第2話 ウチ、来る?

 私は、幽霊の女の子と同居することになった。


「家、行こうか」


 抱き着いてきた、女の子の頭を優しく撫でながら言った。


「うん、行きたい。でも、行けない……」


 幽霊の女の子は、力ない絞りでしたような声で言った。


「えっ?」


 私は、驚いた表情をし、女の子の表情を見つめた。


「私、ここの地縛霊だから、ここから出られないの。気持ちだけで凄く……すごく嬉しかったから、もう、静かにして……」


 ボロボロになったぬいぐるみを、強く抱きしめ、一言一言を紡ぎ、肩を揺らした。

目には、涙を浮かべている。


「どうすればいいの?」

「え?」


 幽霊の女の子は拍子抜けしたような、そんな表情で私を見つめてきた。


「一度は、『うん』って言ったってことは、何か方法があるんでしょ?」


 私には、何も方法は無いとは、どうしての思えなかった。

もし、あるなら、この女の子を一人の寂しさから解放してあげたい。

そう思っていた。


「だけど……」


 幽霊の女の子は、遠慮がちに声を上げた。


「いいから言ってみな」

「取り憑くの」

「マジか……」


 方法があることは予想していたが、まさか取り憑くとは思わなかった。


「でも、取り憑いたら、不幸になる。私、幽霊だから。だから……」


 喉を鳴らすような可愛らしい声でそう言うと、ぬいぐるみをきつく抱きしめていた。

その姿を見たら、ますます、この女の子を一人にはしておけないと思ってしまった。


「ほれ、いいよ。取り憑いて」


 私は、目線を幽霊の女の子と同じ高さにすると、両手を広げて見せた。

不幸になるくらいなんだ。

一人の寂しさ、辛さに比べたら何てことは無い。

私に、この子を見捨てるという選択肢は無かった。


「ほうとうにっ? だって、不幸に……」

「いいから」


 優しい表情を受けべ、笑顔で頷いた。 


「うしろ、むいてっ」


 そういう、女の子の目には、さっきより沢山の涙が溜まっていた。


「はいよ」


 私は、言われた通りに後ろを向いた。

すると、幽霊の女の子のは背中に乗っかて来た。


「うっうぅ……とり、ついたぁ!」


 目には、沢山の涙を溜めていた。


「うん……」

「あり、がとう……」

「うん、ウチ行こうか」


 背中に感じる重みは、確かに重かったし、その体温は暖かかった。

まるで、幽霊とは思えないほどに。

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