第28話:魔剣と聖剣8

帰りは行き以上に複雑であった。

路地を抜ければ昼で、階段を登れば下っている。かと思えば賑やかな広場におり、振り返れば夜だった。

「来たとき以上に意味がわからないな」

「……あの店から一度でも出たか」

「いや、行きと今しか出ていない」

「街が出る事を拒んでいる」

「そんな事があるのか」

「普段であればあり得ない。だが一つだけ可能性がある」

足を止めたベルジダットは過去を見る。魔王様の前に現れた龍。廃れた村の守り神。そして外界から隔離された世界の傍観者。

「次元龍だ」

その言葉に答えるように、上空から龍が落ちてきた。広場に敷かれた石畳を踏み砕き、咆哮を響かせる。街は不思議なほど静かだか、周囲を確認する余裕などない。眼の前には圧倒的な敵意を持った存在。持ち上げた首を二人に向かい振り下ろし口を開く。音の無い空気の塊が物理的な衝撃として二人を弾き飛ばしていた。間違いない、あれがベルジダットの言っていた唯一の可能性。次元龍だと理解したケルザは強ばる身体を起こし、立ち上がる。そこは何処でもない隔離された空間だった。一度霧となり立った姿で再構成したベルジダットが口を開く。

「最悪だ」

「何だあれは。どうすればここから出られるんだ」

「簡単に言えば、この隔離された世界の神だ。ここも同じ様に隔離された空間だろう。脱出方法は……思いつかん」

「……余計な者も入れてしまったが良いだろう」

空間全てから聞こえる重い声は、それだけで空間を震わせる。この空間に次元龍は見えない。

「次元龍、何故だ。何故貴方が邪魔をする。私達は街にも、住人にも危害を加えていない」

「勘違いするな、小僧」

言葉に殴られるように、何の予兆もなくベルジダットは見えない何かに弾き飛ばされた。

「ここは外とは乖離された別世界。この世界は私の世界、道理は常に私である」

「何が目的だ」

空間は敵意に満ちている。自分たちを倒すのであればベルジダットに行った不可視の攻撃をすれば良い。だが、一向に攻撃は来ない。

「……人間よ。私は貴様が生まれる遥か昔より、貴様の存在を知っていた。故に私は試さねばならない。貴様が何者なのか、私の過ちが生んだ存在なのか」

「意味がわからない」

「私は三千世界、過去も未来も全てを見通す次元龍。私は魔族として魔族の未来を守る責務がある」

「……魔王様か。あの時、貴方は魔王様と一体何を」

「そうか、あの場にいた小僧か。彼女を基として紡がれる拙い未来。余計な者と言ったのは撤回しよう。小僧共、理想の未来に溺れるが良い」

暗転する視界は忘却される意識に反し、平穏な未来を構築していく。



「起きてください」

「起きろ」

バルトに肩を叩かれ起こされる。

「いいじゃないですか。コルドさんも疲れているんですよ」

「そうよ、なんてったって世界を救った勇者様なんだから」

くすくすと笑うフィーレと機嫌よく酒を飲むユーリ、デリダが何かを食べている。自分を含めテーブルを囲む仲間を見ると記憶はすぐに呼び起こされた。そうだ、魔王を討伐し凱旋したのだ。一足先に駆け抜けた魔王討伐の通達は、自分達が王都に戻る頃に王都全体で祝勝の宴を催しており、歓待してくれた国王から明日を魔王討伐の記念日とし

大々的な催しを開催する事と相成った。そして今は仲間だけの前夜祭。

「いや、でもほんとによく勝てたなって。絶対死んだと思ったもん」

「そうですよね。私なんて逃げて隠れるので精一杯でした」

「私も似たようなもんよね、そもそも魔法効いてないみたいだったし」

「二人の補助には助かった。デリダも俺達の合間で魔王の気を散らしていた。本当によくやってくれた」

「まぁ、ほとんどコルドとバルトに任せっきりだったけどね」

「えぇ、二人とも勇者様ですね」

「俺は柄じゃない。それはコルドに任せよう」

「バルト、旅に出る前も俺にそうやって押し付けたよね?」

「俺の見る目は確かだろう?」

小さく笑うバルトも酒を一口飲み、容器をコルドの前に差し出す。意図を理解したコルドも手近な容器にを手に取ると、コツンと音を立てた。


「……ごめん、飲みすぎた」

魔王を討伐したのだ、浮かれるのも仕方ない。過ぎた旅路の話は尽きることなく、思い返せば短いように思えたが自分が酔う方が早かった。

「なによ、もう酔ったわけ?」

「コルドは強くないからな」

「大丈夫ですか?」

「流石に勇者様が明日二日酔いはまずいと思うよ?」

「うん、そうだよね。先に休ませてもらうよ」

あぁ、飲みすぎた。気持ち悪い。でも気分はいい。これ以上この場にいては空気を壊すかもしれない。頼りなく席を立った自分を支えるようにフィーレが寄り添ってくれた。

「んー、駄目そうですね。部屋まで送ります」

「勇者不在の記念日では格好もつかない、休ませてやってくれ」

「はは、そんときは頼むよ。バルト」

手に持つ容器を持ち上げ返事を返すと、ユーリに絡まれながらバルトは酒を飲む。デリダはユーリに肩を組まれ逃げることができず苦笑を浮かべていた。平和だなぁ。楽しそうな仲間達を見れば自然と口元は綻ぶもの。つい笑ってしまう。

