第14話 クロとアオイ

 お風呂から上がったアオイは、クロとスケッチブックを通して話をしている。

にしても、アオイは簡単に受け入れ過ぎではないか。


『クロ、もっとアオイと遊びたい!』


 クロがスケッチブックにペンを走らせる。

それは、女の子のらしい可愛い文字だった。


「いいっすよー! 何して遊ぶっすか?」


 アオイも随分と乗り気である。

すっかり、仲良くなっている。


『さっきの続きやりたい!!』


 クロは、コントローラーをアオイの元まで持っていく。

ほんと、好きだなそのゲーム。


「いいっすよ! 今度こそ、負けないっす!」


 アオイも子供みたいな楽しそうな表情を浮かべている。

精神年齢が近いのか?


「お、おお。やっぱり、クロちゃん強いっす!」

「クロ、勝ったー!! やったー!」


 クロの五戦五勝だった。

少しは、手加減してやったらどうかと思うほどだ。

アオイはがっくりと、肩を落としていた。


「クロちゃん。もう一回、もう一回やりましょう!!」


 アオイが、クロにせがんでいた。

いや、負けず嫌いかよ。

いい加減諦めたらいいのに。



「仕方ないなぁ。クロ、やってあげる!」


 クロはドヤ顔を浮かべて言った。

いや、クロもやりたいだけだろうに。


「よーし、やるっすよー」


 アオイは意気込んでテレビの画面を見つめている。


「んふぅー!!」


 僅差だったが、クロの勝利だ。

毎日やっているだけあり、クロのゲームの腕はかなり上達していた。


「クロちゃん、強すぎっすよ。完敗です」


 アオイはコントローラーを置くと、後ろに倒れるように寝転んだ。


「クロ強い? ほめてー!!」


 クロも、コントローラーを置くと私の元にバタバタと走ってきた。


「うん、クロ強い強い」


 私は、クロの頭を撫でまわした。


「えへへー」


 クロの頬が緩んでいる。

可愛いかよ。


「さて、二人ともそろそろ寝るよ」


 時計を見るともう、日付が変わろうとしていた。


「ええ、もうっすか先輩!」

「いや、明日仕事だし。アオイも仕事でしょ?」


 いくら、公務員とはいえ、そう何日も休むわけにはいかないだろうに。


「へーい」


 私は、布団を用意し始めた。


「お泊りだー! お泊りだー!」


 クロが、部屋を走り回って、はしゃいでいた。

私の他にも、人がいるのが嬉しいんだろう。


「電気、消すよ」


 そう言うと、私は電気を消した。

クロとの日常、それを受け入れてくれる人がいる事に嬉しさを覚えつつ、私は目を閉じた。




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