第26話 ベルナデッタ家出する 1

ベルナデッタは、自分の部屋に籠っていた。そして落ち込んでいた。なぜならヒカルの事が好きで好きでたまらないのに、この気持ちを上手く伝えられないからだ。樽にハマって抜けなくなってしまったあの日、とても恥をかいてしまった。情けない失態だった。色々な人に迷惑をかけた。ヒカルに幻滅されてしまったかも。ベルナデッタ危機一髪を手持無沙汰にいじる。自分そっくりの人形を飛ばしては、また樽の中にセットにして飛ばしての繰り返しをしながらそんな事を考えていた。


「はぁ、ヒカル様の前だと緊張して何もかも失敗してばかり。私はどうしてしまったの……。自分が情けないですわ。生まれてから使用人達の世話になってばかり。私、もっとしっかりして自立しなければいけませんわ。ヒカル様は平民で、私は貴族。私が平民であったならば、もっとヒカル様と対等で近しい関係になれたかもしれませんわ。……私は、自分が貴族である事が重荷で仕方がないですわ。どうして私は生まれながらの貴族なの……。……そうですわ!!私、貴族を辞めればいいんですわ!!自分の力で生きていければ、私はヒカル様に認めてもらえる。きっとそうですわ」


ベルナデッタは、自分そっくりの人形が樽から飛び出す様子を見てひらめいた。家を出ればいい。貴族である事をやめて自分の力で生きていく。自立しよう。そうすれば自分に自信がつくし、ヒカルにも認めてもらえるかもしれない。そう考えたベルナデッタは、アーノルドの元へと向かった。


「お爺様、ベルナデッタです」

「入りなさい」


相変わらず使用人達の前では、厳格な振りをするアーノルドだったが、使用人達を外に追い出すとお茶目な一面を現した。


「おお、ベル。よく来た。よく来たなぁ」


アーノルドはそう言うと、ベルナデッタの頭にぽんぽんと触れた。


「お爺様。私、お話があって来ましたの」

「おお、どうしたんじゃ?」

「私、貴族を辞めたいのです」

「えっ!?と、突然どうしたんじゃ!?」

「私、自立したいと考えていますの。もっとしっかりして自分の力で生きていきたいと考えています」

「ええ!?でも貴族を辞めなくても良いのではないか?」

「いいえ、私は貴族である事に甘えていました。私は恵まれすぎていますわ。ヒカル様は、平民ながら自分自身の力で立派に生きていますわ」

「えっ?ヒカル!?ああ、あのケインの友達で平民の……。面白い奴がおるという話は聞いたことあるが……」

「私、家出します!お爺様、私の事は探さないでください!失礼します!」

「お、おい。ベル!!ベル、ちょ、ちょっと待ちなさい!!」


アーノルドの制止を振り切り、ベルナデッタは部屋を出ていった。


「た、た、大変な事になってしまった。おい!!誰か!!」


アーノルドの必死な声に使用人が急いでやってきた。


「アーノルド様!どうされたのですか!」

「急いでケインを呼んできなさい」

「かしこまりました」


知らせを聞いたケインが、アーノルドの元にやってきた。


「お爺様。どうされたのですか?」

「ベルは!?ベルは!?」

「いえ、今日は姿を見ていませんね」

「ベルが貴族を辞めて自立するといって、出て行ったのじゃ。急いで探しなさい」

「何ですって!?一体何があったのですか」

「お前の友人のヒカルは自立して立派にやっているのに、それに比べて自分は貴族に甘えていると言っていた」

「全く!!あの馬鹿は!!一体何を考えている!!」


ケインは急いで使用人達を集め、ベルナデッタを探させた。しかし、なかなかベルナデッタの行方はつかめなかった。ケインは、マリオ達にも声をかけた。そしてヒカルにも。


「ええ!?ベルが家出した!?なんで!?どうして!?」

「とにかく探すのを手伝ってくれ、頼む」

「わかった」


マリー達も捜索に加わり、皆がベルナデッタを探した。

天気が怪しい。空は急に雲が多くなってきたかと思うと、すぐに雨が降り始めた。その雨は、激しさを増した。大雨の中、捜索は続いた。

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