第4話 幽霊は猫舌?

 ポルターガイストの正体も分かった所で、私は少し部屋の中を案内した。

まあ、間取りは変わっていないのだが。


「絵が、たくさんある」


 女の子は机の上に広げてあった、ネームに視線を落とした。


「あー、漫画だよ。知っている?」


 ある程度心を落ち着かせるためにも、私はコーヒーの入ったマグカップを手にそう言った。

ちなみに、このネームは今週中に仕上げなければならないのだ。


「ちょっと、仕事するから、自由にしてていいよ」

「見てても、いい……?」


 幽霊の女の子は、上目遣いに聞いてきた。


「えっ?」


 その、可愛らしい表情に私は嫌だとは言えなかった。

もし、この表情で見つめられて嫌だと言えるヤツが居たら、今すぐここに連れて来て欲しい。

まあ、居ないとは思うけど。


「ほぇー」


 作業している間、女の子は私の手元を眺めていた。


『視線が……気になる』


 ネームを仕上げていくが、見られているとやりずらいものだ。


「すごく、上手……好き……」


 そう言って、幽霊の女の子は、口元が緩んだ。

その声に、私は手を止めて、女の子のから少し、視線をずらした。


「ど、どうも」


 そして、照れ隠しのようにマグカップに入れたコーヒーを一口飲んだ。

そのマグカップを女の子は、じーっと見つめてくる。


「もしかして、飲めたりもするの?」


 幽霊は飲食するのか、出来るのか気になったし、飲めるのか定かではないので、そう尋ねた。


「試したこと、無いけど……」

「飲んでみる? 苦いよ」


 コーヒーはブラック派であった為、ミルクも砂糖も入れてい居ない。

子どもに飲めるかどうかは分からない。

大人でも美味しいと感じるかどうかは人それぞれだ。


「うん!」


 女の子は、コクコクと頷いた。


「そんなに、意気込まなくても大丈夫だよ」


 幽霊の女の子は凄く意気込んだような表情を浮かべていた。

私は、マグカップを渡すと、それを両手で受け取った。


 ズズっと、音を立てて、コーヒーを口にした。

その刹那、女の子は目を見開いた。


 ああ、やっぱり苦かったのかなっと思ったが、その反応は違った。


「あちゅぃ」


 ベーっと舌を出し、涙目になっていた。


 まさかの猫舌だったのだ。


「大丈夫?」


 少し、心配になって女の子に聞く。


「でも、苦くておいしい」


 女の子は表情を柔和なものに変え、コーヒーの感想を言った。


 外見の可愛らしい姿からは想像できなかったが、舌は意外と大人らしい。


「明日も早いし、もう寝ようか」


 時計を見ると、もう日は回っていた。

私は、布団の準備をしに向かう。


「どこで、寝たら、いい……?」

「寝られるの!?」


 驚いて、思わず大きな声を出してしまった。

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