「行きましょうか」

フィーレに促され賑やかな部屋を二人で後にする。薄暗い廊下は松明に照らされ赤黒く染められていた。ユーリの白い修道服が柔らかい赤に染まる。本来修道服は紺色が基調であるが、魔王を倒す勇者の仲間として純白の修道服が誂えられていた。着慣れない旅の初めは気恥ずかしそうにも見えたが、慣れた頃には汚れが目立つから洗濯が大変だと所帯じみた愚痴をこぼしていたのも知っている。彼女は仲間の中で唯一戦えない。戦う手段を持っておらず、また自分から戦う手段を持つ気もないと宣言し、それを全うした。その意思の強さは純白の修道服を着るに相応しいとコルドは思っていた。

「大丈夫ですか?」

フィーレは、コルドの肩ほどの高さから顔を覗き込む。

「うん、この程度なら明日は問題ないよ。寝れば大丈夫」

「もう、お酒を飲む量は考えてくださいね」

諦めたように窘めるフィーレを見て笑ってしまう。

「ごめんごめん、つい。あー、でも楽しかったなぁ」

「何回もみんなで飲んでるじゃないですか」

「何度でも楽しいよ。それ以上にみんなと旅出来て楽しかったなって。不謹慎ではあるけど結果としてみんなでこうして帰ってこれて、みんなでこうして飲めたのが楽しくてさ」

「……そうですね。でも、ここで旅も終わっちゃいましたね」

「うん、少し名残惜しいけど嬉しいことだよね」

「はい、喜ばしい事です。世界が一つ、大きな一つ、平和になりました」

毎日会い、毎日話していたのだ。沈黙は苦ではない。フィーレの言う平和の一つに自分たちは貢献した。その満足感と感慨深さはもう何年も前の名残りのように脳裏を過ぎ去っていく。

「ねぇ、コルドさん」

「ん?」

「コルドさんはこれからどうするんですか?」

「こらからかぁ、バルトと一緒に騎士団に戻るかな。デリダも団長が連れてきたし、たぶん正式に騎士団に入れるだろうね」

「そっか、三人は同じ所に行くんですね」

「まぁ、どこに送られるかはわかんないけどね」

「ユーリさんは本格的に家に籠もるようです。連絡手段をバルトさんに教えたようですね」

「フィーレは協会に戻るの?」

「……少し悩んでます」

意外であった。旅が終わった後など深く考えず、きっと旅の前と同じ環境に戻ると思っていた。だがフィーレは自分とは違い、色々な事を考えていたようだ。

「明日、相談にのってもらえますか?」

部屋の前に着く。一度コルドの手を握った後、フィーレは一礼して仄明るい廊下を戻っていった。



「──い、おい。聞いているか、ベルジ」

「……はい、何でしょうか」

聞き慣れた声が意識を持ち上げる。それは断絶した世界に不意に現れるような違和感。この違和感にベルジダットは覚えがあった。

「まったく、お主は。気が抜けたか?」

「申し訳ありません、少し呆けておりました」

「まぁよい。来るが良い」

歩き出した魔王の後にベルジダットは付き従う。向かう先はわからないが、その足取りは何やら騒々しい場所へと向かっていた。

「何やら騒がしいですな」

「まだ呆けておるのか。お主の功績に対する賛美だ。まぁ野太く綺麗とは言えないが、悪気はないのだ。許してやれ」

はて、自分の功績とは。記憶を遡ろうとしたが、その必要はなく理解した。そうだ、勇者と呼ばれる存在を魔王様の側近である自分が打倒したのだ。勇者とは魔王様と対を成す存在と言われる人間であり、魔王様を倒せるのは勇者だけと言われている。その勇者を私が倒し、魔王様を守ったのである。少し歩けば大広間、そこは熱気と騒音に満ちていた。その騒音が自分を讃えていることに、雑音と区別できず理解が遅れた。

