旅三十三日目 神武天皇全滅の危機

 前回まで順調に瀬戸内海を進んでいたカムヤマト一行でしたが、大阪湾に入った所で突然の攻撃を受けてしまいました。



 襲ってきた敵は那賀須泥毘古ナガスネビコという奈良県辺りを支配していた豪族と、その軍勢です。


 ナガスネビコさんは、大阪から陸路を通って奈良県へ向かおうとしていたカムヤマト様達を待ち構えていたのです。 

 

 ナガスネビコさんは名前の通り、長いすねをしています。日本神話の足長おじさんっていうところでしょうか。


 ナガスネビコさんの軍勢が船に押し寄せてきますが、カムヤマト様も負けていません。


 剣と盾を持ち、カムヤマト様と兄の五瀬様は船を飛び出すと、ナガスネビコさんの軍勢に先陣をきって向かっていきました。


 カムヤマト様と五瀬様はなかなか奮闘していますが、ナガスネビコさんの軍勢もなかなかに強いです。

 

 激しい攻防を繰り広げています……寧ろカムヤマト様達の方が押されていますね。大丈夫でしょうか?


 あっ! なんということでしょうか!!!


 一本の矢が五瀬様に刺さってしまいました。


「兄さん!」

 カムヤマト様は深手を負った五瀬様に駆け寄ります。


「カムヤマト……俺達はアマテラス様の子孫なのに、太陽に向かって戦ってしまった。これじゃあいいはずがない。向きを変えて戦わなければ……」


 こうして、カムヤマト様達はナガスネビコさんの軍勢から敗走を余儀なくされてしまいました。


 当初は大阪を通って奈良県へと向かおうとしたカムヤマト様達でしたが、紀伊半島を南下するように船を進め、和歌山県を迂回する事にしたのです。

 

 何とか命をとりとめた五瀬様ですが、傷はかなり深く日に日に弱っていきます。


「兄さん、死なないでくれ。兄さんがいなくなったら、俺はどうしたらいいんだ……」

 カムヤマト様の看病も虚しく、五瀬様は船の上で命を引き取りました。 

 

 


 兄を失ったカムヤマト様ですが、悲しみに暮れる間もなく船を進めていきます。


 そして熊野村という和歌山南部の村から上陸しました。


 目的地である奈良県まで随分遠回りになってしまいましたね。最初は順調だった旅路も、ここに来て雲行きが怪しくなってきました。


 久米部くめべという戦闘集団を引き連れて陸路進んでいくカムヤマト様ですが、どこか表情が沈んでいます。

 やはり、実の兄であり最高のパートナーである五瀬様を失くしたのは、カムヤマト様の心に大きな負担を与えたようです。


 ここから、先は邪神や悪霊が蔓延っていますが、大丈夫でしょうか?


 そう思っていたら、突如巨大な熊が出現しました。

 勿論、ただの熊じゃありません。大きさだけじゃなく、強力な霊気を放っています。きっとこの地に巣食う、邪神の化身に違いありません。



 突然モンスターとのエンカウントにカムヤマト様は戦闘体勢を取ります。


 カムヤマト様、さっくと倒しちゃってください……て、あれれ? 熊はすぐに藪の中に姿を消して逃げていってしまいました。


 ドラクエで言うところの、はぐれメタル的なモンスターでしょうか 


「なんだ、今のは?」

 カムヤマト様も目を丸くして驚いています。


「まあいい、俺たちに怖気づいたのだろう、さあ、いく……おかしい、意識が……」

 なんと熊が姿を消してすぐ、カムヤマト様の意識が朦朧としてきたようです。


 それは、カムヤマト様だけでなく、後方にいる軍勢も同じで、次々と倒れていきます。


 ああ、なんという事でしょうか。熊はカムヤマト様達を直接手にかける訳ではなく、放つ霊気にやられてしまったようです。


 このままだと、全滅してしまいます! カムヤマト様起きてください!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る