第25話 聖剣は喋る

ヒカルが念願のたこを手に入れる前、マリオへの差し入れにたこ焼きを持って行ったヒカルだったが、なぜか流れで本物の聖剣ライオスを貰う事になってしまった。

そして自分の屋敷に帰ってきたヒカル。


「……さっき剣が喋ったよな。いや、誰も声なんて聞こえてなかったし、気のせいだよな……?」


(気のせいではないぞ、ワシは喋るぞ)


「うわっ……!!しゃ、喋った。おいおい、本当に妖刀とかじゃないだろうな……?」


(失礼な奴じゃな。誰が妖刀じゃ。ワシは本物の聖剣ライオスじゃ)


「ええ……。なんかヤバそうなもの貰っちゃったな……」


(ここ数百年、誰にもワシの声が聞こえなくて相手にしてもらえなかったから嬉しいのお。お前の名前は、ヒカル…‥‥だったかの?)


「数百年!?そうか。古い剣だもんね。お爺ちゃんだ……。それで、どうして聖剣ライオスが喋れるの?」


(良い物には魂が宿る。そんな言葉を聞いた事がないか?あれは本当なんだよ。この剣が完成した時、魂が宿った。それがワシじゃ。ライオスは、明るくて馬鹿ばかりする奴だった。職人だった。職人としての腕前も物凄い奴じゃった。そして人の為に色んな物を作っていた。いつしかライオスの作った物には、時々魂が宿るようになった。その中でも最高傑作なのがワシじゃ)


「な、なるほど。やっぱ本物は違うね」


(そういえばさっきの金髪の若いの。グレンヴィル家のケインだったか?)


「ああ、そうだよ」


(ビンゴ大会でワシは、景品にされたり、また人から人へと転々としたが、こうしてワシと言葉が通じる者に再び巡り合えてよかった。あの若いのに感謝せねばな。それにしてもアーノルド達の若い頃にそっくりじゃのお)


「お爺ちゃんは、ずっとグレンヴィル家にいたんだよね?」


(ああ、そうじゃ。お前さんに面白い昔話をひとつ、披露してやろう。お前さん、聖剣ライオスのドラゴンの伝説は知っておるな?)


「知ってるよ」


(実はな……)


聖剣ライオスは、語り出した。

聖剣ライオスのドラゴン討伐伝説は、ライオスが大きなトカゲの尻尾を切っただけの事。その話が大きく盛られて現代では、伝説となった事。


(と、まあここまでが聖剣ライオスの真実じゃ)


「そ、そんな……。なんかがっかりだな……」


(しかしな、この話には、大きなどんでん返しがあるんじゃ)


ライオスのペットとなった大きなトカゲは、ライオスと共に長い年月を過ごした。ライオスの手によって大切に飼われていた。そしてライオスが歳を取って孫が出来て、お爺ちゃんと呼ばれるようになったある日の事。大きなトカゲは、ライオスに初めて話しかけた。そして自分が本物のドラゴンである事を告白した。


「なんだよ。お前、やっぱドラゴンなんじゃねぇか。しかも喋れるなら喋れよ。お前、寂しい事するなよ。尻尾何回も斬られて、なんで黙るんだよ。いやいや、お前何回斬るんだよ!って、その姿になってツッコミ入れてこいよ。その方が面白いだろ。笑いのセンスがねえ奴だな」

「…………なっ。笑いのセンスがないだと……?」

「お前、もっと笑いのセンス磨けよ。色んな人間をよく見て面白い事探して来い!やり直し!」


こうしてドラゴンは、ライオスの死後、人間観察をして面白い事を探す事にした。


(あれにはワシも驚かされたもんじゃ。まさかワシは、ドラゴンを本当に斬っていた事を知ったんじゃからの)


「って事は、ドラゴンは、やっぱりいるって事!?」

(そうじゃ)


「ヒカル様。遊びに来ましたわ」


ガチャッと音がしてドアが開く。


「ええええー!?お爺ちゃん、それほんと!?…………あっ」


聖剣に向かって喋りかけているところをベル、アリス、アルトに見られてしまった。


「ヒカル。剣と喋ってる!」

「師匠、そんなにその剣の事が好きなんですか。まさか話しかけるなんて……」


「ち、違う!!聖剣ライオスは喋るんだ。ほらっ!!」

(無駄じゃ。ワシの声は、どうやらお前さんにしか聞こえてないようじゃ)


三人にドン引きされてしまう。


「ヒカル様。一人暮らしが寂しいからといって、まさか剣に話しかけるだなんて……」

「ううっ……。ち、違うんだよ……。でも信じてもらえないだろうし……」


こうして一人暮らしのヒカルに、新しいルームメイト、聖剣ライオスのお爺ちゃんができた。





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