第18話 クロの試着会

 今日は先日クロとお出かけしたときに買った服の試着会をするらしい。


「クロのお着替えターイム!! ドーン!!」


 自分で効果音まで言うなよ。

クロは自分の腰に手を当てて言った。


「パチパチしてー!」


 クロの指示により、私はクロに向かって拍手を送った。


「クロは着替えられるのでしょうか!?」

「えーっと?」


 私は困惑した表情で聞いた。


「ぬがして!!」


 クロは何故かドヤ顔で両手を広げて、前に差し出した。

いや、自分で着替えられないのかい!!


「クロはどの服を着るのかな? クロの歌が終わるまでに考えてね!」


 クロの着ていた黒いワンピースを脱がすと、何やらまたクイズが始まった。

そして、クロの歌とは何ぞや。


「クロっクロっクロっクロっ」


 横に広げた手を上下に動かすという、変な動きと共にクロの歌が始まった。


「クロはお着替え得意クロ! そんな人はだれ!! クロだよクロはクロなんだよ」


 歌はまだ終わらない。


「クロクロ! クロっクロっ! クロはえらいよ」


 左右に移動しながら変な踊りと歌は続く。


「ウサギクロだよ! さみしくしたらダメクロよ!」


 クロは、自分の髪の毛を掴んでウサギの耳に見立てていた。

そしてその場で、ぴょんぴょんと跳ねる。

いや、可愛いか!


「クロっクロっ! はい!! 答えは!!」

「え、今!?」


 クロはいきなり私に答えを問いかけた。


「えーと、白いワンピース……」


 私は、咄嗟にたまたま一番最初に目に入ったものを言った。


「かおるが来て欲しいなら、これにする」


 クロは白いワンピースを着ようとしている。

いや、クイズはどこにいった?


「クロはかおるが好き」

「ん?」


 クロは、白いワンピースを持ち上げながら口にした。


「クロはかおるが大好き。故にクロはこれを着る!!」


 クロは私に、グッと近づいてきてドヤ顔を浮かべながら言った。

リズムだけは三段論法!!

いつも見ている教育番組の影響か?

クロは覚えた言葉をすぐに使いたがる。


「ぬくぬくぬくぬく」


 そう言いながらクロはワンピースを着る。

だから、効果音を自分で出すな。


「白クロだよ!! 白黒つけるよ!!」


 クロは両手をガッツポーズにし、腰の位置に大きなリボンが装飾された白のワンピースに着替えた。

それで、その言葉はどこのチャンネルで覚えたんだ。


「うん、可愛い! 凄く似合っているよ」


 私は、着替えたクロを見て言った。

予想はしていたが、予想以上に似合っている。


「クロ、照れちゃうなぁ! 宇宙一カワイイいだなんて」


 クロは両手で両頬を包んでにやけていた。

いや、そこまでは言ってないよ。

まあ、可愛いことに変わりは無いのだが。


「じゃあ、次はこれを着る! 脱がせて!」

「あー、ハイハイ」


 こうして、クロの試着会は続くのであった。

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