「ミケの合縁奇縁 ② 」
「ここ、日本のK県H市において大規模な平行世界線収縮現象が生じた」
日野 ミコ。
身長170cm。スレンダーで黒髪ロングの彼女は、どうやら「超心理学者」らしくって。
傍から聞いてみれば嘘くさいし胡散臭ものですが。
彼女の目は、真剣そのものです。
「10日前。無数にある平行世界線が急速に収束し混在する現象が起こり、K県各地で「自動車事故」が起き始めた。それも…人身事故」
「…!」
10日前。姫野カナが事故にあった日と全く同じ。
でも、それがなんの関係が…?
「その現象の中心、震源地とも呼べるかな。そこに居たのは紛れもない君、ミケくんなのさ」
日野ミコは、パソコンのキーボード音を立てながら机に置いた…物理学?的な本(ミケにはよく分からない本でした)をめくりチラチラそれを覗きながら、ミケに話しかけているのでした。
「ミケくん。君の幼馴染である姫乃カナはあの臓器をえぐるような重体からほんの数週間で後遺症なく完治。しかも学校にまで通っている。おかしいとは思わないかい?自動車事故はもしかしたらほんの偶然かもしれないが謎の超回復は紛れもない超自然的または超心理学的なエネルギーと言えるだろうね。現代医学はもちろん、我々イギリスが誇る超能力者集団でもそこまでのサイキッカーは居ない。いたとしてもこれは人間の力を超えている。失った臓器を回復するなんて」
「ま、まってまって、まってよ。私の脳みそはそこまで回らないんだ」
ウルトラダッシュモーターでも着いてるのでしょうか。彼女の頭の中には。
…いや、頭が回る、というのはそう意味では決してないのでしょうが。
「…ふぅ。前置きを省こう。君は人智を超えた能力者の可能性がある。しかも世界最高レベル。…しかし、我々の知っている超能力とは、違う。力の種類としては程遠いと言ってもいいかもしれない。
同じネコ科と言っても、ライオンと三毛猫位の違い…みたいな感じだ。」
「…ぷっ……あははははははは。私が能力者…?アニメじゃあるまいし。なに?私の寝癖から電波でも出てるわけ?」
ミケは涙を出しながら笑い始めました。
さすがに冗談キツイ、といったところでしょうか。
でも、日野ミコは怒るでもなく…
「ははは。たしかに、今の君にとっては冗談にしか聞こえないかもしれないね」
そういうと、彼女は、ミケの目からは無地に見える、カードを取り出しました。そうすると、デジカメを取りだし、裏側をデジカメでビデオを取りながら…
「このカードの、裏側の絵を答えてみてくれ」
「ひゃははははははは!!マンガで見たわそれ。テレパス能力的なあれでしょ?…じゃ、スペードの8!」
ミケはミコのジョーク(?)が本当に面白かったみたいで遊び感覚で、トランプのスペードの8と、答えてみました。
ミコはそれを聞いて…いや、そのカードを見て、ニヤリと密かに笑いながら、
そのカードの裏を見せます。
「ほーら。スペードの8」
「…えぇ!?…ま、もう一回やって見れば…ただのまぐれでしょ」
「…いや。その必要は無いね」
「…は?」
「たしかに、この情報だけだとまぐれだ。しかし、この写真を見てみれば、話は別さ」
デジカメを確認すると…
それは、ありえない過去を写していました。
カードの裏は…
「UNOの黄色の4」。
そもそも、トランプですら、なかった。
「どういうこと…!?」
「そう。元々これはトランプのカードですら、なかった。さ、続きを観ようか」
続きを観ると、ミケの笑い声と、全くカードを回答した声がしました。
その声と全く同じ時に、そのUNOのカードが、トランプのカードに…「変化した」のでした。
その変化は、そのカードが液晶パネルだったというオチでは説明がつかないほどに…いや、そもそもカードはカード一枚分の薄さしかないのだから、液晶パネルなんて入る余裕もありません。
「超能力者でも、カードそのものを変えることなんてできない。トランプをウノに変えるなんて…テレパス能力でどうにかなる次元じゃない」
ミケは、彼女の言いたいことがようやくわかった気がしました。
「君は、恐らく…現在の、小さな現実を改変したんだ。カードがUNOの黄色の4だった現実を…カードをトランプのスペードの8だったという現実に。たったそれだけ。並行世界の変化では説明がつかない。それならデジカメの記録も変化して然るべきだからね」
「…」
何も言い返せませんでした。
嘘っぱちだと、反論する証拠はありません。
根拠だって怪しいものです。
「私は、君の観察がしたい。…君の得体の知れない力の…ね。それが私の、ここに来た意味だ」
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