ボール箱
NHKBSでの放送も、いよいよ最終回。
前回、日本放送バージョンでは「マザランの宝石」がラストエピソードだった気がすると書きました。
ちょっと調べてみたところ、本国イギリスのグラナダ版のラストエピソードは「ボール箱」らしいです。
原作の「ボール箱」はちょっと変わった作品で、発表自体は1893年で本来は第二短編集に収録される時期のもの。
しかし、内容が過激だとして収録が見送られ、のちに第四短編集に収められたのです。
イギリス版ではカットされたもの、アメリカ版では「ボール箱」が収録された第二短編集が存在するらしいとのこと。
雑な捉え方ということを承知で、ホームズものは初期に傑作が多く、時代が進むにつれパワーダウンしてきたとします。
この仮説を裏付けるかのようにグラナダ版のドラマでは、後期の原作は複数まとめてシナリオ化されています。
ところが「ボール箱」は後期グラナダ版作品には珍しく、一つの原作でつくったエピソード。
第二短編集に収録が見送られた結果、後期に残った前期のパワーのある作品といったところでしょうか。
原作が夏なのに対し、グラナダ版は冬が舞台。クリスマスにしたことでホームズとワトソンがプレゼントを贈りあう微笑ましいシーンがあります。
このやり取りにハドソンさんが一枚噛んでいるのも嬉しいです。
冬の話なので、雪のシーンもあります。これが実に効果的。
【ネタばらし見所解説】
三姉妹の確執が肝になるのですが、原作と違いグラナダ版作品では、オリジナル要素を足して細かいエピソードまで描かれます。
耳を送ってきた箱に詰められていた塩は、原作では荒い塩なのですが、雪に見立てたのか、箱から塩が落ちるアップでは、かなりきめ細かい塩に見えます。
また原作にはない墓荒らしという設定が、耳を送りつけたのはイタズラ目的という誤った推理に信憑性をもたせていることもポイント。
舞台を冬にしたことで「寒い時期は死者が多いから、解剖の技術向上目当てで死体を盗むわけがない」とワトソンが推理する見せ場をつくっています。
惜しいのは、原作は担当刑事がレストレイドなのに、ドラマでは違うこと。
ラストエピソードならば、レストレイドにも登場してほしかったものです。
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