「ミケの一念発起 ③」
「私も行くんだけど」
ミケは見るからに不満げに反対します。
そりゃそうです。だって自分がアガサの仇(まだ死んでないけど)をとると決めたのに、敵地に行けないなんて我慢できませんもの。
「ああ。分かってるよ。あとからお前も来るんだ」
「どういう事?」
『あとから』とはどういう意味でしょう?まあ恐らくは、カナが先にイタリアに行き、それからミケが、という感じなのでしょうが、その行動にどんな意味があるのでしょう?
「そこは私が説明するよ。」
割って入るように、日野ミコ。
「結論から言うと、カナには先にイタリアに行って、阿笠亜蓮の母、阿笠紗代子を救出してもらう。」
……ということは、アガサの母親は、イタリアにいるということ。ミケも『やはり行かなくては』と思いますが。
「どうして?」
「うーん、特別な用語とかは省くけど…君が行くとバレるからだよ。彼等は君の特殊な波長を検知して、攻撃を仕掛けてきている。先日の青年と阿笠は、君が能力を発現してから、一週間も経たずに襲いかかっているのはその為さ」
よく分からないけど、ミケが行くと色々ゴタゴタが起きて、面倒くさいことになるそうです。
なので、そういうことを起こしてアガサの母親が死なないように、先に救出しよう…という流れのようですね。
「わかったか?ミケ。これはお前の『アガサの母親を救いたい』っていうワガママを最大限譲歩して考えてやった戦略だぜ。」
「うん…でもひとつぎもん」
「ん?何かな?」
「カナは波長とか、ないの?」
「彼は極めて微弱な現実改変しか起こせないからね。」
「え?」
「ミケ君と接触して、彼女の能力の正体がわかった。」
「現実改変だよ。小規模だがこの宇宙に自分の世界のルールを押し付けて、現実を歪ませてしまうんだ」
「その際に波長が生まれる。君のは彼のよりも強烈だから、同じ現実改変者に気取られてしまうのさ。」
「????」
ミケの頭から煙が出てきました。
「おっと…ここまでにしておこう。とにかく、イタリアには彼だけで行ってもらうから。」
「は、はい…」
ミケは、自分の理解力が足りないかもしれないと、少し凹んでしまいました。
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翌日…空港。空へ人を運び、物を運び、心を運ぶ空の方舟の港です。
今日も今日とて人と物がごったがえして。
「絶対、阿笠のお母さん、助けてきてよ」
「ああ、約束する。」
ミケとカナの2人も、そこに居たのでした。でも、二人一緒に出かけるのではなく、
カナたった一人で、そこに赴くのです。
戦地イタリア。カナとサポートのミコが頭が良いとはいえ、相手のホームで戦うというのは…
「…帰ってきて」
「…おう」
そろそろ、時間でしょう。
不安な気持ちを残したまま、カナは搭乗口へ消えていきます。
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