対する回答が合理的で見事な印象。
ですが、いかんせん、短い。これをどうやってレギュラー放送では約一時間のドラマのスペシャル版として約二時間にするのか。厳しい言い方をすれば(私は好きですが)あの原作のどこにスペシャルドラマにしたいと思わせる要素があるのか。
ははぁん、これは後期グラナダ版ドラマによくある複数原作ドッキング手法だな、と思いきや、原作は「サセックスの吸血鬼」のみ。
どうやって、これを二時間に仕立てたか、という謎に対する答えは……ネタばらしになるので、後半の【ネタばらし見所解説】で触れます。
いつになく、ネタばらしなしの前半部が薄い内容です。このまま終われないので、内容を離れてドラマのよさを語ることにしましょう。
スペシャルドラマ、時間がたっぷりということで、物語はじっくりと描かれます。オープニングで描かれる火災のシーンも、ちゃんと燃やしていて、予算も出ているなぁ、という感じ。吸血鬼が重要な役割を果たす物語だけあり、いかにも吸血鬼が出てきそうな雰囲気の場所で撮影をしているのもポイントです。
【ネタばらし見所解説】
どうやって短編一作を長尺のドラマにしたのか?
その答えは……「オリジナル要素をぶち込む、それも、これでもかというほど」です。なにがすごいって、主要登場人物の一人が原作には登場しないこと。かつて吸血鬼として忌み嫌われ、村人たちに屋敷に火を放たれて亡くなった人物の末裔というキャラクターが原作には登場しません。ドラマオリジナルなのです。
大半は、吸血鬼の末裔とされる不気味な人物がファーガソン一家を中心に村を混乱に陥れていくというオリジナルドラマ。村をどうにかしてくれ、と頼まれてホームズが乗り込んでいき、終盤は原作に近づいていきます。
村を訪れる前にホームズの脳裏に浮かんだ人物が吸血鬼とされる男であったりと、映像作品だからこそやりたかったんだなという演出もあります。コナン・ドイルはスーパーネイチャーへの指向性があった作家ですが、さすがにこれをホームズでやるのは、やりすぎかなぁ、と。
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