第29話 俺の結婚式

アーノルドさんのところに結婚の報告の挨拶に行く事になった。

とても威厳がある怖い人だと回りから聞かされていたので、ビビッていたが、ベルは全然怖くないというので、それを信じることにした。

俺は緊張しながらアーノルドさんがいる部屋をノックした。


「……入りなさい」


低い声が聞こえてきた。なんか怖そうだ。

そして部屋に入ると、白髭を立派に蓄えた威厳のある老人の姿がそこにはあった。

やっぱり怖そうだ……。


「この度、ベルナデッタさんと結婚する事になったサカキヒカルです」

「話は聞いておるよ。……色々とな。立地の悪い食堂を立て直したり、平民に娯楽施設を提供したり、後はたこ焼きを作ったとかもな。たこ焼きは美味かった。実に面白い男じゃないか」

「そ、そうですか……」

「ヒカルよ。ベルを幸せにできると誓うか?」

「はい!必ず!」

「よろしい。ならば結婚式じゃのお。ホホホホホ」

「はい!」


それから俺達は、まもなく結婚式を挙げる事になった。

地球に隕石が落ちてきて死んで、異世界で転生してどれくらいの時間が経っただろう。まさか俺が結婚するだなんて思ってもみなかった。しかもこんなにも可愛い子と。俺の隣には、ベルがいる。今は俺達の結婚式の最中だ。

会場はケインとマリーさんの結婚式を行ったところと同じ場所。来るのは2回目だけど、やはり豪華な会場だ。出席者もほぼ貴族ばかり。例外として親族という形で、マリオさん一家とアリスが出席している。それ以外は、見たことない貴族の人で溢れかえっていた。そして改めてグレンヴィル家の貴族としての偉大さを知った。俺は平民から貴族の中の貴族であるグレンヴィル家の人間になった。そんな俺に対する嫉妬の声が他の貴族から聞こえてきたが、そんな小さな事をいちいち気にする必要なんてない。俺は誰に何と言われようともベルを幸せにしてみせる。


料理にはたこ焼きが出てきた。もちろんたこ焼きの中には、ムーを入れた。ついにたこ焼きの中にたこが入った。まさか俺の結婚式で、完成版のたこ焼きを披露する事になるとは。

所々から、たこが入った完成版のたこ焼きに感動する声が聞こえてきた。


「これは中に何が入っているの!?」

「美味しい!!」

「これは赤い……。何でしょうね。今まで色々な物を食べてきたが、こんなもの食べた事がない」


チーズたこ焼き、揚げたこ焼きも振舞われた。


「たこ焼きには色々な種類があるのですね」

「素晴らしい料理だ」


貴族達の間でもたこ焼きは、大評判だった。

だが今日は、もうひとつとっておきの料理がある。


さかのぼること数日前。


「レインさん。俺とベルの結婚式での料理についてなんですが、新しい料理を是非食べてもらいたくて考えてるんですけど、手伝ってもらえませんか?」

「新しい料理?どんなのかしら。またヒカルさんの事だから驚かせてくれそうね」

「たこ焼きプレートとは違う鉄板が必要です。それから――」


そして現在、結婚式。

アリスが鉄板を運んで会場に持ってきた。


「皆さん。お待たせしました。新郎の師匠……じゃなくて。ヒカルさんが考えた料理、お好み焼きです」


「おおお!!」

「凄い良い匂い!!」

「なんだこれは!?」

「またみた事がない料理だ!!」


会場がざわざわし始めた。

アリスは、鉄板に乗ったお好み焼きを裏返して次々に作っていく。

焼きあがったお好み焼きに、ソースとかつおぶし、青のり、マヨネーズをトッピングしていく。


「さあどうぞどうぞ!皆さん、どんどん食べて下さい!」


「美味い!!」

「やわらかくてふわふわ!!」

「中に野菜が入っているのね!!」

「このソースも実に美味だ」

「この薄っぺらいひらひらしているのはなんだ!?魚の味がするぞ!!」


「ヒカル様。大成功ですわね」

俺の隣でベルがウインクする。


「お好み焼き、大好評みたいだな。よかった」


豪華に執り行われた結婚式は、無事に終わりを迎えた。

これから俺は、ベルと一緒に暮らしていく事になる。

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