第六日目、荒くれ者のスサノオ様とアマテラス様

 ふう、天に向かったアマテラス様達を追いかけて来たけど、私達人間が高天原に上るのは少し大変ですね。


 それにしても、イザナギ様と地上を旅している間に、たくさんの神々が住む賑やかな所になりましたね。


 でも、なんだか、様子が変です。田んぼが荒らされているし、なんだか臭いです。一体、高天原に何が起きたのでしょうか。

 私のスタンド能力『バイツァ・ダスト』で時間を戻して、見てみましょう!




 


「なぜ海原を治めず。泣きわめいているんだ!」

 おや、いきなりスサノオ様が、イザナギ様に怒られていますね。

「俺はお母さんに会えなくて寂しいんだ。黄泉の国にいる、お母さんに会いに行きたい!」

 どうやら、スサノオ様は海原の世界を治めず、それを問いただしているようです。


「ダメだ! 母には会わせられない」

 そうですよね。イザナギ様はイザナミ様のいる黄泉の国が、どんな所か知っているので頷く事は出来ません。

 というか、スサノオ様はイザナギ様単身で産んでいるので、イザナギ様がお母さんなのでは? という野暮なツッコミはしないでくださいね。 



「そんな……お母さーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」

 スサノオ様は身体も大きくて、髭を生やし、大型バイクでツーリングをしていそうなワイルドな見た目をしているのに、ずいぶんとマザコンですね。

 

 ついに、わーわーと泣きはじめてしまいました。それにしても、物凄い泣き声です。鼓膜を通り越して脳が揺れるくらい、うるさいです。


 これじゃあ、海原の世界が安定しません。 


「お前は高天原の神失格だ! 天の世界から出ていけ!」

 怒ったイザナギ様によって、スサノオ様は天の神の身分を剥奪されたようです。

「ちっ! わかったよ。地上でもなんでも行けばいいんだろ!」

 スサノオ様は追放を命じられてしまいました。

 

 でも、何処へ行くのでしょうか? あっちは地上じゃなくて、アマテラス様のいる所です。

 それではスサノオ様を追いかけましょう!


 スサノオ様は感情が昂っているからか、歩くたびに地面は揺れるし、彼の周囲には常に雷鳴が轟いています。

 

 おや、道に先に誰か立っています。

 しかも、剣と弓矢で武装していますね。男の軍神でしょうか?


「姉さん! そんな格好をして、どうしたんだ」

 おや、男神と思ったら、まさかのアマテラス様です。

 武器を持って男装までしているので、気付きませんでしたね。


「スサノオ、何をしに来たのか答えなさい!」

 アマテラス様はスサノオ様に剣を向けています。もう、やる気満々ですね。ちょっとカッコいいと思ったのは、私だけでしょうか?


「待ってくれ、俺は地上に行くから、姉さんに挨拶しにきただけだ!」

 泣きわめいているだけだと思ったら、スサノオ様は意外と律儀なところがあるようです。


「本当に? 謀反の心がないか証明しなさい!」

 どうやら、アマテラス様はスサノオ様が攻めてきたと勘違いしたようです。

 だから、武器を持って迎え撃とうとしたんですね。

 スサノオ様が歩く度に地面が揺れるから、近づいてくるのがわかったのでしょう。


「なら、姉さんと俺の持ち物を子供にして、その子供に俺の身の潔白を証明させようじゃないか」

誓約うけいですね。いいでしょう」

 

 誓約とは占いの結果で、勝敗を決めるものです。例えば『おみくじを引いて、結果がよかった方が勝ち』のようです。

 

 スサノオ様もアマテラス様も気が立っているからか、ルールを決めずに、いきなり勝負を始めています。

 本来、誓約は最初にルールを決めなければいけません。


 この場合だと、例えば男が産まれたら、勝ちなのか、負けなのか。

 それとも、女が産まれたら、勝ちなのか、負けなのか。

 はたまた、産まれた子供の数で勝敗を決めるのか。


 勝負を始める前に、これを決めておかないと勝敗がハッキリしません。


 アマテラス様はスサノオ様の剣を井戸で洗い、口に入れて、それをガリガリ君でもかじるかのように、噛み砕いています。

 流石、アマテラス様。可愛い顔してなかなかやりますね。

 

 そして、噛み砕いた剣を口から出して、フッと息を吹き掛けました。すると、スサノオ様の剣は、三人の女神になりました。


 スサノオ様はアマテラス様が着けていた勾玉まがたまを井戸で洗って、口に入れて噛み砕き、フッと息を吹き掛けました。

 すると、アマテラス様の勾玉は、五人の男神として生を受けます。


「私の勾玉から産まれた五人の男の子は、すごくイケメンだし、スサノオの子供よりも数が多い。だから、私の勝ちです!(๑• ̀д•́ )✧+°ドヤッ 」

 アマテラス様、めっちゃドヤ顔をしています。

 

「いやいや、俺の剣から産まれた女の子は美人だし、優しい子達だ。勝ったのは俺だ!」

 スサノオ様も引きません。


「いやいや、私の勝ち!」

「いやいや、俺の勝ち!」

「いやいや」

「いやいや」

「いやいや」

「いやいや」


 あらら、最初に勝負の取り決めをしておかないから、水掛け論になっていまいました。


「勝ったのは……オレです! あ、もう一度たっぷり言わせていただきます。勝ったのは……オレです!」

 どうやらスサノオ様は東方定助のモノマネをしながら、強引に自分が勝った事にしたみたいですね。


 しかしスサノオ様としては、ただ別れの挨拶をしに来ただけなのに、アマテラス様は武装していて、信用してくれませんでした。

 だから、スサノオ様は勝負に勝っても面白くありません。

 

 のしのしと歩くスサノオ様は怒りにまかせ、近くにあった田んぼを荒らしはじめました。稲穂を踏み倒して、水を引く水路に土を入れて埋めています。

 これじゃあ、美味しいお米が食べられません。

 

 田畑を荒らし回った後、スサノオ様は新嘗祭にいなめさいを行う神殿に入っていきましたね。何をする気なのでしょうか?


 あ、そうそう、新嘗祭っていうのは、その年にとれた新穀をアマテラスが食べて、自然の恵みに感謝するという儀式です。

 ちなみに地上の新嘗祭は、天皇陛下がアマテラス様にお供えした新穀を『国民が食べ物にこまらないように』という願いを込めながら食べる、五穀豊穣の儀式でもあります。


 ところで、スサノオ様は新嘗祭を行う神殿に入っていって何をしているのでしょうか。ちょっと、覗いて来ます。



 ゲゲゲ!


 うーん、嫌なものを見てしまいました……え、覗いてみたいって!? 止めておいた方がいいですよ。

 スサノオ様、神殿の中でう○こしてました。

 高天原に到着した時、漂ってきた臭いは、スサノオ様のう○このものだったようです。



 高天原を荒らし回っているスサノオ様ですが、その苦情は本人じゃなくて、姉のアマテラス様の所に集中しているようです。

「スサノオが、田んぼを荒らしていました。なんとかしてください!」

「田んぼくらい、また耕せばいいじゃないですか」


「スサノオが新嘗祭の神殿でう○こをしていました」

「あれは、お酒に酔っぱらって、公衆便所と勘違いしただけですよ」


 アマテラス様は必死に弟の事を庇っていますが、まだまだ、波乱の予感がしますね。


 一体この後、どうなるのでしょうか?




 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る