ギリシャ語通訳(1)
今回は長くなってしまったので、ネタばらしのない部分とある部分で二つにわけます。まずはネタばらしのない見所から。
グラナダ版のドラマは原作に忠実という評判です。実際、これまでの八話はそうだったと思います。今回は原作と異なる部分が目立ちます。
これは原作の「ギリシャ語通訳」が短いというか、結末が不明瞭というか、という点も大きいと思います。
オープニングは人通りの少ない街角でクラティディスが手紙を広げるところから。そこへ「クラティディスさんですね?」と人が現れ、クラティディスが「妹から手紙が届いてギリシャから来ました」と語ります。直後にクラティディスは殴られ、馬車に押し込められます。
ここから恒例のオープニング映像へ。バーンとタイトルが出て本編に戻ると、ワトソンの声で「天涯孤独の身だと思っていたホームズにはなんと兄がいた!」といったことが語られます。
オリジナルのグラナダ版ではベーカー街で書類を片付けるか探すかしながら、ホームズが兄マイクロフトのことをワトソンに語りますが、日本語版ではナレーションのような形でカット。
ホームズの祖母がフランスの画家ヴェルネの妹であり、芸術家の血が変人を生むといった打ち明け話やマイクロフトが所属するディオゲネスクラブの内部の細かい様子はグラナダのオリジナル版でしか楽しめません。
ワトソンの語りが終わると、いよいよマイクロフト登場。演じるのは、チャールズ・グレイ。原作ではかなり太っているという設定なので、ちょっと体型的には物足りない感じ。
原作ファンには伝説的な兄弟推理合戦が始まります。次々と街角でオモチャを買う男を巡り、矢継ぎ早に繰り出される推理の応報は映像で見るとより迫力があります。達人の手合わせを見られて幸せといった表情のワトソンも素敵です。
推理合戦で兄が弟の一手上をいき、実力を示したところでギリシャ語通訳のメラスが登場します。
今回の見所は原作よりも出番が増えたマイクロフトでしょう。
原作では事件の結末があいまいというか、いわゆる「匂わせ」レベルでしか語られません。ネタばらしに配慮して書きますが、グラナダ版ドラマではきちんと結末を描いています。
手が加わっているのは結末だけでなく、ホームズの「女性に厳しい」という要素を強調しているところでしょうか。
筆者自身は「結構、甘いところもあるんじゃないか」と思いながらも、「女性だからといって変に甘い顔をしたりしない、性別で区別をしない」程度の認識でいますが。
全体的に暗い映像が多いのも印象的。わずかな明かりが顔だけにあたって表情が強調されるなど、映像的にも工夫が多い印象です。
通訳の仕事を終えたメラスが馬車から降ろされ、転がり落ちた帽子を拾って歩く後姿のシーンの音楽もいいです。
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