「どうだ、ベルジ。お主の功績が我が軍を鼓舞している。勇者なき今、我らの勝利は必定だと」

「……圧巻ですな。これが人間を、大陸を支配する我ら魔族の姿」

「そうだ。これが大陸の覇者であり、我らの繁栄を願う未来の姿だ。まぁ、しばし待て」

魔王が手を軽く上げるとざわめきはすぐさま収まった。一人の魔族が魔王の横に駆け寄ってきた。

「集まっでおるな」

横に来た魔族は魔法で大広間に全て声を届ける。

「諸君はすでに知っておるな。我が軍は、私を狙う勇者を打倒した。私を倒せる存在を、我が軍は消したのだ。もう障害はない。躊躇いも迷いも必要ない。貴様ら全ての行動は、貴様ら全てを大陸の支配へと導いてゆく。我らの前に敵はいない。抵抗するものは殺せ、投降するものや無害な者は捕らえろ。全てを蹂躙し、大陸全てを魔族で満たせ。ここに宣言する。この戦争、我らの勝利だ」

その声に呼応するように声が湧く。当然だ。長きに渡った人間との争い、それがようやく魔族の勝ちで締めくくられる。それを魔王様の口から告げられるのだ、感極まるのも無理はない。

「さて、諸君。後は残務処理だ。今はそれより大事な事がある」

魔王はベルジダットに視線を送る。

「知らぬ者はおらんだろう。我が軍において最も武勲を立て、私の側近……懐刀とも呼べる存在、ベルジダットだ。こやつが我ら全ての障害であった勇者を葬ったのだ。誰も異論はあるまい。長きに渡る我らの争い、その最大の立役者はベルジダットである。よくやったな、ベルジ」

魔王軍の賛辞の雨、雨を貫く魔王の一言。それを受け、ベルジダットは普段の癖で深く頭を下げた。

「私には勿体無いお言葉です」

「何を言う、お主以外に相応しい相手などおらん。そうさな、少し早いが叙勲も済ませるか。とは言え、勲章の用意はない。ベルジよ、望むものを言ってみよ」

「……一つお伺いしてもよろしいですか」

「ふむ、何だ? 申してみよ」

「──貴女は今幸せでしょうか」

「随分と異な事を言うではないか。お主が勇者を打倒し、大陸の支配は盤石となった。我ら魔族の繁栄は必定。喜ばしい事この上ない。これを幸せと言わずなんと言う」

あぁ、やはりだ。この魔王様は……、彼女は魔王様ではない。これはまるで、過去の私が描いていた幼く哀れな儚い夢。それは本来誰に侵されるものではない記憶の底。

「……お詫びいたします。魔王様」

「さて、望む──」

まやかしに躊躇いはなく、幻想に感触はない。無造作に振られた破壊の魔剣は彼女の首に線を引き、頭と胴体を切断する。起点は自身の記憶を媒介した彼女。私は私が敬愛し、護ると決めた彼女に刃を振るう。それは酷く虚しく、私を、魔王様を愚弄する行為に他ならない。

「──ものを申してみよ」

所詮まやかし、作られた舞台。台本通りにしか動かぬ世界。自分らが崇める魔王様を目の前で切り捨てられようが、何も変わらず賛美の雨を降り続く。切断した彼女の体は後ろへ倒れ、地面につくと同時に頭と共に霧散した。

「次元龍。貴様は我ら魔族を迎え入れ、我等や忘れ去られた者のための世界を構築した。感謝はしている。だが、私に魔王様を……。魔王様を愚弄するならば話は別、貴様は魔族の風上にもおけん存在だ。傍観者に戻してやろう」

魔法の起点が消滅し、虚像の未来が溶けていく。幼く哀れな儚い夢。私が望んだ理想の一つ。それを今、自らの手で摘み取った。過去の自分が望んだ未来に未練も希望も憐憫もなく、吸血鬼の胸中はただただ憤怒に塗り固められていた。



「今日は疲れたね」

「ふふ、勇者様は人気者でしたからね」

魔王討伐の記念式典が終わり街が色めき立った残り火の中、遠くに賑やかさを感じつつ、二人はコルドの部屋に戻っていた。空はもう白み始めている。

「それで相談だったね。協会に戻るか少し悩んでるんだよね?」

「はい、その……何と言いますか、このまま協会に戻って良いものかと思っていまして」

「元々いたところに戻るんだよね? みんなも元気なフィーレ見たら喜ぶと思うけど」

「ええ、きっとみんなは暖かく迎えてくれると思います。ですが、それでは……それでは駄目なんだと、今は考えています」

「どういう事?」

長く短い旅の果て、自分たちは魔王を討伐した。誰一人欠けずに大きな怪我もなく凱旋を果たす奇跡。昨日の朝、国王への謁見の前に、無事帰還できた事に深い感謝を示すようフィーレは神に祈ったという。その時にふと、祈るだけでいいのかという疑問が沸いたらしい。

