「ミケの前途多難 ③ 」

 


「…イタリアの異偵ディテクティブ・パラノルマーレか…!!」


 ミコは語りました。


「…なに?それ。」

「異能に関する諜報機関及び特殊武装部隊だ。そいつは恐らく斥候だ。」


 ミケには言っていることがよくわかりませんでした。

聞き馴染みのある国名の、イタリア…が、自分を狙ったということなのでしょうか?ミケはあまりにも突飛な世界に迷い込んでしまったようで。


「俺達…いや、ミケは、国家に狙われてるって?」

「あぁ。そう考えて良いだろうね。恐らくミケくんの未知なる超常的な能力を恐れて───」

「とにかく、今からそちらに向かう。」



 場所は変わりまして、日野ミコの研究室。

よくわからない機械や、薬品やらがわんさかあります。それら全ては、『触らない方が君の身の為だ』と、変にぼかされてしまい不安要素しかありません。

……あと、漫画だったら背景書くのが面倒くさそうでした。

「…だが、何らかの組織が関わってるなら、なぜ集団で来ない?そこが分からないんだ。」

 カナはなんか、小難しい話をしているなあ。

ミケはそう思いました。まいかかる火の粉は振り払うだけ、ミケはそう思っているだけなのかもしれません。

「そこは憶測でしか話せないが───

私と同じ、研究のため、かも、しれないねぇ」

「……なるほど、言いたいことは何となくわかった。下っ端を利用して、戦闘能力云々を調査って事か」

 カナはミケが超能力を持っていることにすっかり順応していました。飲み込みは早い男です。

「そういうことさ。異偵は抜け目がない。ミケ君……いや、2人の監視は24時間365日、何時でも続いていると考えていい。」

 ……ん?2人?

ミケ1人では無いのでしょうか?ミケは訝しみました。

「君も目覚めたのだろう?ミケ君との濃厚接触により、力が」

「同じだと決まったわけじゃない」

「ミケ君と関係の深い君が、ミケ君とほぼ同時期に、ミケ君と共に超能力を発現する。そんな偶然がミルフィーユみたいに重なる状況は、偶然とはとても言い難い。完全に同じ種類ではなくとも、何らかの関連性があるのは間違いないさ。」


 カナは一息ついて、

「…その話はまた今度にしよう。今は……」

「対策だ。異偵が送り込んでくる敵。それにどう立ち向かうかだ」

「異偵のメンバーは能力の他にも魔術という技術を使う。能力よりも扱いが簡単だ」

 魔術。新たなワードが出てきました。

超能力の一種でしょうか。頭がこんがらがってきます。これまで超能力は何個出てきたのでしょう?

2つ……いや3つ?

「せんせー、質問ー。魔術って何?」

「自分の魂から生まれる魔力又は地球に流れる自然由来の魔力を操作し、特定の現象を起こしたり、物体を構築したりする技術のこと。詳しく説明すると数時間かかるがどうする?ミケ君」

 ミケは丁重にお断りさせていただきました。

どうやらあの敵の能力は魔術?とも自分の能力の種類とも違うらしいので、今出てきている超能力は、

・既存の超能力

・魔術(正確には「技術」らしい)

・ミケのあたらしい超能力

の3つということになりますね。

「その魔術とやらを、俺たちに教えられないか。」

「一朝一夕じゃぁ金属バットの方がまだマシだねぇ。それでも魔力を引き出すには死の覚悟が必要かな。」

「……現実的じゃないことはわかった」

 カナがシワを寄せはじめました。議論がどんどん暗い方向に進んでいるのでしょう。不安そうなミケの視線はカナとミコの顔をきょろきょろ往復します。

溜まりに溜まりに切ったミケは、くせ毛でぼっけぼけの頭を掻きむしり、


「ニャーーーーーーーーッ!!!」


 突然に響く叫び声。二人の注目があつまります。

「明日のことは明日考えようよ!考えても埒が明かないんだからさぁ!」

「ミケ!これはお前の事なんだぞ!?」

「どーせ明日も来る。だったら、明日を生き残るしかないでしょ。今後を考えても、どうにもならないじゃない。未来は真っ暗で見えないまんまなんだから」

「……確かに、様々な状況があり得ると言うことは、事前に考えておく事以外にも、その場その場の対応力が求められる。とりあえず、敵との遭遇の対策だけは、練っておくべきなんじゃないかなぁ。」

 ミコが上手く纏め、その対策をみんなで(ほとんどカナとミコが決めてしまいましたが)決めました。

要約すると、下のふたつです。

・戦力となるであろう(十分とは言えないが)姫乃カナ、日野ミコと一緒に登下校する。

・上を満たすために、ミコの研究室でしばらくは寝泊まりになる。


 ミケ達の生き残るための戦いが、始まろうとしていました。

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