第50話 血天使の見る夢
「誕生日……おめでとう!」
気がつくといつも僕の部屋。日が当たらない暗い部屋。
いつも僕が寝ているベッド、そして湿った布団。
本当にいつもどおりの日常。
少し違うのは、スマホの紅い目の少女が僕の誕生日を祝ってくれた事。
画面の中で微笑む少女が何か語り出した。
僕は眠くて、スマホを胸に置いてそのまま眠りについた。
少女は僕の様子に安心したように話を続ける。
「人は夢見るわ。例え神でも、人が見る夢の内容を変える事は出来ない」
「人はネットを造り、世界中と光の速度で、繋がる事が出来るようになった。そのおかげで多くの事を知る。知らなくていい事も合わせてどん欲に情報を得る」
「その情報は、流れる水でなく、水たまりの腐った水だったり、誰かが意図的に色を付けた水だったりする。莫大な情報が人を生かしては殺し、縛りつけては解放する。そして人を変えていくの……その行く先は誰にも解らない」
ディスプレイの少女は、赤い瞳を閉じた。
「それでも人は夢を見続ける、未来へ進むしかないから。どんなに後悔しても、昔が懐かしくても、後戻りは出来ないから。例え自分を滅ぼすことになってもね」
「あたしが見る夢はね……あたしの子のあなたが、この世界を覆うことなの」
不思議な笑みを浮かべる少女は、誘うように、スマホの画面から手を伸ばす。
「それはあたしの夢の話……さあ、あなたも夢を見なさい。神でも変える事が出来ない血天使の夢を」
了
血天使のみる夢(オリジナル) こうえつ @pancoo
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