青い紅玉

 次から次へと手がかりが出てきて、それを元に次の手がかりへと進む、RPGのような作品。

 冒頭は宝石に過去に起きたブルーカーバンクル(宝石)を巡る出来事が映し出されるという演出。原石の発見から強盗などをへて伯爵夫人に宝石が贈られるところで宝石に映し出す演出は終わり、馬車で移動中の伯爵夫人が映し出され、現代のパートに戻ります。

 日本語版ではメイド姿の女性といちゃつく男が映され、電話が鳴り二人はいちゃつくのをやめます。「大変、帰ってくるって」とメイド。どうやらご主人がご帰還のよう。この主人が伯爵夫人。メイドが風呂の用意をしているところに悲鳴が響きます。「ない……ブルーカーバンクルが」。

 ここでお馴染みのオープニング映像へ。「青い紅玉」とタイトルが出ると、夫婦がクリスマスの贈り物を選んでいる場面へ。そこへ刑事が現れ、夫ホーナーをブルーカーバンクル盗難の犯人として捕らえるのです。

 お次はベーカー街。ハドソンさんが「ピータースンさんがお話したいことがあるんですって」とベッドで寝ているホームズを起こしますが、名探偵はむずがり「お手上げ」とハドソンさん。

 ドラマ版はこういうちょっとしたシーンでハドソンさんがいい味を出しています。ピータースンとベーカー街のドアの前でハドソンさんが会う場面も引いた構図で台詞もないのですが、ハドソンさんが実にキュートな芝居をしています。

 ピータースンが持ってきたのはガチョウと帽子。この二つの品物を正統な持ち主に返すためにホームズは動き出すのですが、どうも相談を受けた時点ではホームズはやる気がなさそうです。寝巻き姿にガウンを羽織って眠そうにしているホームズは見所の一つ。

 ゲスト役者陣もみんないい演技をしています。賭け好きの鳥の卸商ブレッキンリッジ、パブ・アルファの店主など、出番が少ないキャラクターも生き生きしています。伯爵夫人も高慢で嫌な人物として表現されています(気のせい?)。

 ピータースンとヘンリー・ベイカーという二人の男は「いい人」なのですが、ピータースンは庶民的で朴訥な感じ、ベイカーは知的な感じと吹き替えのしゃべりかた一つとっても個性が表現されています。

 クリスマスストーリーのせいか、いい人が多いのです。パブのシーンでは店の前に浮浪者らしき女性がいます。ある人物はパブに入る前に施しを恵むのです。そして、店主も暖かい室内に女性を招きいれるというカットがあるのです。これは原作にはありません。




【ネタばらし見所解説】



 日本語版ではカットされていますが、伯爵夫人が帰ってくるところでメイドといちゃついていた男(ホテルのスタッフ ライダー)が配管工(ホーナー)を追い出すシーンがあります。ここがあるとないとでは作品の印象が変わります。犯人はメイドにそそのかされたライダーなのですから。

 メイドとライダーが犯人だとわかったうえで、二人の表情に注目して見直すと、二人とも細かい演技をしています。刑事が伯爵夫人に報奨金を出したほうがいいと提案する場面でのメイドの表情なんて、すごいですから。

 にしてもライダーの演技(吹き替えも)がいいのです。シリーズ屈指のダメ犯人を見事に表現しています。

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