「ミケの勇猛邁進 その④」

ミケ「とりあえずこっちで合ってるよね?」


カナ「ああ。次はそこを右──────」


 ミケとディノ、そしてカナは回廊を走っていた。目的地に無事着くための最短経路を探り、踏破する。

 カナがミケの健脚についていけてるのは、ディノがミケを背負っているのと、カナが防護壁の衝撃波を用いた移動を心得ているからであろう。(逆に言えば、それが無ければミケに追いつけず迷子になることこの上なし)



ミケ「おお、あれか!!」


 一分も経たずに、目的地にまで着いてしまった。

 生命の樹、セフィロトの樹が描かれた鉄の扉。


──────しかし、その扉は既に開けられていた。その中で、熱烈にひかる閃光──────


   「この──────わからず屋ァッ!!」


 アガサとクルスの戦闘の現場に、居合わせていた──────


 アガサが向こう側の壁に吹っ飛ぶ。

 余程の強敵。成長前とはいえ、ミケを二回も敗北を喫した阿笠亜蓮が、現実改変を用いても、まるで通用していない。


カナ「まじ、か──────」


ディノ「流石、ですわ…♪」


 クルスの、その鬼神のような、蹂躙するようなに、思わずミケと重ね合わせてしまうカナ。

 こちらの攻撃は一切効かない。そのくせ、相手の攻撃の一つ一つが、即死級。インチキ。


アガサ「がはッ…!!」


 その即死級の攻撃が、クリーンヒットしてしまう。アガサは頑丈な女なので原形を辛うじて保っているものの、もはや虫の息。勝敗はもはや、目に見えていた。

 しかし──────


クルス「お姉ちゃんのっ…!!ばかああっ!!」


 怒りに任せたようなクルスの叫びに呼応して、傍らから衛星のように出てて、解き放たれるレーザービーム。

 ──────まさか、殺す気じゃ…!?

 カナの背筋に悪寒が走った。


 レーザービームが着弾する。反応も出来ず、バリアを展開する隙さえ与えないクルスのスピードはもはや、世界の理を逸脱している。


 そのビームの威力で上がった煙は、次第に晴れる。あの威力だ。アガサは確実に、死んでいる。アレはさすがに、バリアでも防ぐことが出来るかどうか──────


 しかし、煙が晴れた瞬間に、カナがその生死を確認できる、なんてことは無かった。


 ある筈の、遺体の消失。アガサの肉片も、血飛沫すらも、影も形もない。


クルス「…お、お姉ちゃん…??」


 あれだけ暴れていたクルスが、半泣きのまんま、周囲をキョロキョロと見回している。その時に、目の端に映ってしまったのか。クルスはこちらに…カナに気付いてしまう。


クルス「…カナく──────」


 言い終わる前に、黄色い閃光がクルスの脳天をぶっ蹴り飛ばし、身体ごと壁に叩きつける。


クルス「んっがぁ──────ッ!?」


 現れたのはアガサ。そしてミケである。

 ミケは、既に動いていた。

 クルスがレーザーを放つ前にその健脚で超光速のダッシュで先回りし、アガサをかっさらって見せたのだ。


ミケ「実の姉貴をぶっ殺そうとするなんて、ぶっ飛んだ趣味してるじゃん」


クルス「ミケ…」


 互いのリーダーの2ショット。初対面は劇的で、鮮烈──────

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