「ミケの前途多難 ① 」
ぜんとたなん【前途多難】
これから先多くの困難や災難が待っているさま。また、待っているだろうことが予期されること。
一体いつから、こんなたいへんなことになったのでしょうか。
「ミケくん、君の存在は表沙汰にはされてない。マスコミはおろか、あらゆるメディアにも取り沙汰されていないはずさ。
表沙汰にすると…色々と、処理が大変だからね。」
「色々って…」
「色々は…『色々』さ。」
彼女の…ミコの言葉のニュアンスだけで、ミケは酷いことを妄想してしまいました。いや、誰でも思いつくことだと思いますけれど。
「というわけだから、このことは私と、君との秘密。ということにしておいてくれないか」
「それと」
「夜道にはくれぐれも「お気をつけて」」
ミケは帰路についていました。
例の交差点を意図的に避け(あの一件は半ばトラウマのようです)、わざわざ回り道の商店街の道に。
ミケはあのことを…ミコとの、あの一件を秘密に、というか、あまり考えないようにしました。
考えてしまうと、うっかり口に出しそうなので…
まあ、ミケが話す相手なんて、たかが知れてるんですけれど。
そんなこんなで、ミケはコロッケを立ち食いしながらそんなことを考えていました。
あぁ、それと、さっきから、何やら視線を感じているのですが…刺すような視線を感じているのですが。
「夜道には気をつけて」…か。
そんなことを考えましたが。
なぜミケをみているのか、何となく心当たりはありますが、現状どうすることも出来ないので、放っておきました。
…ああ、あとからかんがえてみれば、立ち食いはいけませんね。
こいつは失礼。
「おい、ミケ」
後ろから声をかけられて、渋々振り返りました。
その声の通り、そこに居たのは姫乃。姫乃カナでした。
「…あー、誰だったかなー。こんな人と会った覚えがあったようななかったような────」
「面白くないぞ」
キッパリ言います。
姫乃カナは別段ジョークや冗談に疎い学生ではなかったので、彼が面白くないと言うなら多分相当なのかもしれませんでした。
「それで、なんの用?」
と、落胆したかのように、溜息をつきながら、無愛想に聞きました。
すると姫乃は、
「例の転校生の家に行ったのか?」
「行ったけど、それがどうかしたの?」
「危険だとは言わないが、よくもまあ初対面の人間とつるめるよな…」
頭をかく仕草をしながら、それとなく悪態をつきました。
「まあ、フレンドリーだってことだよ。多分」
「オープンにしすぎだろ…あのなぁ、俺が言いたいのは、もう少し警戒心をだな」
もう、また説教が始まりました。ありがた迷惑なお説教。
ありがた迷惑って、結局は相手にとって迷惑なんだから、「ありがたい」なんて感謝の言葉を投げかけるのは変だと思います。ここは思いきって「迷惑だ」と、思い切って断るのが「ありがた迷惑」とかいう言葉を使う日本人の私たちに必要なものだと思います。
ということで。
「説教は迷惑だよ」
と、ミケが口走ろうとした、その瞬間。
何かがミケの鼻先を掠めます。
ほんの一瞬ですが、何かの「木片」だったかのように感じられます。圧倒的スピードのそれは、隣の街路樹を貫通、何処かに飛んでいきます。
「!!」
カナも、ミケも音に気づき、木を見ます。カナは動揺しつつも、木の反対側、誰かが「打った」と思われる方角をみます。
その方角には、
身長165cm、高校生のようでありながら、喪服のようなスーツの、男が、1人。反対車線の歩道に突っ立っているのでした。
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