第17話 私の赤い夢

最近、あたしの身体と心が変わった。


自分の中に何か別の生き物が、育っていくみたいな感覚。

それは、十歳の誕生日に与えられたもの……それが原因。

それを口に含んだ時に、血の臭いと鉄の味がした。

嫌な顔をした私を見て、眼鏡の男が言った。


「大丈夫だよ……さあ、もう一度飲んでみようね」

 大好きな眼鏡の男の言葉に、コクリと頷いて精一杯の我慢をした。

 コップ一杯の赤い液体を飲みほす。


「ゴホ、ゴホ……」

 咽かえる私の背中を、優しく撫でた眼鏡の男。

 その日から、毎日支給された赤い液体を、むせながら飲み干す。


 そしてあたしは気付いた。

 眼鏡の男が、他の女の人と話していると、胸がざわめく事を。


 前はそんな事は無かった。それがファーストに嫉妬し、今度は生きてる人間。

 だんだん気持ちを抑えられずに、胸がザラザラと落ち着かなくなる。

 イライラする心に、自分の感情が押さえられなくなる。


 今日も眼鏡の男は研究員の女の人と、楽しそうに話をしている。

 私は思った。


(私以外の女は……ここからいなくなればいい)

 まるで大人の女が持つ嫉妬の感情。

 毎日飲まされる液体は急速にあたしを成長させていく。


……夢の中……悲鳴を上げる女を……あたしは追い詰めていた……


 逃げ場を無くした女は泣きながら「助けて」と懇願する。

 最初は嫉妬のような暗い感情が心に渦巻いていた。

 それも女の無様な様子な姿、化粧は剥げ落ち服装は乱れ、泣きじゃくりながらあたしに「殺さないで」と何度も繰り返す……無様で汚い女を見て満足していた。


 もう許してやろうと思ったあたしは「もういいわ」と呟いた。


 それなのに大きな声で助けを求める続ける女。

 理性も美しさも無くした女を見ているうちに、あたしに別の感情が芽生える。

 それは今まで味わったことの無いもの。


「なんだろう……このうるさい物は……」


 女が壊れた人形のように見えてきた。

 キーキー音を立てるそれに、もうあたしの感心は無い。


「壊れた玩具は仕舞っちゃおう」後片付けを始める。


 女の脚を払い、床に倒して、まずは右手を折った。

 「小さくしないと入らないわね」

 悲鳴を上げ必死に懇願する人形。

「……殺さないで……お願い」


 女の言葉は無視して手、足、腕、脚、首と順番に折った。


「これで入るかな……」


……その日……あたしが見た夢は……血の臭いと鉄の味がする夢だった……

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