第8話 ゲーム

 深夜二時から始まる、毎日の習慣になったネットゲーム。


 ネットワークを介して、世界中の数十万ものプレイヤーがサーバー同時に接続している。

 ネットの世界の剣と魔法の広大な世界。そこで僕は高レベルの魔法使いだった。


 深夜の冒険はネットのプレイヤーとパーティーを組んで、クエストと呼ばれる小さな物語を解いていく。


 プレイヤーはギルドのメンバーだったり、フレンドだったりするが、見知らぬプレイヤーと一夜かぎりのパーティーを組んだりもする。


 リアルで知らない人間と一緒に行動するなんて、僕には一生無い事だろう。


 だが、ネットの世界ではゲームに限らず、見知らぬプレイヤーと一緒に行動したり、会話をしたりするのは当たり前の事、

 リアルの顔が見えないこの世界は、僕が要領が悪いアルバイト店員でも、大会社の社長でも、何の差別もない。


 クエストには殆ど、ボスが存在しており、バトルは避けられない。

 パーティーに参加するキャラには戦いのパートの役割があり、力を合わせてゲームのクエストをこなしていく。僕の魔法使いは、魔法の力で攻撃と回復を担当する。


 ふと見ると、ベッドの上でチカチカと点滅する光。

「うん?ネット電話……アスタルトかな」

 ネット電話のアプリは、お互い同じソフトを持っていれば、無料で会話が出来、複数の人間での会議電話も可能。


 パーティーを組んでクエストを行う場合にとても便利だった。

 それに見知らぬネットのフレンドに、携帯の電話番号を明かす必要も無い。

 確かに僕は、ネットのフレンドは、リアルの友人よりも親近感を持っている。

 しかし、全てのフレンドが、好意的であるとは言えない。


 携帯番号を悪用されたり、ネットで晒されたりする。

 例えネットで上ではどんなに信頼出来ても、リアルの人物は分からない。

 アプリを起動して、ネット電話で会話を開始する。


 現れたアスタルトの画像には、ゲームで使っているキャラの姿が映る。

 このソフトは、テレビ電話が可能で、相手の顔や自分の顔が通話中に画面に写る。

 なかには自分の画像でそのまま話す人もいるが、僕は自分の顔を知られるのは嫌だ。スマホに自分の好きな絵をアップロードして、僕の顔の代わりにアバターとして使う。

 アスタルトの見ている像には、僕がゲームで使うキャラの魔法使いの絵が写っている。同じようにアスタルトの顔は、萌え系の可愛い女の子「アスタルトには似合わないよ」と笑い話になるが、彼の本当の姿は分からない。

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