「私達は今まで旅をしてましたよね。行く先々で困っている人を見つけては、私のワガママで足を止めてしまった事も多くありました」

「最後は諦めてたけど、ユーリがよく文句言ってたよね」

「喧嘩もしましたよ。今では悪かったなと思っています」

「過ぎたことだからね。それに、それがあったからユーリも言うだけ無駄なんだって理解したと思うよ」

「ふふ、その後からは助かりました。困ってる人を無視するのではなく、手早く助ける方法を考えてくれるようになりましたからね」

旅路の思い出を交えつつ、フィーレ視点での物語が紡がれる。あの時どう思った、あれが良かった、これが嫌だった。様々な感情を噛みしめるように過去を綴り今にたどり着く。

「みんなと過ごした旅は終わり、みんなが各々の道を進んで行くんですよね。……私はここで生まれてずっと修道院で生きてきました。その世界が全てで、王都の一部だけが生活圏でした。でも皆さんと合って旅をして世界が広いことを学んで……。終わるのはわかってたのに心の何処かではみんなとずっと旅ができるなんて思っていて……。寂しいんです。みんなと離れたくないんです。もっとみんなと一緒に旅をして」

声が徐々に震え始め、瞳に貯まる涙が頬を伝う。

「みんなが王都にいるのはわかります。会えない訳ではないのもわかっています。それでも寂しいんです、どうしても寂しくて、もう一人で考えるのが無理になってしまって……、でも私に出来るのは祈ることだけだって、神様にお願いすることしかできないって思っちゃって」

弱々しい言葉を零すようにフィーレは俯いてしまう。膝に置かれた手は強く握られ、服にしわを作っていた。

「私思ったんです。この旅に、魔王を倒すという大きな意味ではなく、私にとっての意味は何なのか。辛い事、苦しい事、嫌な事、色々とありました。みなさんと出会って、別れるのがこんなに寂しい事なんだと学びました。それで、その……もう何言ってるのかわかりませんよね。皆さんと別れるのが寂しすぎて話がそれちゃいました」

気恥ずかしそうに笑った後、フィーレは涙を拭いコルドを見る。

「私、もう一度旅に出ようと思うんです。皆さんと行った場所、行かなかった場所。きっとそこは素晴らしい所で、素晴らしい人たちが生活していると思います。それでもやっぱり困ってる人はいるんだと今までの旅で学びました。だから私は、協会には戻らず世界を旅して困っている人を少しでも手助けしたいんです。そしてその話をここに持ち帰ってみんなに教えてあげたいんです。こんな場所に行った、ここはこう変わった、ここのご飯が美味しかった、いっぱい頑張ったんだってみんなに聞かせたいんです。でもそれにはきっと、一人では無理で……寂しくて……、それでも私自身祈るだけなのはもう嫌で……。それであの、お願いが……」

強く握っいた両手を解くと、恐ると恐る縋るように両手はコルドの手を力なく握りしめた。

「数は減っちゃって、今までみたいに賑やかには出来ません。でもご飯は作りますし、頑張って朝も起こします。だから、たがら……」

潤んだ瞳を向けるフィーレの頬が赤い。手に触れる弱い感触は明らかに熱を帯び、僅かに震えていた。

「私と一緒に旅をしてください。色んな所で人助けを手伝ってください。私と一緒に思い出のある場所、思い出のない場所、色んな所に行って二人だけの……時間と思い出が欲しいんです」

「……それって」

「みんなと別れるのは寂しいです、いっぱい考えました。でも駄目でした。貴方だけは、コルドさんとだけは離れたくないんです。一緒にいたいんです。だから今度は魔王を倒すという世界のための旅ではなく、私のわがままを満たす為の私の旅に同行してほしいんです」

両手で救われるように持ち上げられた手は彼女の胸元まで持ち上げられる。

「──好きです。私はコルドさんの事が好きなんです。誰かの為に真剣で、誰かのために命を張って、誰かに向かって嬉しそうに笑ってくれる貴方が好きです。だから、その誰かは私でいたいんです。お願いです、私と──」

