第19話 失踪
最近ネットの掲示板で、話題になっている事がある。
ネットゲームのプレイヤーが突然、失踪するという話だった。
確かなソース元では無いが、僕のプレイしているゲームでも事件が起こったと、書いている掲示板もあった。
アスタルトからの連絡が無くなってから、もう一週間。すごく気になる。
見知らぬフレンドからのメール。
それをアスタルトへ転送した直後、彼のログアウトが表示された。
それ以降、彼からの連絡は無くなった。
「自分でメールを確認しよう」
何か嫌な感じはするが、このままではスッキリしないし、もしアスタルトが失踪事件に巻き込まれたら……と思うと落ち着かない。
「掲示板で噂されているプレイヤーの失踪……アスタルトも……」
馬鹿な考えを打ち消し、見知らぬ、ケルブというフレンドからのメールを確認する。
「なんだ? どうゆう意味なんだ?」
“人は夢を見る。どんな絶望を抱いていても、どんな哀しみに覆われていても。そのビジョンが、世界と人を変えていく。例え神でも、人の夢は変える事が出来ない”
文章はそこで終わっていた、ゾクッとする。
「危ない奴からのメールか?」
世界中の人が、このゲームをネットワークで共有している。
ゲームが好きなのは当然として、僕はどこかゲームをリアルの世界との繋がりとしていた。人付き合いが苦手な僕。リアルの世界では重要性のない僕。
でもゲームの中では挨拶も気軽にするし、みんなと協力して巨大なボスを倒したりする。この世界では、僕も必要なもの……と思ったりも出来る。
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広い砂漠を歩く僕の魔法使いがいた。
前回、ゲームを終了した場所が、チームで狩りをしていた砂漠のど真ん中。
「……まったく忘れていた」
このゲームは、ソロでモンスターを狩る事が難しく、パーティーを組んで戦った方が効率が良かった。特に僕の操るキャラは魔法使い。
魔法を唱える時間を稼ぐために、前衛と言われる、防御力の高い、肉体系のジョブが必要だった。いつもは、アスタルトがその役をしてくれている。
モンスターに遭遇しないように、こっそりと歩く僕は、この砂漠の一番の難所にさしかかった、砂漠の小さな谷。
ここにはエリアボスと呼ばれる、この砂漠で最強のモンスターが住んでいる。
以前この砂漠の谷は、パーティーでの狩りの場の最適ポイントだった。
エリアボスが落とす、レアアイテムも人気があり、いつも多くのパーティーが、狩りをしていた。
しかし、このゲームがサービスを開始してから、もう五年が過ぎ、新たなフィールドがたくさん追加され、この谷を訪れる人も少なくなっている。
僕の魔法使いは高レベルだが、魔法の詠唱中に攻撃を受けると、魔法がキャンセルされる為に、一人ではエリアボスを倒すどころか、雑魚モンスターとの戦いでも歩が悪い。
こんな時いつもはアスタルトを呼ぶのだが、しばらくアスタルトとは連絡が取れていない。僕に来たからのメッセージを転送した後、連絡がつかなくなっている。
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