旅二十五日目 天孫降臨

「やったわ! やっと地上を天つ神が統治することができるわ!」

 タケミカヅチ様によって、国譲りが果たされて、アマテラス様も念願が叶い、とても喜んでいますね。


「本当に長かったわ……さあ、感傷に浸っている場合じゃないわ! アメノミホホ、早速地上にいって統治してくるのです」

「いや、お母さん、僕ですね……」

 アマテラス様は、長男のアメノミホホ様に地上を任せようとしますが、本人はなにやら乗り気じゃない様子ですね。

 何かあったのでしょうか?

 

「実は、僕の子供が生まれまして」

「え!? いつの間に、なんでその事を早く言わなかったの!?」

「いや、お母さん。地上の奪還作戦で忙しそうにしていたから、言い出しにくくて…」

 

 いきなり息子のカミングアウトを聞いて、アマテラス様は驚きますね。

 地上をオオクニヌシ様から奪取するのに手間取っていたら、アマテラス様はお祖母ちゃんになっていたのです。


「名前は邇々芸命(ニニギノミコト)と言います。僕じゃなくてニニギを地上へ行かせましょう」

「それもそうね。ニニギに任せましょう」

 アマテラス様はやっぱり長男に甘いようですね。


 こうして、アマテラス様は孫のニニギに地上統治を任せましたのです。




「ニニギちゃん、大丈夫かしら? 地上に降りた事ないし……」

 おや、やっぱり孫のニニギ様も、アマテラス様にとって目に入れても痛くない、可愛い孫のようです。


「そうだ! 有力な神々をニニギちゃんに同行させましょう! まず、オモイカネ。貴方の知恵でニニギちゃんを導くのです」

「わかりました。アマテラス様」

 岩戸開きを成功に導き、高天原の参謀とも言える知恵の神であるオモイカネ様をニニギ様と共に地上に送るとは……アマテラス様の本気が伺えますね。


「あと、なにかと地上は物騒だから強い神も欲しいわね。手力男神タジカラノオノカミ。貴方もついていきなさい」

「うっす!」

 タジカラ様と言えば、アマテラス様が岩戸開きの際、岩戸を閉じていた巨大な岩を、ぶん投げた体育会系の神様です。


 さらに天宇受売命様アメノウズメビノミコトサマや、玉祖命様タマオヤノミコトサマなど、岩戸開きの時に活躍した神々を、ニニギの腹心として同行させたのでした。



「ニニギちゃん、これからお祖母ちゃんと離れちゃうけど、この鏡を私だと思って、毎日祈りを捧げなさい」

「わかりました。お祖母ちゃん!」

(なんて、素直で可愛い子なの!)

 アマテラス様は孫にメロメロですね。

 

 さて、このアマテラス様が渡した鏡というのが、有名な三種の神器の一つである八咫鏡やたのかがみです。

 さらに、八尺瓊勾玉やさかにのまがたまと、スサノオ様がアマテラス様に献上した

天叢雲剣あめのむらくものつるぎ(後の草薙の剣)を持たせたのです。



 さあ、いよいよニニギ様が地上へと旅立つ時が来ました。

「ニニギ、頑張ってこいよ!」

 お父さんのアメノミホホ様も応援してます。


「貴方様のご無事は、天より見守っています!」

 タケミカヅチ様も来てくれたようですね 


 大勢の神々がニニギ様を見送りに来てくれたようです。


 ニニギ様が地上と高天原を繋ぐ道に入る前に、アマテラス様が地上を見渡しています。

 孫の為に、安全を確認しているようです。


「道の途中に何かいるわ!」


 アマテラス様が何か見つけたようです。私達も見てみましょう。

 

 おや、光輝く神様が立ちはだかっていますね。何者でしょうか?


「なに、あのド派手で自己主張が激しい神は? ちょっとウズメビ、何者なのか聞いてきなさい」 

「私ですか?」

「ウズメビ、貴女は女だけれど、皆の前で脱いでも恥じない勇気がある。だから貴女が行ってきなさい」

「わかりました」

 

 なんだかすごい理屈ですけど、ウズメビ様は堂々と、道の途中で立っている神様に近づいて行きました。


「貴方は何者ですか? 何故、そこにいるのですか?」

 ウズメビ様が、そう尋ねます。


「私は猿田彦サルタビコといいます。アマテラス様のお孫様が、天より降りてくると聞いて、道案内に参りました」

 どうやら、悪い神様ではなさそうですね。それにしても、天狗のように長い鼻をしています。

 それもその筈、このサルタビコ様が天狗のモデルだという説もあります。


 さて、サルタビコ様の疑いが晴れると、アマテラス様は彼にニニギ様の先導を任せました。


 こうして、ニニギ様達の一行は、九州にある高千穂の頂上に降り立ちました。

 これが有名な天孫降臨です。


 さあ、オオクニヌシ様の後は、天皇家の祖先となる神々と日本を巡る旅になります。


 一体、どんな出会いや物語があるのか楽しみですね!


 さあ、ニニギ様に続いて、私も地上に向かいましょう!




 

 高千穂の頂上から、周囲を見渡したニニギ様は「ここは実に眺めが良い。朝鮮半島も見えるし、朝日も夕日もよく射すから日照条件も良い。ここに宮殿を建てよう」と言いました。

 こうして高千穂の頂上に、日向ひゅうがノ宮を建てたのです。



 さて、暫く進展が無さそうなので、私のスタンド能力を使って時間を加速させましょう!


 数年後……。


「ニニギ様、私の役目は終わりました。そろそろ故郷に帰らせてもらいます」

「サルタビコ。君には世話になった。好きにするといい」

「ニニギ様、ありがとうございます」

「あ、そうそう、お見送りはウズメビにさせよう」

「え、私ですか!?」

 

 いきなり、名前を呼ばれてウズメビ様は、少し驚いていますね。


「ウズメビ。そのままサルタビコの故郷に行ってもいいんだよ」

「でも、私はニニギ様に従える身です」

「そんな事はいいから。僕は君たちが仲よくしているのは知っているんだよ (ニヤニヤ 」

「ニニギ様……ありがとうございます」

 ウズメビ様はすごく嬉そうですね。


 サルタビコ様とウズメビ様は、相思相愛だったようですね。


 さて、こうしてサルタビコ様の妻になったウズメビ様は、名前を猿女君サルメノキミと名前を改めました。


 また、日本ではじめて結婚によって名前が変わったのは、このウズメビ様だったという説もあります。

 尤も、神話のお話ですけどね。


 それでは、また明日の旅路でお会いしましょう ノシ


 


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