言葉を遮るようにコルドはフィーレを抱き寄せた。優しく肩を抱き寄せられたフィーレは彼の手から両手を離し、置くように腰に手を回す。

「二人旅になっちゃうけど良いかな?」

「……はい、喜ンで」

過去の感覚に身を委ねるコルドは、未来が軋んだ事に気づけない。



もう五度目だろうか。意識を取り戻したベルジダットは不可視の攻撃に弾き飛ばされる。だが、おかげでわかった事がある。一つは次元龍の攻撃方法は魔王様同様魔力による攻撃、に見せかけた魔法である。上手く隠していた為気づくのが遅れたが、発動時に弱い魔法を感知できる。その為、ギリギリではあるが不可視の攻撃を防御する事ができた。本来自分のような霧状な生物に物理攻撃は効かない。この攻撃は内向きに張った人型を保つ結界を叩くような衝撃であった。攻撃に備え、外套ごと腕を持ち上げ衝撃に備える。無様に地を転がることなく、ベルジダットは衝撃に耐えた。一つは次元龍の見通す未来は不完全、もしかすると戦闘で使えるほど柔軟に見えるものではなく、もっと大局的にしか見えないのかもしれない。もししっかり未来が見えるのであれば、不可視という優位性を捨てるほど同じ攻撃を繰り返すこともないはず。そして最後に、この何もないと思われた空間は有限で、視認できないだけでケルザも次元龍もこの場にいるということだ。薄い霧を這わせるように空間を満たせば、そこが有限であり大小二体の生命体がいる事を感知できた。ベルジダットはその薄い霧を集め、破壊を付与した棘を生成すると次元龍に突き刺した。硬い音を立てた鱗が一つ、砕けたのを確信する。

「何故だ、なぜ魔族である貴様が私に刃向かう」

「ふん、所詮傍観者だな。貴様に世界に干渉する資格は無い」

今度は魔力を十全に込めた霧で次元龍を覆う。全方位から破壊の棘を突き刺すが、鱗を割ることはない。一度で効果を見破られたのか、次元龍の鱗は柔らかい鱗となり、破壊の効果を不発とする。

「わからん、貴様もか。貴様も魔王様と同じ事を言うのか」

何もない空間に隠れる必要はなくなったと次元龍は姿を浮き上がらせる。

「あの時、魔王様が何を言ったのかは知らん。だが貴様は魔王様を愚弄した。そこに魔族も人間もない。私は魔王様を、魔王様の尊厳を、魔王様の生きる世界を護る剣である。それこそが私が剣を振るう理由であり、貴様を敵とする理由だ。例えそれが過去の自分であろうと私は切り捨てよう」

「わからん。貴様は魔族の敵なのか、味方なのか」

「ふん、そんな区別しか出来ないから魔王様にも傍観者だと言われるのだ。私は魔王様の意思を全てにおいて優先する」

その生物個々の意思を理解出来ないから傍観者と言われるのだ。狼狽する次元龍は考え込むように動かない。頭を垂れ、わからないと繰り返す。確かに次元龍は魔族であり、魔族の味方だ。救われた者も多いだろう、私もその一人である。だが他者との関わりを断ち、自らの世界に閉じこもり世界を観測するだけであった魔族は大局的な見方はできても個人を理解する事は出来ないらしい。神らしいと言えば、それまでである。だからこそ世界に干渉せず傍観者でいるべきであった。

……未だ人間は起きない。

私と同じ様に未来に囚われているのだろう。だが未来とは常に今の先にある。決して今を無視して過去から延長された夢ではない。しかし、これは過去を夢として追体験する吸血鬼だからこそ、夢に囚われず自意識を保てたとも言えた。いつだって過ぎた過去に後悔は取り残される。どれだけ努力しようと覆せないものがある。……奴は勇者、それが今や魔王様の従者だ。きっと今は心地のよい夢の中だろう。あの人間にとってはこのまま理想の夢に溺れる方が幸せなのかもしれない。敵意を失った次元龍を尻目に見えない場所に倒れているケルザを見るが、空間を満たす薄い霧が揺らぐことはない。


「騎士団に戻らないのか?」

「うん」

「何故だ」

「フィーレに誘われたんだ。旅をして方方の人を手助けに行かないかって」

「……フィーレか。確かに今までも色んな所で困った人を助けていたな」

「うん、俺も考えたんだ。それで思い出したよ。俺が騎士団に入ったのも身の回りの人を守りたいからだって」

「……そうか」

「うん、騎士団に入って王都の人たちの助けになって、魔王を討伐して世界を守って、今度はフィーレの夢を叶える旅に同行しようと思うんだ」

「ふっ、随分と規模が小さくなったな」

「うん、でももしかすると世界を守るよりも大変かもしれない」

「そうだな。その旅には明確な敵はいない。終わりの無いものほど大変な事はないな」

「でも、そこはフィーレとだからね。みんなと旅した時間は辛いことは多かったけど、楽しかった。きっと今回も辛いことや苦しいことがあっても旅の終わりには、きっと後悔はなく楽しかったと言える自信はあるよ」

