「カナの伊太利旅 ②」
昼行灯なイブキはワイン酒を、ラッパ飲みしながら俺の後ろを歩く。
昼のイタリアの景観は綺麗だな。屋根が赤褐色のレンガ色で、壁は漆喰のような純白色。恐らく日本の京都などの条例により景観を統制されているのだろう。人々の美しさを守る努力がみてとれる。
酒飲みと一緒で無ければ……
カナ「例のアジト自体の場所の目星はついているんだよな?」
イブキ「そうだけど……どうしたの?」
俺は、少し、この展開を訝しんでいた。あまりにも都合がよすぎるこの展開に。
奴らの秘密のアジトとやらも、かなり早い段階で割れていたし、俺のそばにいる彼女、伊吹瞳子の介入も幾らか早すぎるのではないか。
──────無論、それだけの根拠で確信に至れるかと言われると無理な話だ。ただただ彼女の情報収集能力が群を抜いていると言うだけかもしれないし……
とにかく、今、自分の置かれている現状は把握しておかねばと思った迄だ。
例のアジトの場所が見えるポイントまで来ると、双眼鏡を覗き様子を伺う。
なんと言うか、『如何にも』という感じであった。
光の刺さぬ所に有るローマの影の裏路地──────ローマは裏路地も美しい。少し凸凹の石畳が並んだ小路の脇に、淡くカラフルな建物が並ぶ。大通りや、コロッセオ等のとは違い、静寂が故の趣がある──────にある、ライブハウスのような、地下に通づる階段のある更に影の建築物。
カナ「……で、本当にあそこでいいんだな?」
イブキ「いやいや、君が連れてきたんでしょーよ」
いやまあ、そうなのだが……。
カナ「こんな『いかにも』って感じだと逆に怪しいな」
イブキ「あははは。急造のマフィア?なんてこんなもんでしょ〜。」
イブキはまるでいつものようにヘラヘラと笑っている。
……そういうものなのだろうか?この人、いつも酔っ払ってるから言ってる事を信用していいかどうか分からない。
全く、なんでミコはこんな、たより無いとはいわないけど大人気ない女性を寄越したのだろう。
イブキ「問題は何処から潜り込むかって所だよね。」
カナ「あぁ、そこら辺は…多分だが、問題はない。」
──────
息が詰まるような下水道。
明かりなど一切ない暗黒の狭くも長い、迷宮の世界に、2つの照明の影。
イブキ「
カナ「そりゃすまなかったよ」
このお姉さん、あんまりスパイって格好してないからな…上品には見えないラフな格好だから、金を無駄にせずには済んだだけ幸運と思って欲しい。
それにしても、本当に長い…下水道のマップは見ながら歩いているが、それ込みでも迷う。
カナ「…たぶん、ここだ。ここのマンホールなら、裏口から入れる。もちろん見張りもいるから…」
イブキ「戦闘になるね。」
カナ「…ああ」
胸元のワイシャツを掴む。唇を噛む。
…そうだ。失敗すれば死ぬかもしれない。
ミケやイブキのノリで誤魔化されてきたが、今までかなり危ない綱渡りを強いられてきた。
…イブキが肩に手を置く。
イブキ「君の事は私が守るよ。」
そして、そのままずいと、イブキが前に出て梯子を登り始める。
"守る"…か。
少し喉に小骨が刺さるように、この言葉が心臓につっかえたような気がした。
俺も、一呼吸して、後に続く。
しばらくして、少し上から光が漏れる。イブキがマンホールに到達して、周囲を見ているのだろう。
イブキ「あった。武装兵二体。この程度なら1秒未満で制圧できる。先行くね」
カナ「ああ…」
そして、イブキの姿が暗がりから消えると、しかし戦争の音は無く、直ぐにマンホールの出口から顔を覗かせてきた。
イブキ「安っ全確保〜っ。制服もあるっぽいしとりあえず変装しとく?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます