旅三十六日目 神武天皇のお料理対決!?

 エウシカさんを自滅に追い込んだカムヤマト様達は更に進んでいくと、渓谷に辿りつきました。

 水が流れ、木々が生い茂る美しい風景がカムヤマト様を歓迎していると思いきや、なんだか殺気が漂っていますね。


 山の斜面に沢山の穴があり、そこから唸り声が聞こえてきます。何か潜んでいるようですね。


 穴の中に潜んでいたのは土雲八十健ツチグモヤソタケルと言う、この土地に住む土着の民ですね。

 因みに八十というのは、数が八十人いるとい意味ではなく、沢山いるという意味です。


 ツチグモさん達は唸り声を上げ威嚇しています。どうやら、進軍してきたカムヤマト様達を快く思っていないようです。


 さて、戦闘集団である久米部達が強くても、ツチグモさん達の方が圧倒的に数が多く、カムヤマト様の方が不利ですね。


「一体どうすればいいのか……」


 流石のカムヤマト様も思案していますね。


「この辺りにいる料理人を集めてくれ」

 カムヤマト様はなにか思いついたようです。


 もしかして最高に美味しい料理を食べさせて、そのリアクションでツチグモさんの服を破こうという魂胆でしょうか? 

 しかし、カムヤマト様は、そんなラッキースケベに期待する素振りは見せず、集まってきた料理人達に剣を配っています。


「いいか。料理を作ってツチグモ達をもてなしてくれ。そして、向こうが油断したら、俺が合図する。そうしたらツチグモ達を斬るんだ」

 兵士ではなく一介の料理人に無茶な事を言うカムヤマト様ですが、集まったのは神話時代の料理人達です。

 

 まるで『美食屋トリコ』に出てきそうな料理人達です。

 料理だけでなく戦闘能力にも長けているので、剣も持ちカムヤマト様に加勢します。


 こうして料理人達は食事を作りはじめました。辺りに良い匂いが漂いはじめましたね。

「何だ? 美味そうな匂いだな!」

「祭りでも、始まったのか?」


 料理に誘われて、ゾロゾロとツチグモさん達が出てきましたね。


「私はアマテラス様の子孫、カムヤマトイワレビコだ。訳あってこの土地に来たのだが、先住民方々に今日は料理を振る舞いたいと思う。存分に食べてくれ!」


「ヤッター、食べよう! 食べよう!」

「カムヤマト、いい奴だ! 気に入った!」


 ツチグモさん達は料理人が作ったご馳走を、美味しそうに食べ始めます。


 こうして、ツチグモさん達はカムヤマト様の作戦に引っ掛か、大宴会となりました。そしてこの宴も佳境に入った頃、カムヤマト様が立ち上がりました。


「この土地の穴には多くの者が潜んでいる。そして、どんなにたくさん住んでいても、武勇に優れた久米部の者が、斬れ味の鋭い太刀で殺してやる」


 おや、カムヤマト様はポエムを読み始めました。ツチグモさん達はお腹が満たされ、気持ちも緩んでいるので宴会の余興としか思っていないようです。


「皆の者、斬れ!」

 

 カムヤマト様の一言で料理人達が忍ばせていた剣を抜き、ツチグモさん達に一斉に斬り掛かりました。

 気が緩んでいたツチグモさん達は、突然の事に対応出来ず、次々と斬られて行きます。


 まさかツチグモさん達も、今日の料理が最後の晩餐になるとは思ってもいなかってでしょうね。




 さて、こうして華々しい戦果を上げ続けるカムヤマト様ですが、遠くから進軍を見ていた者います。


「クックック! ついに来たなカムヤマト。お前が目指したこの大和の地がお前の墓場となるのだ」


 不敵に笑う男の正体は、カムヤマト様の兄である五瀬様の命を奪ったナガスネビコさんです。

 

 ついに次回、宿敵であるナガスネビコさんとカムヤマト様が激突します。


 それでは、また次の旅路でお会いしましょう ノシ






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