旅二十六日目 ニニギ様のコノハノサクヤ様
アマテラス様の孫であるニニギ様が高天原より降り立ち、ずいぶんと時間が経ちました。
さて、ニニギ様の子孫が後の天皇家一族となるわけですが、今回の旅はニニギ様の恋を見ていきたいと思います……と思ったら、ニニギ様は浜辺で見つけた可愛い女の子をナンパしていますね。
見に行ってみましょう。
「君、何しているの? 名前は?」
「えっ!?」
突然ニニギ様に声をかけられた少女は、少し驚いていますね。
「私は山の神である
容姿だけでなく名前まで美しい少女に、ニニギはもうメロメロです。
少し照れながらしゃべっているコノハノサクヤ様でしたが、ニニギ様はそっと彼女の手を掴みました。
コノハノサクヤ様も嫌がる様子はないので、まんざらではないのかもしれません。
一体、どんなロマンチックな言葉で、コノハノサクヤ様を口説き落とすのでしょうか、これは見ものです。
「貴女と合体したい!」
おーとニニギ様、ストレートに肉体関係を求めてきました。
年頃の男性に成長したとはいえ、サカりまくってますね。
「そ、そんな……私でいいのですか?」
清楚なお顔をしてコノハノサクヤ様は、男女の合体行為に興味津々です。
(これは、脈ありだな!)
ニニギ様は内心ほくそ笑んでい事でしょう。
「でも、父の許可をとらなくては……」とコノハノサクヤ様は言いました。
(ええ! ここに来ておあずけかよ! とにかく僕は早く合体したい!)
こうしてニニギ様はコノハノサクヤ様の父である、オオヤマミツ様に使いを出しました。
コノハノサクヤ様を自分の宮殿に留めている間に、彼女を襲う事はしません。
変態ですが紳士ですね。
(まだか……使いの者は、帰ってこないのか? 早く合体したい)
ニニギ様は返事を待っている間、ずーとソワソワしています。
「ニニギ様、戻りましたー。オオヤマミツ様から伝言です」
「待っていましたー!」
『アマテラス様の孫であるニニギ様に、自分の娘の事を気に入ってくれて、とても嬉しいです。願わくば、コノハノサクヤの姉の石長姫(イワナガヒメ)も嫁として、ニニギ様のお側に置いていただけませんか? by オオヤマミツ』
「よっしゃ! マジで!? いきなりハーレム展開ですか! いやー、天孫はモテ方が違うね!」
ニニギ様は突然のハーレム展開に、思わずガッツポーズをしています。
それにしても、イワナガヒメ様はどのような、女の子なんでしょうか? コノハノサクヤ様が綺麗だったから、きっと美女に違いないと思いますが……。
「それで、イワナガヒメはどこにいるの」
「こちららですよ」
「ねー、ねー、顔を見せてよ」
ニニギ様は早速、イワナガヒメ様に近づいていきます。
(げっ! なにこの子!)
ニニギ様の予想に反してイワナガヒメ様のお顔は大きくて角ばっていて、なんだかジャイ子に似ています。
コノハノサクヤ様とちがい、美しいとは言えません。
「あー、うん、君はお父さんの事あるからね。帰っていいよ」
あらら、見た目が悪いからって、ニニギ様はイワナガヒメ様を帰そうとしていますね。
「え? そんな、でも、私は……」
「いいから帰れー!」
ニニギ様はイワナガヒメ様を追い返してしまいましたね。アマテラス様のお孫さんだからって、少々酷いような気がします。
こうしてニニギ様はコノハノサクヤ様と、念願の合体を果したのです。
しかしニニギ様が彼女に対して求めていた関係は一夜契り、現代風に言うとワンナイトラブの関係だったのです。
一晩中合体した次の日の朝。
オオヤマツミ様から伝言を授かった使いの者が、ニニギ様の元にやってきました。
そして、その内容といのは……
『二人の娘を差し出したのは訳がありました。貴方様の側に姉のイワナガヒメを置けば、アマテラス様の御子の寿命は、岩のように長く続いた事でしょう。しかし、貴方様はコノハノサクヤだけを留めたので、木の花が咲くように繁栄しますが、木の花のように命は儚いものになります』
つまりイワナガヒメ様は長寿の象徴であり、コノハノサクヤ様は繁栄の象徴だったのです。
古事記では天皇家の祖先であるニニギ様が、コノハノサクヤ様だけを選んだから、天皇家の繁栄は続く事になりました。
しかし、イワナガヒメ様を追い返したので、天皇家の一族は神の御子でありながら、寿命はとても短く、人間と変わらないものになってしまったと、記しています。
「えー、そんな! もっと早く言ってよ」
言う前に追い返してしまったのは、ニニギ様の方です。彼は後悔しましたが、後の祭りでした。
思ったようにハーレム展開にならなかったニニギ様でしたが、彼にはまだまだ受難が訪れます。
「ニニギ、私、子供が出来ました」
「なんだってー!!!」
コノハノサクヤ様、ご懐妊、おめでとうございます! と言いたいところですが、子供が出来たのに、ニニギ様は嬉しそうじゃありませんね……。
「たった、一回の合体で孕むわけがない! 他の男の子供だろ!」
ニニギ様はサラリと酷い事を言いましたね。これにはコニハノサクヤ様も、綺麗なお顔を真っ赤にして怒っています。
「自分の子供だと認めないのなら、私にも考えがあります。私は炎の中で、お腹の中の子供を産みます。もし、他の男の子なら、炎に焼かれて私も子供も無事ではないでしょう。しかし、神の御子であるなら無事に産まれてきます」
「ふん、
「その代わり、私の身の潔白が証明されたのなら、ニニギは私以外の女と関係を結んじゃいけません」
「いいだろう。どうせ、お腹の中にいるのは、僕の子供じゃない!」
果たしてニニギ様は、念願のハーレムルートに入る事ができるのでしょうか?
コノハノサクヤ様は早速、産屋(出産のための家)を建てて、その中に入り、周囲を粘土で固めて塞ぎ閉じこもりました。
そして、コノハノサクヤ様は産屋に自ら放火したのです。
マジシャンの
ニニギ様も燃え盛る炎の中、固唾を飲んで結果を待っています。
燃え盛る炎の中から産声が聞こえてきました。しかも、それは三人分の赤ちゃんの泣き声がします。
おや、炎の中から人影が見えます。
勿論、人影の正体はコノハノサクヤ様です。
しかも無事に産まれた三人の男の子を抱いていますよ。
彼女は燃え盛る産屋の中で、出産に成功したようです。
これで、コノハノサクヤ様の身の潔白と、誕生した子供達の父はニニギ様である事が証明されたのです。
炎の中で産まれた神様は三神いて、
さて、返す言葉のないニニギ様は降参し、コノハノサクヤ様以外の女性と関係を結ぶ事はなかったそうです。
残念ながらニニギ様のハーレムルートは閉ざされてしまったようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます