第3章

第12話 後輩来訪

 クロとお出かけした翌日の事であった。


 人目ひはばからず、幽霊と話した結果、SNSに私の動画が拡散されていた。


「めちゃくちゃバズっている……」


 私のスマホの画面には『1.5万件のリーツイート 5.1万件のいいね』と表示された動画を眺めていた。


「さすがに、これはクロに見せられないな……」

 

 覚悟の上だったが、こんなに拡散されるとは予想外であった。


「落ち込むな……」


 コメントには、

『まさに独り言、殴ってもいいだろもう』

『顔は普通なのにな』

『こういう奴は排除しろ』と書かれており、大炎上していた。


 『ピンポーン』


 その時、私の部屋のチャイムが鳴った。


「ん? 誰だろうか」


 宅配便か何かだろうと高を括って、私は玄関の扉を開けた。


「はーい。あっ」


 扉を開けると、そこには見知った顔があった。


「これ、どういうことですか? 先輩!」

「アオイ!?」


 そこには、専門学生時代の後輩、瀬戸アオイがスマホの画面を私に向けて立っていた。

ショートボブの明るい髪の毛をしている。

こいつも変わらないな。


「仕事は? 平日だよ今日」


 私は、とりあえずアオイを部屋へと招き入れた。


「そんなん、休みましたよ。一大事ですから」

「おい、公務員!」


 公務員というのはこうも簡単に休みを取れるものなのだろうか。

それも、私の炎上というくだらない用事で。


「麦茶でいい?」

「あざーす」


 私は、冷蔵庫から麦茶を取り出すとグラスに移す。


「ところで、連載会議は落ちましたか?」


 アオイがいきなりぶっ込んで来た。


「しれっと地雷踏むな! 本当空気読めないな!」

「空気は吸うもんすよ。何言ってるんすか」


 アオイは屁理屈を言っている。


「おぉ。おぉ! 知らない人だ! 誰?」


 クロはアオイの顔を、珍しいものを見るようにマジマジと見つめていた。


「誰!?」


 クロは目をキラキラとさせ、興味しんしん!といった様子で私に聞いてきた。


「専門の時の後輩。瀬戸アオイ」


 私は、アオイに聞こえないくらいの声で言った。


「つまり、クロの友達だ……」


 クロは真剣な面持ちで言った。

いや、なぜそうなる。


「で、先輩。これはなんすか?」


 アオイは、私の人権を無視された炎上動画をスマホの画面に表示させ、見せてきた。


「えっ、とー」


 正直、どう話すべきか迷った。

しかし、私は決めたのだ。


「私今、幽霊の女の子と一緒に暮している」

「幽霊……」


 アオイは驚いたような顔をした。

流石に、信じてはもらえないか……

そう思った時であった。


「なーんだ! そう言うことすか! だから周り気にせずその子と話していたわけっすか」


 スッキリしたと言わんばかりの表情を浮かべていた。


「しっ、信じるの!?」


 あまりにもすんなりと信じてしまったので、私は拍子抜けした、


「当たり前じゃないすか?」

「いや、でも」


 普通信じるか?

いきなり幽霊と暮しているなんて。


「友達舐めないで下さいよ。先輩がそんな嘘つく人じゃないって、知ってますから」


 アオイの言葉に、私は心が暖かくなるような感覚がした。


「てか、心配して損しましたよ。でも、先輩、めちゃくちゃカッコいいです! 惚れ直しました」


 アオイが微笑みを浮かべながら言った。


「私は、そう思います」

 

 ほんと、空気読めないんだから……


「……そう?」

「もちのロンすよ!!」


 こんな友達が居て、私は救われた。


「SNSのは、出来るだけ通報しといたので。じゃあ、今日泊まりますね」

「えっ!?」


 どういう脈絡か、アオイがうちに泊まることになった。


「おぉー! お泊りだ!!」


 クロは、はしゃいでいた。


 いや、本当に空気が読めないな……

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