第6章
第24話 親の役目
私は、電車に乗って打ち合わせの場所に向かう。
どうしよう、緊張してきた……
とにかく何か叫びたいってのどが訴えている。
大丈夫、直しも上手くいったし、自分でも面白いと思えた!
それに、クロにも力をもらった!
そう、自分に言い聞かせて目的の駅で電車を降りた。
地下鉄の階段を上り、地上へと向かう。
クロが来てから騒がしくて睡眠不足になったり、不幸になったり、いろんなことがあった。
それでも、私はクロが好き。
クロと一緒に居たい。
だから、クロがこの先ずっと笑って居られるように……
私が踏ん張るんだ!!
クロには、私しかいないから。
そんな覚悟を胸に、私は階段を上り切った。
その時、スマホを操作しながら自転車が近づいてきた。
運転手はスマホの画面に
夢中で私の存在に気づいていない。
『キィィィィ ガシャン!』
♢
「おぉー、できたあぁ」
クロは部屋で一人、額の汗をぬぐっていた。
「今日はパーティーだぁ!」
そう言って見上げるクロの視線上には『かおるおめでとう』と書かれた紙がカーテンのレールに貼られていた。
そのほかにも、パーティーによく使われるような飾り付けを施した。
クロが頑張って貼ったのだ。
「こりゃ、かおる喜ぶぞぉ。大変だぁ」
クロは確信したような表情で言った。
「クロ、死ぬほど褒められちゃうぞぉ。えらいこっちゃ」
クロは今から褒められることを想像して、きゃっきゃっとはしゃいでいた。
「クロえらいえらい」
「クロは本当にいい子だねー」
かおる二号と三号にクロが言わせていた。
「クロは当たり前のことをしただけだよ! クロはえらいからね!!」
クロはドヤ顔を浮かべていた。
「クロ、もっとかおるの役に立ちたいな」
夕暮れに染まり始める窓の外を眺めながらクロが呟いた。
「かおる、まだかな……」
辺りは綺麗な夕焼けに染まり、窓からもその光が差し込んでくる。
物寂しい気持ちでクロはかおるの帰りを待った。
♢
「おい、人が倒れているぞ!!」
「警察は?」
「それより、救急車だろ!!」
「電話したの!?」
自転車とぶつかり倒れた私の周りでそんな声が薄っすらと聞こえている。
大丈夫だよクロ……
不幸になっても、つまずいても気にしなくていいから。
子どもを守るのが……
『親の役目なんだから――――』
薄れゆく意識の中で私はそう思った。
そして、意識は暗闇の中に落ちていった。
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