第39話 ヒカル、金貨の顔になる
レインさんの店とアリスとりこのカフェ、ニコを手伝う忙しい毎日を送っていた。
「ヒカルさん。悪いんだけど市場に行って食材を買い足してきてくれないかしら?今日もお客さんが多くて足りなくなりそうなの」
レインさんから言われ、俺は市場へ向かっていた。すると木の陰から俺を見て手招きする怪しい男がいた。こういうのには、あまり関わらない方がいいのだろうけど、呼ばれたから仕方がない。
「な、なんですか?」
「お兄さん。あれだろ。サカキヒカル・グレンヴィルさんだろ?」
「そうですけど」
あれ?
この人、なんかどこかで見た事があるような……。
ダメだ。思い出せない。
「えーと、どこかでお会いしましたっけ?」
「それな!!それなんだよ!!俺と初対面の奴は、大抵そう言うんだ」
「えっ?」
「俺が誰か分かるだろ?」
「ちょっと待ってくださいよー。えーと……」
絶対に見た事あるんだ。どこだ?
どこだっけ……。
「ああっ!!シルスベア・クローバーだ!!」
「正解!!」
シルスベア・クローバー。
それはこの世界で最も価値がある金貨の顔になっている人物である。
確かこの世界で初めて学校を作った人だ。
「でも全然老けてないですね。シルスベア・クローバーって昔の人でしょ」
「そりゃそうだ。シルスベア・クローバーは、俺の先祖だ。俺はその末裔のミネガー・クローバーだ」
「なるほど」
「なあ。実は俺、あんたに会いに来たんだ。サカキヒカル・グレンヴィルさん」
「えっ?俺に?」
「俺の頼みを聞いてくれないだろうか?」
「なんですか?頼みって」
「シルスベア・クローバーに変わって、金貨の顔になってくれないか?」
「ええー!?どうしてですか」
「先祖のせいで初めて会う人に、どこかでお会いしましたか?って言われるのに、もううんざりなんだ」
「誇らしい事じゃないですか。先祖の顔が金貨だなんて」
「いや、もううんざりなんだ。先祖のシルスベア・クローバーは立派な人だが、俺はそんなに立派な人間じゃない。だから期待値だけがやたらでかいんだよ。それがもうプレッシャーでな。嫌で嫌でたまらないんだ。なっ、頼む。人助けだと思って」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ。通貨の顔を簡単に変えるなんて簡単にできないですよね?」
「大丈夫だ。何を隠そう俺が通貨を作る責任者なのだ」
「えっ?そうなんですか?」
「ああ、そうだ。先祖の功績が認められてな。うちは代々、通貨製造を請け負っている」
「そうなんですね」
「通貨のデザイン変更には、貴族グレンヴィル家のケイン様の許可さえ出れば通貨のデザインを変更する事ができるんだ」
「ケインの許可か。でもケインが許可するかな?」
「実は、ケイン様には、すでに許可を貰ったんだ」
「ええー!?」
あいつ、俺に何の相談もなかったぞ。
俺のいないところで、とんでもない話が進んでいるじゃないか。
「それでケインはなんて言ってたんですか?」
「げえむを初めて作った人物として、通貨になる。これは面白いじゃないかと言ってたよ」
ゲーム作っただけで金貨の顔になるって……。
ねえ、この世界。大丈夫?
「ということで、後はサカキヒカル・グレンヴィルさんの許可さえあれば通貨を発行できるんだ。だから頼む。人助けだと思って」
「う、うーん……。じゃあわかりましたよ。それでいいですよ」
「ありがとう!!助かったよ」
こうして俺の顔のデザインが入った金貨が流通する事になった。
まさか俺が金貨の顔になるとは……。
パーティーゲーマーの俺は、異世界で伝説の遊び人として生きていきます 富本アキユ(元Akiyu) @book_Akiyu
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