第21話 遊びの家の鍵とグレンヴィル家

あれから数日が経った日、ケインが店に突然やってきて、ビンゴ大会で渡した鍵を持って来るように言われて持って行った。


「ヒカル。お前、鍵の事をすっかり忘れてたんじゃないのか?」

「いや、忘れてない。俺も忙しくて色々あるからな。鍵の事はちゃんと覚えてたよ」

「そうなのか。なら早速出かけようか。この鍵の屋敷に案内してやる」


馬車に乗って広くて大きな土地にやってきた。

そこには、ケインの屋敷程ではないにしろ、立派な3階建ての屋敷が建っている。

やはりトカゲのマークが旗として立っている。


「よし、着いたぞ。この目の前にある屋敷と土地がお前の物だ」

「ええーーー!?これがビンゴ大会の景品!?」

「そうだ」

「とんでもないな……。お前、後で料金請求したりしないだろうな?」

「する訳ないだろう」

「あの横の小さな建物は何だ?」

「あれは、お前の屋敷の使用人達の家だ。宿付きで雇用している」

「使用人までいるのか……。全部でこれいくらするんだろうな……」

「家と土地で合わせて金貨1万枚だ」


あれ?金貨1万枚って前にどこかで聞いた事あるような……。


「あ!お前が最初、俺に福笑いのお礼にって提示してきた金額じゃないか」

「そうだ。お前は、これが買える金をあっさり拒否したんだ。そして僕と親友になった。これがどれ程の価値なのか理解したか?」

「わかったよ。目に見えてよくわかった。お前が俺に凄く感謝してるってのは伝わったから」

「しかし面白いのがこの経緯だ。金貨1万枚をお前に拒否されてしまい、お爺様に相談した。それでビンゴ大会の話をした時に、ビンゴ大会の景品として、この金貨1万枚で何か買ってみたらどうかと言われたんだ。まさか再びお前の手に土地と家として戻ってくるとはな。本当に偶然というのは凄いものだな。縁がある」

「まあどっち貰っても受け取りにくいけどな……。ほんとにいいのか?こんな凄い物貰っても平気なのか?」

「ああ、全く問題ない。好きに使ってくれ」

「なぁ、ケイン」

「ん?なんだ?」

「薄々感じていたけど、お前って相当凄い貴族なのか?ビンゴ大会の景品、ボーリング場もそうだ。そしてこの土地と屋敷。使用人の家まであるし。グレンヴィル家って何なんだ?」

「聞きたいか?」

「……やばいところなのか?」

「グレンヴィル家は、最初の貴族だ」


えっ……?最初の貴族……?

とんでもないセレブって事だよね!?


「えっ……」

「元々は商人の一族だった。先祖は、とても商売の才能があったようだ。衣食住あらゆる分野で商売をして財を築いたらしい。それが始まりだと聞いている」

「へえー、元は商人なのか。じゃあ今は、何をしているんだ?」

「商売をしたい人間相手に出資をしている」

「へぇー。株主みたいなものか」

「カブヌシとは何だ?」

「まあグレンヴィル家と似たようなものだよ。それであのトカゲのマークは、何の意味があるんだ?」

「あれはグレンヴィル家の家紋だよ。僕の先祖がトカゲ好きだったみたいでね。トカゲを飼って孫と遊ぶのが代々続く風習らしい。僕も小さい頃から、お爺様が飼ってるトカゲのゴンちゃんと一緒に遊んだものだ」

「ふーん。まあペットみたいなもんか」

「まあそんなところだ」

「それにしてもでかいな……。これ本当に俺が当てたのか……。いつか宝くじで億万長者になって豪邸建てるのが夢だったんだよ。それで将来ニートになって一生遊んで暮らしたいと夢見てたんだ。まさかビンゴで当たるだなんて思わなかった」

