「ミケの一蓮托生 その②」
ミコ「──────済まない、ミケ君。これは私の責任だ」
ミケ「……どういうことか、説明しよっか」
ミコは、アガサの携帯の、メールの内容を話しました。
それは、多方予想どうりでしたが、しかし、口にしてみれば重く、苦しい事実。
─────助けてくれ
そのメッセージを送ったのはカナでした。何故アガサのメールアドレスに送ったのか、それは不確かだが、カナが宛てがった手紙には間違いがないのだと。
ミケ「行こう。」
ミケがそれを聞いてからの決断は早いものでした。
カナが助けを求めているということは、
ミケ「ミコ。ダメだよ」
ミコ「……え?」
ダメ、というのはどういうことなのか。
ミコは虚をつかれたようで、目を丸くしてしまいました。
ミケ「こういうことになるのは、きっとカナもわかってた。だから、安心して」
ミケ「カナは生きてる!」
ミコ「……」
根拠の無い、自信。
いや、根拠ならあるのでしょう。彼女が彼と過ごしてきた時間は、ミコより遥かに長い。
そうして培ってきた繋がりが、彼女の自信につながっている。
でも、ミコは変に頭が良かったので、そのような自信は付けられませんでした。
何も答えられません。
ミケ「それでも罪悪感があるなら、着いてくればいいよ」
そう。
どこまでも真っ直ぐに、彼女はまるで簡単かのように、言うのです。
ミコは、やっぱり、そんな彼女だったから……
ミコ「やっぱりミケ君は、神様みたいな人だな」
ミケ「褒め言葉のセンスはないんだね」
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アガサ「移動手段の準備、出来てるぜ。イタリアからここまで十秒も掛からん」
アガサは彼女の土地の広い所で、どこぞの少年が持ってそうな木の長い棒で落書きを楽しんでいたようです。円い輪っかに、美しい幾何学模様…魔法陣、と言うやつでしょうか。
ミケ「…どれ?」
アガサ「これ」
アガサはその地面の落書きを指さします。
ミケ「ふざけんなー!こんなのただのラクガキじゃない!!」
ミコ「落書き?それは無いな。かなり無駄のない魔法陣だね。空間転移かな?」
ミケ「えっ」
え、これってモノホンの魔法陣なのですか?
ミケは魔術に対して疎すぎるのでよく分からなかったのであります。
全くもって、無知なのでした。
アガサ「まあそういうことだぜミケ。この円に入れば秒で敵の本拠地に二秒で着く」
ミケ「おっけー。」
ミケは迷わずその枠内に入っていこうとするのを、ミコが手を握って制止します。
ミケとアガサは今更なんなんだと、ミコをじっと見つめます。
ミコ「私が止める権利はないがちょっと待て。敵の本拠地…の、どこだ?」
アガサ・ミケ「「正面でしょ」」
アガサとミケは当然のごとく返答します。あまりのぴったりさに声が二重となってミコの逆鱗に触れて。
ミコ「アホか!?」
アガサ「ア゛ァ!?」
ミコ「直で本拠地に繋ぐアホがいるか!フツーは君、少し離れたところか裏方にだな!!」
アガサ「そんな小賢しいことは私は嫌いだね!」
案の定、言い争いが始まったのです。まあ、アガサの方はほとんど感情論なので同じ土俵で争ってすらいないのですが。
その中にミケが割って入って。
ミケ「ミコ。私は常々思ってるんだ。マンガの主人公は、 敵の城を前になぜ正面突破をするのか?なぜ裏口だとか、地下からとか、そういう回りくどい手を使わないんだろうって。」
ミコ「…その心は?」
ミケ「正面突破こそが王道だからだッ!!」
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─────もうね、阿呆かと。馬鹿かと。
君たちな、ロマン如きで正面突破なんか選んでんじゃないよ、ボケが。
カナとイブキの命かかってんだぞ。命。なんか河坂は他人のフリしてるし。この期に及んで他人のフリか。おめでたい事だねまったく。
よーしじゃあ起動しちゃうぞーって言ってるの、もう見てられない。
──────ってかちょっと待て!?
ミコ「起動まって、止まれーっ!!」
私は決死の覚悟で術式に手をかけたが、もう遅い。
青白く、眩い閃光の中。その光は正しく、魔法陣の起動サイン。
アア、オワッタ…!私の魂はもはや諦観の境地。寿命がストレスでマッハで頭がハゲそう。
夢であって欲しかった。
瞬きした瞬間、その風景全てが変わってしまった。
あんなに天を仰ぐほどの開放感のあった私の土地だった足元が、なんということでしょう。
もはや、見る影もない敵の根城に、空間転移してしまっていたのですから。
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河坂「私、忘れられてるな。」
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