第31話 クロはどこから?

 この部屋が、事故物件ではないということが判明した。


『人が亡くなったことなんて無いのにねぇ。怖い話だわ』


 大家さんは電話越しに話し続けていた。


『あっ、もしかして、また部屋帰る話? やーねもう、お祓いでもしようかしら』

「い、いえ、それでは。ありがとうございました……」


 私は、そこまで言うと電話を切った。


 この部屋が、事故物件ではない……

では、今までのは何だったのだ……

クロは一体、どこで死んだの……?

クロはここにずっと一人でいたんじゃないの……?

……クロ


 クロは一体誰なの?

クロは……本当に……


 自分でもどう収集すべきか分からなくなった思考で私は部屋に戻ってきた。


「あっ、かおる!! クロ、アオイをやっつけたよ! すごいー?」


 クロは、いつもの調子でドヤ顔を浮かべていた。


「うん、すごいすごい」


 私は、クロをほめてあげる。


「いい子いい子してー」


 そういうと、クロは私に向かって小走りで近づいてくる。

可愛いなぁ、おい。


 そう思った、その時……


「クロ……」


 クロの姿が消えた。

クロの服だけが、その場に残されていた。


「先輩……?」


 私の表情を見て不思議に思ったのか、アオイが口にした。


「クロをほめてー!!」


 再び、クロが姿を現した。

全裸だが。

消えた時に、服が落ちてしまっていたのだ。


「クロをほめてー!!」


 クロは全裸のまま、私に抱き着いてくる。


「クロ、すごいでしょー! んふー」


 私の首に手を回すと、クロはドヤ顔を浮かべていた。


「いいから、服着て。服」


 そう言って、私はクロに落ちた服を着るように促した。


「あれ? クロ、はだかだ!!」


 クロは自分が服を着ていないことに、驚いた表情を見せていた。


「クロちゃんいたんすね。驚きましたよ」


 服が突然落下したことに、アオイも驚いたようであった。


「クロ、まほう使えたのか……」


 驚いた表情と共に、クロは唾を飲み込んだ。


「クロってすごい……!」


 クロはまだ全裸のままで言った。


「いいから、服着なさいよ」


 そう言って、私はクロに服を着せた。


 クロが消えること。

ここが、事故物件ではないこと。

ただの偶然にしては出来過ぎな気がする。



 クロは一体……


 どこから来たの……?

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