「お前との付き合いも長かったが、ここで終わりか。たまには戻れ、飯に付き合え」

「ごめんね、ありがとう」

「礼も謝罪もいらん。団長にはもう伝えたのか?」

「いやぁ、一人で行く勇気がなくてさ」

呆れたとバルトは溜息をつく。

「勇者がそんなことに躊躇うなよ」

「お前に押し付けられた勇者だからね、性分じゃないのによく頑張ったよ」

「まぁ、団長の事だ。女のために旅に出るなんて言えば笑って送り出してくれる。デリダも騎士団に入れるって話だからな、俺と組むかもしれん」

「気恥ずかしい言い方だなぁ。デリダがいるなら俺が抜ける分は問題ないね」

「ああ、問題ない。だからお前はフィーレを守って世界を旅しろ。そしてフィーレを守って帰って来い」

「ありがとう、土産話を集めておくよ」

「あぁ、楽しみに──」

世界が揺らぎ切り替わる。バルトと話した別れの日、あれはもう一月以上前の話であった。今はフィーレと二人で街道を歩いている。

「良い天気ですね」

「そうだね、街までもう少しかな?」

「魔王を倒してからは魔物も大分落ち着きましたね」

「あんまり襲われる事もないみたいだし、街の人も助かってるみたいだね」

「はぁい、いい事ですねぇ」

聞き馴染んだ甘ったるい声が聞こえた気がした。

「でも、本当に朝起こしてくれてご飯も準備してくれて助かるよ」

「ふふん、約束ですからね」

「でも毎晩一緒に寝るのは……」

「嫌でしたか?」

うるうると悲しそうな顔でフィーレは見上げてくる。嫌なわけではない。柔らかく温かい、腕の中で小さな寝息を立てているのは可愛いものであった。

「嫌じゃないけど」

「じゃあ良いですね」

にこにこと笑顔を浮かべ自分の欲求を通してくる。フィーレはこんな性格だったか、どこか覚えがあるような気がするが記憶に引っかかる人物はいない。

「とりあえずの目的地は魔王城だっけ?」

「そうですね、まずは過去の旅路をなぞり魔王城まで行こうと思ういます」

「道すがら人を助けるんだね」

はい、と元気な声をフィーレは返す。どことなく違和感があるが何かわからない。そんな違和感より屈託のない笑顔を見せるフィーレを──。

あぁ、そんな事も考えたな。ついぞ魔王城の前に二人は立つ。どうにも奇妙な事に今は遠くの土地から来た貴族の令嬢が住んでいるらしい。どういう事でしょうかとフィーレは眉を寄せた。自分にわかる訳もなく、一度会おうと城の戸を叩いた。中から現れたのは灰色の髪をした顔に大きな傷がある男であった。体躯は自分と同程度、だが目元は陰り顔は判然としない。

「どちら様でしょうか」

「すみません、旅をしている者です。以前、ここは魔王がいたと聞いておりました。近くによった際、今は遠い土地の御令嬢が住んでいるとか。宜しければ挨拶をと思いまして」

「……そうでしたか。少々お待ちを」

程なくして戻ってきた男は自分達を城に招き入れ歩き出す。案内された最上階の大広間、そこには陽光に照らされ、銀の長い髪を輝かせる少女が大きなソファの肘掛けに、微睡むようにしなだれていた。彼女の前に自分たちを立たせると男は少女の足元に立つ。

「ケルザ、こやつらが客人か?」

「ええ、挨拶がしたいと」

「ふむ、そうか。では名乗るとしよう」

しなだれた肘掛けから身体を離し、背筋を伸ばす。零れ落ちる銀の髪は、一本一本が輝き自分とフィーレを照らしているようであった。

「さて、ご足労であった。私がこの城の主、キルシェと申す。横に立つ男は私の従者でケルザだ。まぁ、無愛想ではあるが悪い人間ではない」

「フィーレと言います。修道院の出で各地の人を助ける旅をしています」

「コルドです。彼女の旅の護衛役をしています」

「フィーレにコルドか。これはまた奇特な旅をしておるな」

「……俺達が言えたことではない」

「うるさいぞ。すまないな、こやつは客人にこそ最低限の礼儀をわきまえているが主である私にはこの有様なのだ。まったく困ったやつだ」

「ふふ、仲がよろしいのですね」

「私は寛容だからな。私の下でなければ人に従うなど出来る性格ではない」

フィーレはキルシェと名乗る少女と歓談する。見た目は同じ位の年に見えることもあり、互いに親近感があるのかもしれない。だがコルドはキルシェとケルザを前に誤魔化せない違和感を感じていた。ふとこちらと目があった……気がしたケルザから敵意を感じ、反射的に柄を握る。それは慣れた感触よりやや小さい感触であった。唐突に襲われることはないだろうと目線を下にそらす。腰からは二本の剣が下がっており、昔から扱っている剣ではなく白い剣の柄を握っていた。……なんだこれは、こんな物俺は。触れた柄からは慣れた自分の魔力と、馴染み始めている別の魔力の残滓が感じ取れた。いや、自分はこの白い剣を知っている。そうだ、護り刀だ。その刀に触れ、心鉄から滲む魔力に意識を向けると次第に意識が覚醒を始めた。どういうことだ、何故フィーレと旅をしている。何故魔王と謁見している。なぜ俺が二人いる。今まで感じていた細やかな違和感が浮き彫りになり始めた。そうだ、俺は今ベルジダットと次元龍に対峙していたはず。何故こんな所に……。

