旅十四日目 オオナムチ様とスセリビ様の愛の逃避行
おはようございます。皆様はよく眠れましたか?
おや、ムカデとハチの岩室で眠らされたオオナムチ様も起きてきましたね。表情もスッキリとして、よく熟睡できたようです。
「おはようございます。スサノオ様」
「お、おう……」
オオナムチ様がすぐに、泣き言を言うか命を落とすと思っていたスサノオ様は驚いています。
裏でスセリビ様が動いている事を知らないようですね。
「今日は外にでるぞ! お前も来い!」
スサノオ様はオオナムチ様を、宮殿から連れ出しましたね。スセリビ様も心配してついていきます。
私達も見に行きましょう。
さあ、草原へとやってきました。スサノオ様はここで何をするのでしょうか?
おや、一本の矢を取り出すと、それを草原の方へと投げました。
「おい、あの矢をとって来い!」
「はい」
スサノオ様の命令に、オオナムチ様は素直に従い草原へと入っていきます。
スサノオ様は一体、何を企んでいるのでしょうか?
オオナムチ様がが草原に入って時間が経ちました。何事もなく矢を回収して、戻ってこれたら嬉しいんですけど。
気持ちはスセリビ様と同じですね。彼女もオオナムチ様の無事を祈っています。
そんな思いを裏切るかのように、スサノオ様は草原に火をつけてしまいました。
火はあっと言う間に燃え広がり、草原を覆い尽くします。
「お父さん。なんて酷い事をするんですか!?」
「はははは! あいつが、お前に相応しい男なら戻ってくるさ」
「そんな……こんな、すごい火じゃ、生きて帰ってこれないわよ」
確かにこの火の勢いでの生存は絶望てきです。おや、スセリビ様は、早速オオナムチ様の葬式の準備を始めましたね。
しかし、まだ、どうなるかわかりません。ドローンを飛ばしてオオナムチ様の様子を見てみましょう。
やはり、火に囲まれて右往左往していますね。おや、一匹のネズミが巣穴に避難しましたね。
それを見たオオナムチ様は急いで巣穴の入り口をほり、その中へと入りました。どうやら、巣穴の入り口は狭いようですが、中は広い空洞になっていたようですね。
火はオオナムチ様がいた所まで迫って来ました。果たしてどうなるのでしょうか?
やがて、火は草原を焼きつくし、その勢いはだんだん弱くなっていきます。すると、オオナムチ様はネズミの巣穴から出てきました。
しかも、スサノオ様が投げた矢まで持っています。どうやら、矢はネズミが持っていたようですね。
「オオナムチ、無事だったのね! よかった!」
焼けた草原から戻ってきたオオナムチ様を見たスセリビ様は、用意した葬式道具を投げ出して、彼に抱きつき喜んでいます。
一方、スサノオ様は悔しがっていますね。
今度はオオナムチ様を宮殿の大広間に呼び出しました。
次が何をさせるのでしょうか?
「頭の
「はい」
オオナムチ様はスサノオ様の後ろに座り髪を掻き分けると、髪の毛の中に巣くっていたのは、シラミではなくムカデだったのです。
スサノオ様、とんでもないペットを飼っています。
オオナムチ様も驚きを隠せません。
ムカデを触ったら、刺されてしまいます。
オオナムチ様が困っていると、スセリビ様がやって来ました。
今度は何を渡すのでしょうか?
スセリビ様が渡した物は、木の実のようです。
オオナムチ様は木の実の殻を潰すと、ガリッという音がして、あたかもムカデを潰しているようです。
ばれそうですが、スサノオ様は気付いていません。
”こいつ、なかなか可愛いじゃないか。娘を任せてもいいかもしれない”
スサノオ様の気持ちは、少しづつ揺れ動いているようです。
しばらくすると、その場でイビキをたてて寝てしまいました。
「こんな事が続いたら、スサノオ様に殺されるかもしれない」
オオナムチ様は荷物をまとめはじめました。
どうやら、根の堅洲国から逃げる事を決意したようです。
オオナムチ様は寝ているスサノオ様の髪を束にして、大広間の柱に結んでいます。
これなら、気付かれても、すぐに動けません。
そしてオオナムチ様は、スセリビ様の所へ行きました。
「スセリビ。どうか、俺と逃げてくれないか」
オオナムチ様がスセリビを背負うような格好をします。
愛の逃避行ですね。果たしてスセリビ様は、オオナムチ様についていくのでしょうか?
「オオナムチとなら、何処へだって行くわ」
スセリビ様はオオナムチ様に身を預けました。
そしてオオナムチは宮殿から出る前に、スサノオの太刀、弓矢、琴を持ち出します
因みに太刀と弓矢は
そして琴は
オオナムチ様とスセリビ様が宮殿から、抜け出しました。
しかし、琴が木の枝に当たってしまいます。
うわ! もの凄い音がしました。
ただの琴ならともかく、神の琴ですので、その響きは大地と共鳴したのでしょう。
「しまった!」
「今ので、お父さんに気づかれたに違いないわ!」
スセリビ様を背負った、オオナムチ様は走りだします。
「今のは、なんだ!? オオナムチの奴だな!」
大広間の方からスサノオ様の声が聞こえてきます。
「なんだこれは!」
髪が柱に結ばれているにで、動けないようです。
私たちもオオナムチ様と共に、宮殿から出ましょう!
さて、黄泉比良坂まで逃げてきました。地上まであと少しです。
「オオナムチ、待てー!」
なんとか髪の毛をほどいたスサノオ様は急いで、オオナムチ様を追いかけます。
これはまずいです。捕まったら、八つ裂きにされてしまうかもしれません。
オオナムチ様、なんとか逃げてください……おや、スセリビ様を背負っているオオナムチ様に、スサノオ様は追い付けません。
距離は開いたままです。
どうやら年老いたスサノオ様と、若いオオナムチ様では体力に差があるのでしょう。
これなら、地上まで一気に逃げ切れそうです。
「待ってくれ。意地悪をして俺がわるかった。ただ、娘をとられる事が寂しかったんだ!」
オオナムチ様は、スサノオ様の声に気付き足を止めます。どうやら、走っている間に気が変わったようです。
「いいか、オオナムチ。俺の太刀と弓を使って、八十神を倒すんだ。そしてお前が葦原の中つ国(日本の事)を支配して、
スサノオ様とオオナムチ様は和解したようです。
こうして無事、オオナムチ様とスセリビ様は地上へと戻った訳ですが、八上姫様との関係はどうなるのでしょうか。
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