旅三十五日目 神武天皇の進軍

 マリオとルイージ……じゃなくて、エウシカさんとオトウシカさんが支配している宇蛇の地に踏み入る前に、カムヤマト様はヤタガラスを使いに出しました。


 さて、ヤタガラスに着いてきて、カムヤマト様よりも先にエウシカブラザーズの所にやって来ました。

 

 エウシカさん達はカムヤマト様の事を、どう思っているのでしょうか?


『我々はアマテラス様の子孫である。我々に従えるか否か? byカムヤマト』


 かなりストレートに従者になれ、という伝言ですね。


「従うわけねえだろ! コノヤロー!」

 エウシカさんは弓矢を持ってきて、ヤタガラスに向かって矢を放ちます。幸いヤタガラスに矢が当たる事はなかったのですが、カムヤマト様とエウシカさんの関係は、かなり険悪なものとなりました。


「兄さん。向こうはアマテラス様の子孫なんでしょう。従った方がいいよ」

「バカヤロー、アマテラス様の子孫だかなんだか知らないが、俺たちの土地で好き勝手させる訳にはいかないんだ」

 弟のオトウシカさんはと意見が対立していますね。エウシカさんはオトウシカさんの話なんて聞かず、兵士を集め始めました。



「もうすぐカムヤマトイワレビコの軍勢が、この土地を奪いにやってくる。そいつらを討つのだ!」

 エウシカさんは兵士に向かって言いました。


「相手はアマテラス様の子孫なんでしょう」

「攻撃力もカンストしているし」

「負けフラグしか感じない」

 おやおや、エウシカさんが集めた兵士達は、ゾロゾロと帰って行きました。


 これじゃあ、戦になりません。


「ぐぬぬぬぬ……」

 エウシカさんは諦められないようですね。

 

「ほら、兄さん。大人しく従った方がいいよ」

「うるさい! オトウシカ。俺は一人でもこの土地を守る! こうなったらカムヤマトを油断させて罠にはめるんだよ!」


 エウシカさんは大急ぎで御殿を造り始めました。その中の板の間を踏むと、その重みで板が飛び出してきて圧殺するという、ゲーム『影牢』に出てくるような仕掛けを作ったのです。


 これならエウシカさん一人でも、カムヤマト様に勝てそうですが……一体どうなるのでしょうか。


 おや、一生懸命エウシカさんが御殿を造っている最中に、オトウシカさんが何処かに走っていきます。追ってみましょう。



「私の兄が謀反を起こし、カムヤマト様を罠にはめようとしています」

「何!?」

 あらら、オトウシカさんはカムヤマト様に、罠の事をバラしてしまいましたね。これじゃあ、もう勝てる見込みはありません。


 

 カムヤマト様一行がエウシカさんの土地に入ると、立派な宮殿が建っていました。神のチート能力であっと言う間に建てたのでしょう。


「いやあ、先程は失礼しました。何分突然の事で戸惑ってしまって。しかし私、エウシカはカムヤマト様の従者になろうと思います。つきましては歓迎の宴を開かさせていただきます。さあ、こちらへ」

 エウシカさんは頭を下げて言うものの、カムヤマト様に罠の事はバレているので、御殿の中には入りません。


 すると、カムヤマト様の部下である道臣命様ミチノオミノミコトサマ大久米命様オオクメノミコトサマが、エウシカさんに近づいて行きます。


「歓迎の宴だと?」

 ミチノオミさんがエウシカさんに言いました。

「はい、それはそれは盛大な宴で、お酒や料理だけじゃなく、女の子もいますよ」

「ほう、それならば、どのように歓迎するのかやってみろ」


(え、ええ……)

 あらら、エウシカさんは頑張って笑顔を作っていますが、顔が青くなっていきます。

「さあ」

「エウシカ、早くしろよ」


 ミチノオミノ様とオオクメ様は剣をエウシカさんに向けました。

 

 エウシカさんは自分が造った御殿の中に追い詰められていきます。そして……。


「イ゙ェアアアア」

 エウシカさんは自分が作った罠にはまって昇天してしまいました。


 こうして、エウシカさんを倒した、というか自滅させたカムヤマト様達は、オトウシカさんから歓迎会を開いてもらい、大いに盛り上がりました。

 カムヤマト様の従者となったオトウシカさんの子孫は、飲料水を管理する水取の一族として末永く繁栄したのです。

 


 


 










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る