第27話 ベルナデッタ家出する 2
大雨の中、皆で探し回ったが、ベルナデッタは見つからなかった。
そしてマリーが、森の中にある大きな木の下でずぶ濡れになっているベルナデッタを見つけた。
「ベルちゃん。ここにいたのね」
「マリー様……。ぐすっ……。ううっ……ううっ……」
「皆心配してるよ。帰ろう?」
「ぐすっ……」
「どうしたの?お姉さんに話してごらん」
「私、ヒカル様の事が好きなんです……。好きで好きで……。でも上手く伝えられなくて……。自分に自信がなくて……」
「うん」
「自立して自分に自信がつけば、ヒカル様にちゃんと思いを伝えられるような気がするんです」
「そっかそっか!それで自立しようとして家出したんだね」
「はい」
マリーは、ぽんぽんとベルの頭を触る。
「ねえ、ベルちゃん。これ面白いね」
そう言ってマリーは、自分の手に持っていたベルナデッタ危機一髪を見せた。
「なんかね。ベルちゃんが屋敷から飛び出して行っちゃったって聞いて、なぜかこれを持ってベルちゃんを探しに来ちゃった」
「私にとっては情けない思い出です……」
「ベルナデッタ危機一髪はね、飛び出したら勝ちなんだよー?知ってたー?ヒカルさんの事、好きなんでしょ?貴族の地位を捨てても」
「はい……」
「じゃあねー、お姉さんに任せなさい。ふふふ、良い事思いついちゃった。ベルちゃんは、私の言うとおりにして――」
雨は上がった。通り雨だったようだ。
ヒカルは一度、家へと戻っていた。傘を取りに帰る為だった。しかし雨も上がった為、再び探そうと家を出た。すると、敷地内にベルがいた。
「ベル!!どこ行ってたの!!皆探してるよ!」
「ヒカル様……」
「おーい。ヒカルさん。ベルちゃん見つけたよー!」
「マリーさん!」
「雨も上がったねぇ。よかったぁ。ベルちゃん。これ預かっててー」
マリーは、何やら紙の束をベルに持たせた。
「ねぇねぇ。ヒカルさん。ベルちゃんがヒカルさんに大事な話があるんだって。聞いてあげてくれない?」
「大事な話?」
「あっ……あのっ……。わ、私……。ヒ、ヒカル様の事が……」
「ん?」
「好きなんです。大好きなんです」
「えっ」
「ずっとずっと好きだったんです。いつもいつもヒカル様の事を考えると、胸がいっぱいになって……。どうしようもなく好きなんです」
「ベル……。……ありがとう。でも俺は……ただの平民で……ベルは……貴族で……俺なんかと付き合ったら……ベルに迷惑かけるから……」
「私、グレンヴィル家の貴族としての地位を捨てようと思っています」
「……えっ!?」
「それでも……だめですか?」
「…………俺は……」
「ねぇねぇ。ヒカルさん。ベルちゃんが持ってるこれ、ケインが書いた福笑いのグリモアの原本なんだよー。ヒカルさんなら意味わかるよね?」
ケインの12年間のマリーさんへの想いが綴られた原本。それを今、ベルが手に持っている。貴族としての地位を捨てる覚悟を持って、家出したベル。ベルは、ケインの兄妹だ。ベルも相当な一途なのかもしれない。地位を捨てるって!?
そこまでして俺の為に……?
そっか……。そうだったんだ……。そこまでして……俺の事を……。
俺の気持ちは……?
俺は、ベルの事が……。
「ヒカル様。ジェンガの約束、覚えてますか?勝った方の命令を何でも聞くことができるんです。私はまだ保留にしています。私とけっ・・・」
「ベル」
俺は、その場でベルの口にキスしていた。
「それは、まだ保留でいいよ。ベル。俺と結婚してください。必ず幸せにします。一緒に住もうか。俺と一緒に平民として一緒に生きていこう。俺も、もう覚悟ができたから。どんな事があってもベルを守るって。ベルもこれからは、坂城ベルナデッタだね」
「いいえ、もう命令は何するか決めました。グランヴィル家の貴族になって下さい。きっと楽しいですわ。お爺様には貴族としての地位を捨てると言ってしまいましたが、マリーさんがお爺様にやっぱり貴族でいたいって伝えて下さって、お爺様も許して下さったの」
「へっ…!?」
「ベルナデッタ危機一髪のルールでは、飛び出したら勝ちってマリー様が教えてくれましたの。つまり家出した私の勝ちですわ」
「ははは……。なるほど」
遠くから皆がやってきた。
「ヒカル、おめでとうー!!」
「結婚おめでとうー!!」
「おめでとう、ヒカルさん」
「師匠、おめでとうございます!」
マリオ、レイン、アルト、アリス、マリー、ケイン全員が揃っていた。
そして皆がベルナデッタ危機一髪のベルナデッタ人形をお祝いに飛ばした。
こうして俺は、ベルと結婚した。
「でも名前はどうなるんだ。俺は、ヒカル・グレンヴィルなのか?」
「そんなものは簡単だ。お前は坂城光。ならば、それを名前にしてしまえばいい。サカキヒカル・グレンヴィル。今日からお前の名前は、サカキヒカル・グレンヴィルだ」
ケインが言った。
こうして俺の名前は、サカキヒカル・グレンヴィルとなった。
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