「タカラクジ……?ニート?」

「ああ、いや。何でもない。気にしないでくれ。まあ要は、こんな豪華な物貰えて嬉しいを通り越して驚いてるんだよ」

「そうか。まあよく分からないが……。案内しよう。門を抜けたらここが庭だ」

「うわー、広いなー!!サッカーも出来るし、テニスコート作れそうだし、バスケもできそうだ。畑も作れるんじゃないか。これ」

「サッカー?なんだ?さっきから何を言ってるのかさっぱり分からないが、畑は土を耕せば作れるだろう」

「いいなぁ。ここで野菜作ってレインさんに持って行ってあげよう」

「中に入るぞ。その鍵で開けてくれ」

「ああ、わかった」


鍵で開けて中に入ると、広々とした空間が広がっていた。

正面をまっすぐ歩いていくと階段があり、2階へと続いていって3階の階段がある。


「まずは1階から案内する。1階は、ゲーム部屋だ。オセロ、トランプ、ジェンガ、双六、ダーツ、UNO、ボーリング、ビンゴ。お前が作ったゲームが全て遊べるようになっている。今後増えていったとしても対応できるだけの部屋数を確保してある。後はトイレ、大浴場。こんなところだな」


ケインに連れられて1階の全ての部屋を案内してもらった。


「おおー、ゲーム部屋にトイレと大浴場まで付いてるのか。凄いな」

「まだまだこれからだ。2階に行くぞ」


ケインに連れられて2階の階段を登っていく。


「2階は厨房と大人数で食事を楽しめる広々としたスペース、そして食事を楽しみながら演劇や音楽を楽しめる空間になっている。後はトイレだな」

「へぇー!これは広いな!いつでもパーティーができるな」

「次は3階だ」


一緒に3階に登っていく。


「ここは、部屋が6部屋ある。どこでも好きな部屋を寝室にしていいぞ。必要な家具もすでにある程度配置してある。何か欲しい物があれば、その都度、僕に言え。用意させよう」

「おお、家具付きなのか。そりゃー、ありがたいな。ベッドも広いな。2人で寝ようと思えば寝れそうだな」

「隣で寝るような相手を早く見つけて貴族になれよ。先に屋敷を手に入れてしまうだんて全くお前という奴は……」

「いやー、毎日生きるのに必死でさー。そんな先の事考える余裕なんてないって」

「はぁ……。それからこの屋敷の家事全般をする者やお前が出かける時に送迎してくれる使用人達も手配しよう」

「まあ流石にこれだけ広い屋敷を毎日一人で掃除するのは大変だもんな……。店からもちょっと離れるし、送迎してくれる人がいるのはありがたいな」

「それでいつから住むつもりだ?」

「うーん、いつから住むかは、もう少し考えてみるよ。マリオさん達とも相談したいから」

「そうか。また決まったら連絡してくれ」

「わかった」


店に帰ってきた俺は、いつものように店の掃除をしたり手伝いの仕事をした。

店を閉めた後、皆でご飯を食べた。

食べながら今日の事を皆に話した。


「今日、俺がビンゴ大会で当てた土地と家を見てきました。想像してた以上に大きな家でビックリしましたよ」

「そりゃ良かった。お前さんにも家ができたわけだな」


マリオさんは、喜んでくれた。


「アリス、これで一人で部屋を広く使えるから安心して着替えもできるね」

「師匠、私にとっては緊急事態ですよ。師匠の服のストックがなくなったら困ります。もし引っ越すなら、師匠の古着を送ってください」


アリス……。

俺は、引っ越しても追いはぎに遭うんだね……。


「レインさん。これからは店まで通いになると思いますが、またよろしくお願いします」

「わかったわ。離れててもヒカルさんも家族みたいなものよ。いつでも来て良いし、いつでも休んでも良いからね」

「ありがとうございます」


レインさんも喜んでくれた。


「ヒカルー。僕もヒカルの家に遊びに行きたいよー」

「アルト。いつでも遊びに来ていいからな。色んなゲームあるから一緒にやろうな」

「うん!楽しみ!」


結局、話し合いの結果、一週間後に引っ越す事にした。

まあ元々自分の持ち物なんて特に何もないし、強いて言うなら何着かある服くらいだけど、今ある服は、全部アリスに取られてしまったので、市場に新しい服を買いに行った。


広々とした3階建ての屋敷に住んでいるのは、俺一人。

ゲームのやり方を教えながら、食堂でバイトしてるだけの生活で、こんな事になってしまった……。


どうしよう……。

俺、なんかどんどん大きな事に巻き込まれていってる気がするんだけど……。

嫌な予感しかしない……。











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