「コルドさん、どうしました?」

心配そうに見上げてくる彼女、見慣れたその表情が酷く歪な何かに見え、心臓が跳ねた。だが今まで違和感がなかったのは恐らく彼女が俺の知る彼女と差異がなかったからだろう。それならば彼女は自分の味方であるはずだ。

「フィーレ、俺が魔法で幻覚を見せられている場合どうすればいい」

「……魔法ですか? 今はそんな気配は」

「教えてくれ」

「わかりました。ではこの空間で幻覚魔法が発動たとします。その場合は起点が2つ。一つは大広間という空間に限定されたもの、もう一つはコルドさん自身に何かしらの起点があり継続的に幻覚を見せられている可能性が挙げられます」

「確か結界と同様、起点を壊せば魔法は解けるんだよな」

「はい、その通りです」

魔法の起点に察しはついた。意識の外では一人で話す魔王と、自分に敵意を向けるケルザ。だがこいつらは今しがた接触したばかりで起点足りえない。記憶を遡れ。ありもしないフィーレとの旅の記憶の底、暖かく幸せすら感じた虚像の海の底。そう、この記憶の始まりは……。

「少し疲れましたか?」

「ふむ、であれば部屋を用意しよう。私はまだフィーレと話足りん」

「勝手に決めるな、部屋の用意が必要だ」

「一部屋あれば良いだろう、手間がかかると言うほどでもあるまい」

「ごめんね、フィーレ」

コルドは片手でフィーレを抱き寄せると同時に、握っていた護り刀を抜く。その行為を理解してか知らずか、フィーレは大人しい。溢れる虚構の記憶は全て自分の弱さから来た幻覚である。この弱さはきっと俺が乗り越えられなかった柵だ。それを超えられなかったからこそ自分の在り方に自信が持てず、生き方に迷ったのだ。柄に込めるは魔王の魔力。刀身が彼女の髪のように透ける銀色へと変色した。この刀は護り刀。刃などない。だがこの空間も感触も全てまやかしであれば刃など関係ない。魔王の魔力で弾き飛ぶはずだ。フィーレを刺すことに一瞬だけ躊躇うが、一緒に自分も刺すのだ。同じ痛みを共有すれば、きっとフィーレも許してくれる。護り刀は予想通り抵抗なく自分とフィーレを貫いた。共に始めた幸せな夢、ならば最後も共に締めよう。それは自分が望んだ愚かな夢を支えてくれたフィーレに対する感謝と自分に対する戒めであった。虚像の未来が崩壊する。泡沫のように淡く消えていく世界でコルドは初めてケルザの目を見ることが出来た。

ふと腕の中の温もりが、自分を見上げている気がした。

「短い旅でしたが、幸せな夢でした」

泡沫の夢は砂上の楼閣。ここに一つも真実はない。だが、もしかすると、こんな未来があったのかもしれないと少しだけコルドの悩みを和らげるには充分な優しい夢であった。


「何だ、今のは。今のは確かに」

突然自分の世界が一つ壊された。それも起点を壊すのではなく魔法自体を弾き返された初めての手応え。下げていた頭を持ち上げた次元龍は、そこに立つ男が魔王の持つ魔力を行使したのだと理解した。

「そんな馬鹿な、ただの人間が何故……」

「理由など知らん。よくも誑かしてくれたな次元龍」

額に手を当て、頭を振るう。その手には護り刀が握られていた。

「随分寝ていたではないか」

「寝起きは最悪だ。趣味が悪すぎる」

「だろう。だからここには戻りたくないのだ」

「倒すか」

「私も業腹である。ただ、奴は趣味こそ悪いがこの世界の神だ。ここで救われる住人は多い」

「わかった。ここから出る。この世界の端はわかるか」

「広くはない。お前から見て右へ走れ。霧で誘導しよう。その霧が消えた所が世界の端だ」

言うやいなや拳大の霧がケルザの前に浮かび上がり、世界の端へ向かい飛んでいく。それを追い走り始めたケルザを止めようと次元龍は首を持ち上げ、不可視の魔法を吐き出した。しかしそれは突如現れた厚い霧の壁に阻まれ、中程まで弾き飛ばすも貫通せずに掻き消える。

