旅三十四日目 神剣、布都御魂剣《ふつのみたまのつるぎ》登場

 最初は順調だったカムヤマト様の旅路も、大阪でナガスネビコさんに襲われ兄の五瀬様が命を落としてしまいます。

 

 悲しみを抑え、和歌山県から陸路で奈良県へと向かっていましたが、邪神の化身である熊の霊気にやられ、カムヤマト様とその軍勢は意識を失っていきました。


 突如、全滅のピンチに陥っています。


 誰かがカムヤマト様を起こさないと、このまま邪神に殺されてしまいます。おや、熊野村の方角から男が走って来ました。

 しかも、一本の剣を持っています。


 あれは、ただの剣ではありません。草薙の剣に匹敵するような強力な力を、ここから見ているだけでも感じます。

 カムヤマト様達の意識を奪っていた邪悪な霊気が、男が持ってきた剣の力によって断ち斬られました。


「俺は、眠っていたのか……」

「貴方様はアマテラス様の子孫である、カムヤマトイワレビコ様ですか?」

「ああ、そうだ。それより、君は何者だ?」

「僕は高倉下タカクラジといいます。高倉健じゃありませんよw」

「……その剣なんだんだ?」

「 (´・ω・`)ショボーン 」


 カムヤマト様にギャグを華麗にスルーされたので、高倉下さんは落ち込んでますね。ドンマイですよ。


 全滅のピンチに高倉下が持ってきた剣は何なのでしょうか?


 高倉下さん曰く、アマテラス様と高御産巣日神様タカミムスヒノカミサマが、軍神である建御雷之男神様タケミカズチノオノカミサマを呼び出している夢を見たとこの事です。

 


 タケミカヅチ様といえば、オオクニヌシ様の国譲りを成功させた神様ですね。 

 

「地上が騒がしいからみてみたら、私の子孫が国を統治するのに苦戦しているわ。タケミカズチは地上を平定したんだし強いんでしょう。ちょっとカムヤマト達に加勢してきてよ」

 そうアマテラス様はいいました。


「わざわざ私が行く必要はありません。ここにオオクニヌシに言うことを聞かせた剣があります。それを熊野の高倉下という男の所に降ろして、カムヤマトの所に届けさせましょう」

 そして高倉下さんが朝目を覚ますと、彼の手元には本当にタケミカズチ様の剣があったのです。


 高倉下さんはカムヤマト様に剣を渡しました。

「これは、見事な剣だ!」


 タケミカヅチ様の剣である、布都御魂剣ふつのみたまのつるぎを手に入れたカムヤマト様の攻撃力は+9999となりカンストしました。 

 

 攻撃力は勿論、タケミカヅチ様の霊験が宿っているので心強いですね。 

 

「あと、アマテラス様がこれより奥地は邪神がはびこっていて、危険だからカムヤマト様にはナビを送り届けるそうです」

「ナビ?」

 

 太陽の方から何かが飛んできます。


 どうやらカラスのようですね。勿論、アマテラス様のお使いなので、ただのカラスじゃありません。


 三本の足を持つ、ヤタガラスという神鳥です


 高倉下さんに別れを告げたカムヤマト様達は、ヤタガラスの導きによって、邪神や悪霊とエンカウントする事なく進んでいく事が出来ました。


 こうしてカムヤマト様一行が吉野川に着くと、魚をとっている男神がいました。

「君は何者なんだい?」

 カムヤマト様が尋ねると、男神は「贄持之子ニエモツノコっす」と素直に答えました。どうやら邪神ではないようですね。


 カムヤマト様がさらに進むと、井戸の側にいる尻尾を生やした獣っ子(男神)と出会いました。

「君は何者なんだい?」

「わっちは井氷鹿イヒカ。きこりをしているよ!」

 この神様も邪神ではないようです。

 

 山道を進んでいると、また尻尾を生やした者が現れたましたね。


 もしかしたら神話時代の奈良県周辺はジャパリパークだったのでしょうか?


 しかし今度現れた獣っ子は、かなりゴツいです。あまりにも身体が大きくて、鍛え上げた筋肉をアピールするかのように、周辺の岩を押しのけながらやって来ました。


「敵か!?」

 カムヤマト様にも緊張が走り、剣に手をかけます。


「驚かせてすいません。僕の名前は石押分之子イハオシワクノコといいます。アマテラス様の子孫がこの土地に来ると聞いたのでお出迎えにきました」

「そうだったのか、わざわざありがとう」

 

 ヤタガラスの導きのおかげで、危険なルートは回避しているようですね。


「カムヤマト様、ここから先は宇蛇の地には兄宇迦斯エウシカ弟宇迦斯オトウシカという兄弟が支配している、危険な場所です。十分に注意してください」


 今までヤタガラスの導きによって安全なルートを通って来たカムヤマト様でしたが、どうやら戦いは避けられそうにありませんね。



 目的地である大和の地まであと少しです。 



 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る