旅二十七日目 山幸彦様と海幸彦様

 ニニギ様とコノハノサクヤ様の子供達は、この日向ノ宮でスクスクと育ちました。


 そして長男日照命様ホデリノミコトサマは海の恵みを司る海幸彦様うみさちびこさまとなり、三男の火遠理命様ホオリノミコトサマは山の恵みを司る山幸彦様やまさちびこさまと、それぞれ名前を改めました。


 ちなみに次男の火須勢理命様ホスセリノミコトサマは、何処かに行っちゃって彼の事はわかりません。


 えっ!? 案内人なんだからちゃんとリサーチしろって!? だって、次男のホスセリ様に関しては、記述が残ってないんだもん。 




 海幸彦様は名前の通り釣り竿を持って海へ行き、魚を捕っていました。

 そして、弟の山幸彦様は弓や槍を持って山へ行き、動物を狩っていました。


 しかし、毎日同じ事の繰り返しで飽きていた山幸彦様は「猟具と釣り針を取り替えてみようじゃないか」と兄の海幸彦様に提案したのです


「山道とか疲れるから、嫌なんだけど」

 海幸彦様は弟の提案を拒みました。

「えー、いいじゃん!」

「嫌だ!」

「一日だけだから、お願い」

「仕方がないな……」


 山幸彦様に熱心に頼まれたので、海幸彦様は渋々、自分の釣り竿を渡しましたね。流石、お兄ちゃんです。



「これは大事な釣り針だから絶対になくすんじゃないぞ!」

「わかったよ兄さん」

「絶対だぞ! 絶対になくすんじゃないぞ! いいか、絶ッッッッッ対になくすんじゃないぞ!」

 海幸彦様はフラグをたてているようにしか見えません……この後、釣り針をなくす未来が見えるんですけど、大丈夫でしょうか?


 こうして山幸彦様は兄の竿と釣り針を持って海へ行き、海幸彦様は弟の猟具を持って山へ行きました。


 二神同時に後を追うのは大変なので、日向ノ宮で待っていましょう。


 

  

 おや、二神が帰ってきましたね。さて、結果はどうでしょうか……うーん、お互い手ぶらなので、獲物は捕れなかったようですね。 

 


「やっぱり自分の道具じゃないと獲物が捕れない」

「そ、そ、そうだね。兄さん」

 山幸彦様、目が泳いでいますね。大丈夫でしょうか?

「はい、これ、釣り竿、返すね。きょ、今日はありがとう」

「おい! 山幸彦。釣り針がないぞ!」

「ぎょ、ぎょ、ぎょ!」

 明らかに山幸彦様は動揺しています。


「釣り針だけにさかなクンの物真似か、それよりも釣り針はどうした!? まさか……お前」

「そ、そのまさかです……実は魚にとられてしまって……」

「なんだと! 釣り針を返せ!!!」

「す、す、すぐに用意しますー」


 海幸彦様に怒られた山幸彦様は、慌てて自分の十拳剣を加工して、釣り針を500個ほど作りました。


「数の問題じゃない! あの釣り針じゃないとダメなんだ! 海に行って探してこい!」

「わかりましたー!」

 山幸彦様は慌てて宮殿を飛び出して、海の方へと走っていきました。

 

 果たして魚に盗られてしまった釣り針は見つかるのでしょうか? 私達も山幸彦様についていきましょう! 




 山幸彦様は浜辺に出たのはいいものの、どうしていいかわからず、落ち込んでいますね……とわ言え、元々、道具を取り替えようと言い出した、山幸彦様が事の原因なんですけどね。


「どうしましたか? そんなに悲しんで」

 おや、海の中からおじさんが現れました。海坊主かと思いましたが、彼は塩椎神様シオツチノカミサマと言って、海流を司る神様です。


「実は……」


 山幸彦様はシオツチ様にこれまでの経緯を説明しました。


「ふむ、もしかしたら、海の神である綿津見神様(ワタツミノカミサマ)の宮殿に行けば、何かわかるかもしれません。案内しましょう」

「本当に!? ありがとう、シオツチさん!」

「ちょっと待ってください。今、貴方が乗る船を作ります」

 こうしてシオツチ様は、神のチート能力で素早く小舟を作りました。


 山幸彦様が小舟に乗ると、シオツチ様は海流を操り、それに乗ると海中へと沈んでしまいましたね。


 さて、こんな事もあろうかと、某不動産会社と某財団に頼んで、潜水艦を用意しておきました!

 さあ、私達はこれで山幸彦様を追いかけましょう!


 潜水艦での旅も中々楽しいですね♪ ところでコーヒーでも飲みませんか? 


 

 さて、山幸彦様とシオツチ様は、海中をどんどん進んでいきますね。


「ワタツミ様の宮殿まで、まだまだ、時間がかかります。睡眠をとるなり、ゆっくりくつろいで下さい」

「ありがとう、シオツチさん。お言葉にあま……(。-ω-)zzz スヤ-」

「寝付き早ッ!」


 さて、今まで地上や高天原、そして黄泉の国しか旅してきませでしたが、いよいよ海底への旅が始まりましたね!

 

 まるで、浦島太郎になった気分です。

  

 この後、どんな出会いが山幸彦様に待っているのか、楽しみです。


 それでは、次の旅路でお会いしましょう! ノシ

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