「ミケと群雄割拠 ②」

 イタリアに行く飛行機の機内。ローマ直行の便である。

 どうやら彼女の母はローマにいるようだ。ただ、身柄を拘束されているだけあって、総合病院にいるとか、そんな事は無いらしい。(そうであったらかなり楽に事が進んだのだが…)

 それにしても、日野ミコの情報網は恐ろしいものがある。諜報機関の一種だろう異偵。しかもそれが内部で分裂した連中…

 名前は確か、クオーレ…だったか。そいつらの拠点の大体の位置を割り出すなんぞ、正直できることでは無い。

 その情報を吐いたアガサは、ミコが魔術的な結界内で拘束していると聞いた。


 機内は眠ってしまいそうな程静かなのに、異質な空気感と一抹の不安がそうさせない。


 ミケは、今頃無事だろうか。

 今にも崩れそうな雲の下の、幼なじみのことに思いを馳せた。



──────


 ミケは考えました。犯人を見つけ出す方法を。

 ミコは言っていました。奴らは異能力者のミケの出す異質な波長を感じて攻撃を仕掛けるのだと。

 つまり、能力を持ってる奴は独特な波長があるということです。


「ってことは、私も波長感じちゃえばいいじゃーん!」


 そうと決まれば話は早い。早速…まぶたを閉じて、深呼吸。

 一番頼りにしている視覚を捨てることで、活路は開ける。マンガで見た事があります。

 波長?っていうのはたぶん第六感の類だと思うので、こういう感じであっていると思います。

 血液が流れる音、悲鳴、騒音、全ての音を脱ぎ捨て、脳に送られるデータを制限します。


…そして。


「!!」


 その波長は、ミケの脊髄を通り抜けました。


──────


 こちら、結界外。

 例のごとくあの方法で中を覗き中。


 「ふーん…なんで目閉じてんの?こいつ」


 対象は未だ結界内をウロウロしてる。こりゃ再起不能も時間の問題だわね。

 あのアガサをはっ倒したって聞いたけど、やっぱりただのガキ…


「え?」


 コイツ、急にこっち方向に向かってきたんだけど?

 いや、まだだ。まだ魔術結界は破られていない。

 あの結界は私の二日分の魔力を費やしたんだぞ。電波なんて届きやしないし徹甲弾だって弾く。本当はあんな女子高校生を捕獲するためだけに使うのはもったいない代物だ。

 しかし。その願いにも近い誇りは簡単に崩れさる。


「ウオオオオラァァァァァッ!!」

「うわあああっ!!」


 まるで飴細工のように一発で蹴り飛ばしやがった。うちのボスといい、アガサといいこいつといい、本当バケモン揃いだよ畜生…!

 そして、その驚愕か、それともただ単純に速すぎたのか。

 痛みを感じる前に、網膜にその姿が焼き付く前に吹っ飛ばされる。


「ッ…!?がッ、あは」


 一瞬何が起こったのか分からなかった。

またも打撃で、反応する間もなく倒されたと、蹴られた数秒後に気がついた…


「悪いね。今猛烈にイライラしててさ」


 ミケ…あいつが近づいてくる。


「かなり痛いことするけど、いいよね?」

 

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