「魔法である以上、破壊など容易。貴様はまた選択を違えたようだな、次元龍。二度と外の世界に干渉せず、この世界の神として傍観者を務めるがいい」

何もない空間の先で先導する霧が消えた。ケルザは護り刀に魔王の魔力を込めると、銀閃を持ってまやかしの世界を切り裂いた。



「うぅむ、それがこの剣と言うわけか」

城に戻り、事の顛末を話しながら魔王に聖剣を手渡す。鞘から刀を抜いた魔王の足元を挟むように座り込み、歓談していたシィラとムゥマは物珍しそうに聖剣を見上げていた。ベルジダットは三人に挨拶をすると定位置に立つ。

「しかしまぁ、刃のない剣とは不思議なものだ。この意匠も面白いな。話によれば中に見える銀色の部分は私の魔力なのだろう?」

「そうだ。俺の魔力で覆う事で、お前の魔力でも魔法を発動できるようにしている」

「出立前に話していた目的は達成できたと言えるのだな」

「えぇ、概ね。後はそやつ次第でございます」

「相わかった。御苦労であったな、二人共。この聖剣、確かに受け取った。せっかくだ、少しばかり効果を見せてくれ」

納刀した聖剣をケルザに手渡す。受け取ったケルザは僅かに刀身を抜き、自分の前に薄く透明な障壁を展開した。

「魔力の量によって性能は変わる。これが最低限だな」

それを見たシィラは服の事など気にも求めず、四つん這いで数歩移動し、展開された障壁を叩く。

「おー、硬いですよ魔王様ぁ。私の商売上がったりでぇす」

「いや、俺の障壁はそこまで効果を保てない。展開し続けるのは魔力の消費が多く、かと言って全力で構築してもただの硬い壁だ。お前のように衝撃を分散する効果はない。恐らく、どの硬度で構築しても吸血鬼の魔剣で容易く壊れるだろう」

「おぉう? 同業他社みたいですねぇ。ふふん、せんぱいは私に勝てないということですかぁ」

薄い壁の前に座り込んだシィラはにこにこと壁を叩く。

「ムゥちゃんも叩きましょう。硬いですよぅ」

「シィちゃん、それ楽しいの?」

「ええ、解いたら私の手が先輩を叩いてしまいますからねぇ。なんだかドキドキしまぁす」

「して、私の魔力ではどうなる?」

「こうなるな」

魔力を切り替えると透明な壁が薄く銀色に色づく。その壁を叩いたシィラの手は弾き返されるように、自身の額を叩いていた。

「いたっ‼ えぇ、何ですかぁ? 壁に殴られたぁ? ムゥちゃん気をつけてくださぁい。この壁はせんぱいみたいに生意気でぇす」

「攻性防御、いわゆる反射だな。こっちも長く展開はできないが、今のシィラみたいに相手の攻撃をそのまま攻撃として返せる。魔法に関しても同様だ。次元龍のお陰で幻覚や結界であっても破れることは実証した。まだ慣れていないから多様はできないが魔法の対処は増えたな」

歩み寄ったベルジダットは手に魔剣を精製し、薄銀の障壁を壊すも同時に魔剣も壊れる事を魔王に見せる。

「この様に付属の効果によっては相殺となります。私の破壊で障壁は壊せますが、反射の効果で私の破壊が返ってきます。私の様に魔力で再精製するのであれば問題ありませんが、武器がなければ発揮できない物に対しては有用かと」

「ほうほう、なるほどのぅ。魔剣と聖剣で相打ちとは面白いではないか。ふむ、気に入ったぞ。しかと使いこなせ」

「あぁ、わかっている」

定位置に戻ったベルジダットは霧の中から小さな物を取り出し、魔王の頭の横に傅いた。珍しい事があるものだと、魔王は頭を動かし、ベルジダットを見やる。

「時に魔王様。魔王様に渡す物が聖剣では色気がないと思いまして、シィラ殿とムゥマ殿に手伝ってもらい、一つ普段からの感謝を込めまして私からも細やかな献上品がございます」

小さく頭を下げ、恭しく差し出した両手の上には黒い櫛が置かれていた。それを手に取ると魔王はまじまじと検める。

「ふむ、これは?」

「普段世話になっている街で見つけたものです。どうせなら日用品がいいと二人の助言を受け、魔王様の御髪を整える物を選ばせて頂きました」

「はぁい、なので明日からはベルジさんの贈り物で髪を整えさせていただきまぁす」

黒地の中に銀色の月、淡く光る蒼で描かれた三匹の黒蝶。

「そちら螺鈿細工と呼ばれる作りでして、黒い蝶を模した意匠から螺鈿黒蝶と呼ばれる品でございます」

漆塗りで艶のある櫛を眺め、掌に置き指で撫でる。

「良い触り心地だな。ありがとう、ベルジ。今度こそ大事に使わせてもらおう」

ムゥマはその優しい声音につい顔を上げてしまう。自分が聞いてきた魔王様とは程遠い本物の魔王様。彼女は櫛を愛おしそうに眺め微笑んでいた。


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