銀星号事件

 競走馬の銀星号(シルヴァー・ブレイズ)の失踪と調教師の謎の死をめぐる冒険。本作の見処は馬でしょう。動物はどんな大御所よりも取り扱いが難しいなんてドラマやCM撮影の現場では言われているそう。

 今回は馬と羊たちも出演しています。羊はともかく、銀星号役の馬は「演技」が必要なので大変だったでしょう。キャスティングも難航したはず。なぜならば、銀星号は「額の部分に星のように白い毛がある」というのが原作の設定だから。ドラマでは星というワードが出ていません(少なくとも筆者の観賞したバージョンでは)。なぜ銀星号なのかという由来も語られていません。

 銀星号は額の一部が白いという程度。これだけでも役者を探しだすのは大変だったはず。もしかしたら粉をはたくか、塗料を付着させるかといったメイクをしたのかな、とも思いました。ただこれは抗議が出たり、動物愛護の観点から問題になりそうな気もします。

 現在なら間違いなくアウト、当時でも駄目だったのでは。

 もう一つ、犬も名演技をしています。

 ホームズが厩舎に着き、職員と対面するまでのシーンが見処でしょうか。ここはカメラワークも凝っています。「六つのナポレオン」のオープニングのようにカメラを切り替えず(カットを割らず)、ホームズの動きを追います。

 カメラは厩舎のなか。窓際を歩いていく厩舎スタッフがうつります。窓の外には歩いてくるホームズたち。カメラは厩舎スタッフを追うように移動。このとき、犬がうつります。厩舎スタッフがドアまで来ると、ホームズたちが厩舎のなかへ。先ほど、厩舎スタッフが来たルートを遡るようにホームズは移動します。このとき、犬が吠え、厩舎のスタッフになだめられます。ホームズは空になった銀星号の馬房をさっと調べ、通路の奥で棚のようなものを調べ、ようやく重要証人となるメイドと当直をしていた男の子の待つ部屋へと移動。

 と、ここまでがひと連なりで映し出されます。

 素晴らしい。




【ネタばらし見処解説】


 この作品には、ホームズファンだけでなく推理小説好きに有名な「吠えなかった犬」のロジックが出てきます。

 犬が吠えなかったということは、犯人は犬がよく知っている人物だ、という推理です。

 ネタばらし前に書いたように、犬は厩舎のスタッフが通ったときには吠えず、ホームズにはちゃんと吠えるのです。なんという名演技!

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