第二の血痕
今回の依頼人は大物です。なんと首相とヨーロッパ担当大臣(外務大臣といったところでしょうか)がベーカー街を訪れるのです。お茶を用意するハドソンさんも緊張の面持ちというか、ちょっと困っているというか。
依頼内容は大臣が紛失した重要書類の発見。どうやらなにものかによって盗まれたようです。この書類が公になれば、戦争は避けられないとのこと。はたしてホームズは書類を取り戻し、戦争を防ぐことができるのか。
ベーカー街の場面で、なかなか書類の内容を明かさない首相に対し「ささやかながら私も仕事を抱えていまして」と、情報を与えてくれないならば引き受けられませんよ、とホームズがやんわり断るところがあります。このやり取りがラストで効いてきます。
今回は書類探しを軸に、スパイの死、タイトルにもなっている犯行現場の二つの血痕など、さまざまな要素がかかわってきます。
見所は第二の血痕をめぐり、レストレードが大活躍するところ。そのレストレードを巧妙に出し抜く、ホームズもいいです。
レストレードを見つけ、踵を返したところ、目ざとく見つけられ、いかにもたった今、声をかけられて初めてレストレードに気付いたようなふりをするホームズとワトソンもおかしいです。
【ネタばらし見所解説】
最大の見せ場は終盤でしょう。書類は大臣の妻が持ち出したのですが、ホームズはそれを明らかにしたくはありません。なくなったのでも盗まれたのでもなく、「ずっと書簡箱に重要書類は入っていて、今もまだある」という結論にして、万事を丸くおさめたい。
徹底的に探したのだから改めて確認するなど無駄だ、とお怒りの大臣と首相が書簡箱を調べる眼前で書類を紛れ込ませるホームズ。
このシーンはグラナダ版のドラマでも屈指の映像トリックというか、カメラにうつっていないところでなにがあったかを想像させるテクニックというかが用いられています。
無事に書類を戻した後、大臣と奥さんは抱き合うのですが、ここにも映像ならではの演出があります。抱き合いながら、奥さんは真相を隠してくれたホームズを見て微笑むのです。夫である大臣は妻の顔を見ることができません。見ることができるのはホームズと視聴者です。
そして、ラスト。大臣の屋敷を去ろうとするホームズたちに首相が近づき、なにか秘密があるのではないかと訊ねます。なんとなく首相は気付いているのですね。部下である大臣が箱のなかの書類を見逃すはずはないと信じているのかもしれません。
問われたホームズは首相に対し、「ささやかながら我々にも外交上の秘密がございまして」と煙に巻くのです。外に出たホームズは「やったぁ」と叫び、飛び上がります。ここで映像が固定され、エンディング。
他にもスパイの男の家で探し物をする場面もいいです。口実をもうけてレストレードを部屋から追い出しているわずかな間に床を這いつくばるときの音楽がいいです。弦楽器(?)の鋭い音が緊張感を伝えます。
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